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038 悪い大人にご用心

久しぶりの更新となってしまい、誠に申し訳ございません!

 ……まぁともかく。

 いきなり扉が出現した訳もわかったことだし、深呼吸をして仕切り直すことにした。


「改めて、私はレリノレアよ。勝手に入ってしまってごめんなさい」


 シャキッと自己紹介をすると、オロオロしていた子は安心した様にふにゃっと笑って言った。


「こんにちは、レリノレア。僕は、モーリス。よ、よろしくね」

「モーリスね。こちらこそ、よろしく」


 握手を差し出すと、一瞬キョトンとした表情でじっと手を見つめ、次いでふわっと笑顔になったかと思えばぎゅむと手を握り返された。


 何だこの生き物、可愛い。


 思わずきゅんとしていると、モーリスが少し驚いた様な不思議そうな顔で呟いた。


「レリノレアは、風の魔力がとっても強いね。それも、ハンスベルクの風だ。こんなに強い人に会ったのは初めてだなぁ」

「まあ、モーリス。凄いわ、何故わかったの?」


 驚いた。手を握っただけで、どんな家柄か分かるものなのか。凄いな、モーリスは。

 ああ、そういえば。魔塔に来た際案内していた魔法士にも、風の魔法がどうのこうのと言われた気がする。やっぱり、分かる人には分かるのかもしれない。


 そんなことを思っていると、モーリスの視線が若干泳いだ。


「あ……家名は当てたら駄目なんだった。ごめんね、レリノレア。気分が悪くなっちゃったよね」

「え? 何故?」

「え?」


 ポカンとするモーリスを、私もキョトンと見つめる。

 何か問題でもあるのだろうか。性別は偽っているものの、ハンスベルクの縁者だという事は隠していない。別にバレても問題はないのだけれど。寧ろ風の魔力=ハンスベルク家と分かるのが凄いというか。


 前世でいうならば、話し方や仕草や外見でどこの都道府県もしくは国籍出身か分かる……みたいな感覚だと思う。


 私がまだ知らないだけで、この世界の貴族特有の礼儀みたいなものでもあるのか? いや寧ろ、貴族なんてお互いに魔力や家柄でマウントを取り合うのが普通だと、師匠から聞いていたんだけどな……。


 はて、と首を傾げていると、モーリスが「あ、そうかぁ...」と何やら合点がいった様子で頷いた。そして、私がじっと見ているのに気が付くと、慌てた様に説明し出す。


「あのね、多分、レリノレアは違うんだと思うけど...。魔塔には、家の事情で()()()()()()()()()人が魔法士になりにくる事が多くって。だから、その、えっと...」



 ──ああ、なる程。


 私は、頷いた。

 そういえば確か魔塔の魔法士には、生家の貴族家を出た者や生まれ持つ魔力の低さ故に貴族として認められなかった者も多いと聞いたのを思い出した。


 そういう者からすれば、どの家の魔力を継ぐかと知られたくないと考えることもあるのかもしれない。

 恐らくモーリスは、以前何気なく相手の生家を当ててしまい、当てられた相手が気分を害したという事があったのだろう。にしても、それはちょっと……。


「あんまり、気にしなくていいんじゃない?」

「え?」


 モーリスがキョトンと聞き返した。


「誰がどんな理由で魔法士をしてるかなんて、初対面じゃ分からないわよ。悪気があって言ったんじゃないだろうし、私は気にしないわ。それに、隠してた訳でもないしね」

「そ、そうかな?」

「ええ」


 気にしていないと伝えてもまだ萎縮した様子のモーリスを見ていると、なんだか可哀想になってくる。


 こういうのは難しい。

 初対面の相手の何がコンプレックスに触れるかというのは、正直、運だと思う。


 そういえば前世の学生時代に、似たようなことがあったのを思い出した。


 ある日クラスに転校生が来たのだが、その子の容姿がまるでビスクドールのような整った北欧系の顔立ちだったらしい。

 所謂ハーフというやつで、美人だったことから皆興味津々で休み時間に話しかけに行き、そのうちの一人が何気なく「〇〇さんて、ハーフなの?」と聞いたそうだ。

 翌日その転校生は学校に来なくなり、転校生の親が学校に怒鳴り込んでくるという事件に発展したと聞く。


 何が起こったのかというと。

 その転校生は、前の学校でハーフという事をからかわれたり虐めじみた事をされ、「ハーフ」と聞かれたり言われたりする事がトラウマになってしまっている状態だったそうだ。

 もちろん、聞いた子に悪気はなかったときく。クラスの中でもムードメーカーで誰にでも分け隔てなく接する優しい子が、話題提供のつもりで聞いただけだったと。


 けれども、転校生はたったの数日で学校を去り、聞いてしまった子は散々周りから怒られて、すっかり人が変わってしまったように話さない子になってしまった。

 すれ違いが悪い方向に起こったのだ。


 因みに、何故聞いたような感じなのかと言うと。偶然その期間私はインフルエンザで学校を休んでおり、病気明け学校に行ったらお通夜のような雰囲気で、驚いて事の詳細を聞いたという訳だ。

 っと、私のことはどうでもいい。


 話を聞いていて、モーリスにもその子にも共通して言える事があると思う。それは、どうしようもなく間が悪かったという事だ。

 分かりやすく言えば、運がなかった。ただ、それだけだと思う。


 人によってコンプレックスは様々だし、それをどれほど気にしないでいられるかもまた、人それぞれだ。


 セルゲイも、自分の髪色と出生で悩んでいた。私は初対面でいきなりコンプレックスをぶちまけられ、随分思い詰めていたようだったから力技で解決したが、あれが正解だったとも、最善だったとも思っていない。


 セルゲイと家族があの問題を乗り越えられたのは、セルゲイと家族の絆が深かったからだとか、セルゲイ自身がコンプレックスを吹き飛ばせる程の強い精神力を持っていたことだとか、沢山の良い要素が重なって得られた結果だと思う。


 それは結局のところ、"運"なんじゃないか。なんて、私は考えてしまうのだ。



「こういう風に言ってしまったら、簡単かもしれないけど。勉強と違って、人と人との縁は全ては運よ。なるようにしか成らないわ。忘れろとは言わないけど、あんまり気にしすぎないことよ」

「……そっか…」


 私の言葉に、モーリスは深く考え込んでいる様だった。

 その姿は、小さな子供が必死に言葉をかみ締めているようで。


 ……って。


 ───ああ、私ったら、またやっちゃったわ! 相手は子供じゃないの、私と違うのよ! ああもう、最近は腹黒王太子の相手ばっかりしてたせいで、忘れてたっ!


 物凄く、自己嫌悪である。

 けれども、顔を上げたモーリスの表情がどこか明るい様に見えたので、あながち対応を間違えたというわけでもなさそうだ。良かった。


「れ、レリノレアは、凄いね。僕と同じくらいの歳に見えるのに、なんだか、すごく大人びてる…」


 モーリスがモジモジしながら笑顔で私を見上げた。私はにっこり笑ってありがとう、とお礼を言った。まぁ、精神年齢は前世と今世合わせて…やめよう。考えない方がいい事もある。


 私は、周りに目を向けて少し話題を変えることにした。


「モーリスは、いつもここに居るの?」

「う、うん。そうだよ」

「まぁ。という事は、モーリスも魔法士になるのが夢なの?」

「えっ! ……ううんとね、……実は、僕はもう、魔法士なんだ……」

「そうなの!? 凄いじゃない!」


 私は驚いて目を丸くした。

 私が褒めた事に、モーリスはやや俯いて顔を赤くする。


 いやいや、本当にこのモーリスという子は…。自信なさげにみえて、とんでもない実力の持ち主なのでは。


 養父様から事前に聞いた話によると、魔塔の魔法士になるタイプには、大きく分けて2タイプある。


 一つめは、先程述べた様に貴族家に生まれ魔力を持ってはいるが、魔力が弱すぎたために貴族として認められず、魔道具を研究する他道がなかった者。

 二つめは、魔力量が高く自ら望んで魔法士となり、魔法の研究を行う者。

 この二つだ。


 前者では専ら魔道具の点検や整備など、ほとんど魔力のいらない作業を重点的に請け負うそうで、後者のアシストを行うことが多いのだとか。

 一方で後者は、その高い魔力量を駆使し騎士団に協力を要請される事もあるらしく、例えばセルゲイ誕生会での事件の時も、魔塔から魔法士が派遣され調査を手伝っていた。


 ただ、後者のタイプは魔力量が高い事もあって研究者気質の魔法士が多く、よく騎士団とぶつかるのはそのせいだと言う話も、師匠や訓練所の先輩から小耳に挟んだ。

 文化系と体育会系の違い……みたいなものだと考えれば分かりやすいだろうか。


 そんな事を脳内で考えつつ、私は目の前のモーリスを観察する。


 モーリスと違って私は彼が何の家出身でどんな魔力を持っているのかは分からない。しかし、魔力量がかなり高そうだという事は分かる。


 モーリスは、自分を既に魔法士だと言った。つまり見習いではなく、実際に魔法士として働いているのだろう。


 もしモーリスが後者なのだとすれば、騎士団に協力を要請されるほど魔法の研鑽を積んでいるという事になるし、前者だとしても、日々私たちの生活を支える魔道具の整備を頑張っているのだという事になる。


 そう考えたらモーリスはまだ子供に見えるのに、相当の努力をしているのだなと私は感心しっぱなしだった。


「それにしても、すごい場所ね。壁一面が本棚だわ。もしかして、モーリスは全て読んでいるのかしら」


 私はふと部屋の壁の本に目を止めて、モーリスに聞いた。私も本は好きな方だが、この部屋程の本は持っていない。精々がところ、数十冊程度だろう。


 因みに、お義兄様はかなりの読書党だ。

 部屋に遊びに行くと、殆ど何かの本を読んでいるいらっしゃる程に読書が好きな様で、たまに私にもお勧めの本を紹介してくれる。

 これまた何故だか、お義兄様は毎回私の興味を引く面白い本をピンポイントで探してくれるのだが、あれはどうやっているんだろうか。……っと、またもや思考が逸れた。


 私の質問に、モーリスはこくんと頷く。


「うん。父さんと母さんが、魔法士たるものこのくらいは読破出来て当然って言っていたから、全部暗記してるよ」

「へぇ、そうなのね。全部暗記……暗記!?」


 ちょっと待て。なんか今、聞き捨てならない事を聞いた気がするが、気の所為か?


 私達が今いる部屋は、壁一面に本棚が嵌め込まれており、そこにはビッシリと分厚い革表紙の本が並んでいる。内容を見た訳では無いが、雰囲気で絵本でない事も簡単な内容ではなさそうな事も分かる。数千冊はありそうなこれらの本を、全て暗記……?しかも、それが当然……?


 私がポカンとした表情でモーリスを見詰めると、彼は至極当然の事と言うように頷いた。


「うん」

「モーリス、貴方、天才ってよく言われない?」


 私は驚きと呆れと尊敬の混ざった様な声で思わずそう言っていたが、モーリスはピンと来ていない様だ。それどころか、なにやら落ち込んだ様子で視線を落としている。


「天才? 僕が? ううん、レリノレア。僕なんて、全然駄目だよ。魔導書を全て読破するのに一年もかかっちゃったし、暗記しているとはいえ、まだ全部の魔法は使えないんだ。一応、魔法陣なら全部書けるけど、まだまだ精度が甘いって怒られるよ。それに、魔塔の総蔵書量の五分の一くらいしか目を通し切ってないんだ。僕なんて……父さんにも母さんにも認めて貰えない落ちこぼれで……」

「ちょ、待った待った待った!!」

「え、何、レリノレア?」


 いや、「何、レリノレア?」じゃないわよ。この子は何を言ってるんでしょう。


 私は頭痛が痛いみたいな顔で目頭を押さえた。


「モーリス、貴方、今何歳?」

「……え、……7歳だよ?」


 やっぱり同い歳じゃないの!

 私はげっそりした感じで、けれどもしっかりとモーリスの目を見詰めながら、両手を握って言い聞かせた。


「あのね、モーリス。私には魔法士の基準はよく分からないけど、これだけは言えるわ。7歳なら、分厚い本を一冊最初から最後まで一人で読み切れるだけで、拍手されて良いレベルよ。それを、あんなに沢山の本の内容を全部暗記して、しかも書けるだなんて、全然当然の事じゃないわ。とても凄い事よ。貴方、もっと自分に自信を持つべきだわ」


 モーリスは、私の言葉にやや動揺したように目を瞬いた。


「でも、父さんと母さんが僕なんて全然まだまだだって……」

「ご両親も魔法士の方なの?だとしたら、モーリスがもっと凄い魔法士になれる様に鼓舞して、そんな言い方になっているだけだと思うわ。向上心を持つのは素敵な事だけれど、自分を認めてあげるのも大事なんじゃないかしら」

「自分を認めるのも、大事……?」


 モーリスは、私の言葉を反芻する様に目を瞬いている。どうにか彼に、自信を持てるようにしてあげたいと思った私は、尚も言葉を募ろうとして、彼に近寄った。


「ええ。それに……、?」


 けれど。

 その時、ふと、背筋をビリっとした嫌な予感が駆け抜け、私は反射的にモーリスを横抱きに抱え上げ、フロアの吹き抜けの上へと跳躍していた。直後、それまで話していた場所の背後にあった扉が開いたかと思えば、何か魔道具の様な物が一つ、ぽーんと部屋の中に投げ込まれた。


 瞬間、腕の中でモーリスが叫ぶ。


「レリノレア、目を塞いで!!」


 モーリスの言葉を認識するのと同時に、私は自分の目を固く瞑った。その直後、瞼の裏からでも分かるほど鮮明に、部屋を覆う膨大な光量が弾けた。思わずモーリスを抱えていない方の手で目を覆いたくなるほどそれは眩しく、モーリスの忠告が一息遅ければ、目が潰れていたかもしれない。


 ──しかし、目潰しと言う事は、次がある……っ!


 そう考えた次の瞬間、まだ目の開けられていない私達の近くで、何かの気配を察知した。咄嗟に私は、再びモーリスを抱えて跳躍しながら、懐に隠し持っていた暗器の一つを気配の方に投げ付けた。


「がっ!? ……っこの!」


 当たった様だ。そのタイミングで、漸く光量が収まってきたのを感じ、私は微かに目を開けて周囲を確認した。



 部屋の中に、私とモーリス以外の人間がいる。そいつの腕に、私の放ったものらしき暗器が刺さっていて、険しく恨みの篭った目でそいつは私を睨み付けていた。全く見覚えのない魔法士の男だが、こいつは私とモーリス、どちらを狙ったのだろうか。


 ───こいつ、もしかして件の裏切り者……?なんでここに……。レン様はどこ?


 私は油断しない様にその男を見据えながら、そっとモーリスを床に下ろした。「モーリス、あいつに見覚えは?」


 目を白黒させていたモーリスが、「多分、上級魔法士の一人だと思う。ローブの袖が…」と言った。恐らく、着ているローブが魔法士の階級によって若干違うのだろうが、今私にそれを識別する余裕はなかったので彼の解説は助かった。ともかく、相手は魔法に熟練した、油断のならない人物かもしれないということだろう。


 その時、こちらを睨んでいた男が口を開いた。


「忌々しい小娘が。待機室を抜け出したかと思えば、まさかこんな所まで入り込むとは。そこをどけ。私は長の子供に用があるのだ。関係ない餓鬼は引っ込んでいろ」


 私は男を煽る様に鼻で笑った。


「待機室の盗聴魔法は、アンタの仕業ね。私の侍従に悟られるような杜撰な魔法しか使えない奴の言う事を、私が聞くとでも?そっちこそ引っ込みなさい。私を誰だと思っていて?」


 自分で言っていて、何だか悪役の女王みたいな台詞になってしまったが、効果は覿面だったようだ。男の形相が険しくなり、額に青筋が浮かんだ。


「小娘が言わせておけば…っ!私の邪魔をしないならば痛い目を見ずにいれたものを、自らの浅はかさを後悔するがいい!」


 言うが早いか、男は攻撃魔法を放ってくる。かなりの精度と速さではあるが、私はそれを軽く跳躍して躱した。師匠が訓練で問答無用で放ってくる炎の魔法攻撃は、もっと早いし大きい。容赦がない鍛錬のお陰か、私は男の攻撃魔法に全て対処する事が出来た。その様子に、男の顔色が変わる。


「なっ、馬鹿な!貴様の様な小娘に、私の魔法が見切れるわけが……!」

「こっちからも、行くわよ?」


 私は若干怯えた様な男の声を遮って、にっこりと笑みを浮かべた。そして、袖から出した鉄扇を開き、風を纏わせると男目掛けて振り下ろした。


「刃風─花吹雪─」


 私が言い終わると同時に、私の中の風の魔力が膨れ上がり、鉄扇を通して男を襲った。


「ぐあっ!?なんだこの魔法……がはっ!」


 男の周りを取り囲む様に風が渦を巻き、まるで花吹雪の花びらのように男の身体を軽々と弄んでいる。しかも、風の渦の中は鎌鼬が飛び交っている為、気を抜けば致命傷だ。男は息付く暇も為す術もなく、駒の様にくるくると身体を回転させている。


 ……あら?


「……なんか、ちょっと、張り合いがないわね。どうしたの?反撃していいわよ?」


 私は、あんまり男が反撃して来ないので、不安になってきた。浅はかさがなんちゃらとか言ってくるから、どれ程凄い魔法を見せてくれるのかと思ったら、なんだか全く反撃して来ないどころか……もしかして、気絶している?


 ……ん?まさかね?


 その時、男の様子を観察している私のところに、恐る恐ると言った感じでモーリスが近寄ってきた。


「あの、レリノレア…。もうあの人、気絶してるよ…?」

「えっ、やっぱり!?きゃあああ、やり過ぎちゃった!?!?」


 私は頭を抱えて、急いで風の魔法を打ち切った。その途端、結構な高さから男が落下し、床にドサッと音を立てて倒れ込んだ。その際「ぐえっ!」と潰れる様な声が聞こえた為、生きてるのは確認した。完全に伸びている男に近寄った私は、慌てて男の上半身を抱え起こして往復ビンタする。


「ちょっと!あなたね!魔塔の上級魔法士ともあろう者が、こんな小娘に負けるなんて情けない!そんなんじゃ、外から襲撃にあった時どうするのよ!こら、起きなさい!!」


 私はあまりにも弱すぎた魔法士の実力に、寧ろこっちが心配になって来た為、そう言って叩き起こそうとした。が、男は私がガクガク揺すっても殴っても全く起きない。なんという体たらくだろうか!!


 怒っている私の隣で、モーリスは遠い目をしながら明後日の方向を見ていた。彼の胸中では、魔法士の実力についてレリノレアへの弁解の様なものが浮かんでいる。


 ───違う…違うんだよ、レリノレア。彼は実力のある魔法士なんだよ。彼の放っていた攻撃魔法のどれもが、まともに当たったら人一人丸焦げにしたり山も消し炭に出来るくらいの威力があったんだ。それなのに、レリノレアったら全部避けちゃうから……。僕も思わず可哀想になるくらい、全くレリノレアに相手にされてなかっただけで、魔塔の中では彼は実力派だと思うよ、本当に。……うわぁ。


 等と、モーリスは思っていたが、そんな事は私は露ほども知らなかった。


 私はモーリスを振り返って言った。


「ちょっと、モーリス!水かなにか出せる物ないの?ちょっと持ってきて頂戴!こいつにぶっかけるから!」


 モーリスは私の視線にこくこくと頷くと、下のフロアへすっ飛んで行き、何やら漁って持ってきた。どうやら水の出る魔道具を持ってきてくれたらしい。


 私はモーリスへのお礼だけ告げて、問答無用で男に水をぶっ掛けた。途端に、男が飛び上がって目を覚ます。


「ゲホっ!な、なにす……貴様っ!よくも私に、ぐはっ!」


 目が覚めた途端に何か言いかけた男の腹に、私は容赦なくストレートを叩き込む。なんかメキっとか聞こえた気がするが、まっ、気のせいだろう。


「余計な事は喋らなくていいわ。私が聞いた事だけキリキリ話すの。分かった?」


 私が男の目を覗き込みながら、笑みを浮かべて首を傾げて聞くと、男はガタガタと震えながら小さくこくこくと頷いた。


 はて。

 こんなに美少女な私に微笑まれているというのに、この男は何をそんなに震えているのだろうか。

 全く不思議な事もあるものだ。



不届き者の攻撃もあっという間に無効化してしまったレイリアン。モーリスは遠い目をしております笑。


読んで下さり、ありがとうございました!

良いね・高評価★★★★★頂けると、作者もとても嬉しいです( * ॑꒳ ॑*)

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