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034 決行前夜のプチ騒動

前話でブックマーク者が100人になったらお祝い閑話を書くという話をした作者ですが、もう少し先のことになるかと思います。


ですので、読者の皆様から「このキャラ視点の話が読みたい!!!」という意見がありましたら、多い順で書かさせて頂こうかと検討中です(*´˘`*)


もしよろしければ、お気軽に感想欄の方にキャラ名を書いて送ってくださいませ(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”


※尚、後書きの方に名前一覧を載せておきますが、載ってない名前でももし「このキャラがいいっ!!」という推しがいましたら遠慮なく書いて下さって大丈夫です。

人物によっては話の流れ的にまだ載せられないキャラもいますが、後のお祝い時に改めて書かせていただきます(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク


「私達もですか?」

「そうよ。今回はカサーラ達にも協力して欲しいのよ」



 私の頼みに、カサーラは困惑した顔で頷いた。

 突然よね、本当にごめんなさい。苦情は師匠と王太子殿下に言ってくれると助かるわ……じゃなくて。



 私は養父様との話し合いの後、カサーラ達にお風呂場で全身を磨きあげられてから夕食までの合間に、私付きの侍女と侍従達を呼んで事情を話した。


 近く、魔塔にレリノレアとして行く事。

 そして、その際にサムとジルベール、そしてカサーラの三人にも同行して欲しい旨について。


 またもや師匠関連の手伝いだと話すと、皆は大変納得したという顔で了承してくれた。「レイリアン様も大変でございますね」と、何やら労う雰囲気まである。



 ──色々やらかしているからね、師匠。ごめんねだけれど、言い訳に使わせて頂戴。



「それがレイリアン様の為になるのでしたら、喜んでお供いたしますわ。けれど、ジル様を差し置いて私でよろしいのですか? サムとジルベール様なら分かりますが……」



 カサーラの困惑は最もである。ジルが名目上、私に与えられている侍女達の中で一番立場が上なのだ。いわゆる侍女頭という、言わば侍女の筆頭である。


 けれど、ジルはお義兄様の乳母だった人でもある。

 今はジルの娘がお義兄様の筆頭侍女を務めているが、それより前は、公爵家の夜会などでお義兄様の傍に控えていた事もある存在だった。


 私はただの縁者という事になっているので、そんな存在に次期公爵の乳母だった人が仕えているのは些か不自然だ。

 万に一つもないとは思うけれど、そこから私の立ち位置を悟られるリスクは犯せない。

 そういう訳で、ジルは連れては行けないと思う。



「ジルは元々、お義兄様の侍女頭だもの。そんな人を、レリノレアとしての私が侍らせていたらおかしいでしょう? ジルベールは元々養父様のご好意で侍従として借り受けているのだから違和感はないわ。サムは言わずもがな」

「なるほど、確かにそうかもしれませんわ。それに、レイリアン様……レリノレア様の身嗜みを整えるのは、サムだけでは駄目ですわ」

「事実ですが、手厳しいですね」



 まじまじと頷くカサーラの隣で、サムが苦笑いしている。

 いつもの装いならばサムが付いていてくれれば問題ないけれど、今回は件の令嬢姿だ。前世女である私ですら何が何だか分からない複雑な髪型なんて、移動中に崩れでもしたら治す人が必要になる。

 サムにはお手上げだろう。


 私も頷く。



「そういう訳で、三人ともよろしくお願いね」

「「「お任せください」」」



 諸々の準備の為、部屋から出ていった三人を見送り、私は寝室の扉を締める。その際部屋にいた他の使用人達に、落ち着いて師匠に手紙を書きたいから夕食まで一人にして欲しい旨を伝え、完全に一人きりになる。


 いや、完全にとは言えないか。



「人払いをしたので、もう出てきて大丈夫ですよ」

「……」



 空気が小さく揺らぎ、それまで誰の姿もなかった場所に、スッと人影が現れる。あまりにも気配が感じられなかったので、思わずドキッとした。


 殺気などは感じなかったから声を掛けたけれど、些か心臓に悪い登場の仕方だ。

 もう日が落ちかけているし、明かりが届かない場所は暗がりとなっている。そんな場所から人影が現れたら、流石の私もビクッとしてしまうのは仕方がないと思う。


 ドキドキしながら相手の出方を窺っていると、漆黒の装束を纏った見覚えのある人物が姿を現した。

 王家の影の一人、案内役のレン様だ。

 昨日、王太子殿下に名前を紹介されてから一言も言葉を交わすことなく、いつの間にか消えていたので挨拶も出来なかった。だから、彼がどういう存在なのかはまだよく分からない。


 私は頑張って早鐘打つ鼓動を感じさせないよう、出来るだけ落ち着いた声で話しかける事にした。



「こんばんわ、レン様。昨日ぶりでございますね。今日は如何なさいましたか?」



 なるべく笑顔を心がけながらそう問うと、レン様は音も立てずに部屋を移動してきた。ただし、ある程度近づくとその場で立ち止まってしまった。

 丁度ローテーブルを挟んだあたりだ。



 近くで見るとわかるけれど、この人はかなり体格に恵まれている。身長は私の倍近くある様に見えるし、目しか出てない事もあって、かなりの圧迫感がある。

 養父様とはまた違った雰囲気で、若干怖い。



 けれど、何故か見た目の大きさに比べて、気配や存在感そのものは全くと言ってよいほど希薄だ。


 なんと言えばいいだろう。見た目と感じる雰囲気の乖離が大きいこの感じ。似た感じでいくと、王太子殿下の離宮で感じたあの雰囲気と近い……と言えば、想像が着くだろうか。



 ───認識阻害魔法を、装束にかけているのかしらね。



 多分そうなのだろう。

 いや、それにしても。



 ───魔法って不思議よね。あんなに体格の良い人ですら、視界に入らない限り全くの存在感を決してしまえるんだから。



 王太子殿下が寄越した"影"──レン様は、体格だけ見るとかなり大柄だ。肩といい腕といい首といい、引き締まった立派な筋肉が黒い布越しにピッチリと、その存在を主張している。

 首から上は出ているけれど、それも目元以外の全てを装束と同じ黒い布が隠してしまっている為、若いのか年老いているかすら分からない。



 ただ、骨格の関係から男性であることは間違いないだろう。

 女性ならば腰の辺りがもう少し丸みを帯びるものだ。彼のはキュッと引き締まっている。

 誠に結構な、均整の取れたこの世に二つとない素晴らしき筋肉の持ち主である。やもすると、師匠よりも凄いかもしれない。


 ……。

 私、涎なんか垂れてやしないわよね?



 ───髪や瞳の色が黒いのは、元からなのかしら。珍しいけど。



 黒装束に溶け込むような黒髪と黒い瞳。前世ではお馴染みの色だけれど、両方黒というのは、この世界では初めて見た。アンフェルですら、瞳は金色だったし。



 と、色々思考していると、目の前にスっと便箋が差し出されている事に気が付いた。

 はて、と見上げると、いつの間にかすぐ側まで来ていたレン様がじっと、私が受け取るのを待っている様子で見下ろしている。



「ありがとうございます。拝見させて頂きますね」

「……」



 ちょっとばかり考え込んでしまった事には触れず、お礼を言って受け取ると、レン様はまたスっと離れてしまう。

 またもや、私達の間にローテーブル一台分の距離ができた。



 ───パーソナルスペースはきっちりするタイプなのかしら? それとも、私が熱心に筋肉を見詰めすぎてたとか?



 ふむ。

 まあ、あまり気にしないでおこう。


 気を取り直して手紙の封を開けると、差出人不明ながらも王太子殿下と分かる書き出しと、優美な筆跡の文字が並んでいた。

 昨日の話では、紙面でのやり取りは不可という事だったのに、何かあったのだろうかと思って読み進めると、理由がわかった。



『呪破りの姫君へ


 突然すまないな。

 少々予定が狂ったので、取り急ぎ連絡を寄越した次第だ。


 事前の説明では、君にはこの手紙を届けた彼と一緒に、"例の場所"へ数日間に渡って潜入調査してもらう予定だったのだが、事情が変わった。


 詳しい話は省略するが、"例の事件関係者"の一人が"裏切り者"と密会するという情報を得た。それによれば、密会は明日の昼頃行われるとの事だ……』



 はぁ、なるほど。

 それで慌てて連絡を寄越したという事なのね。


 "例の場所"とは魔塔。"例の事件関係者"とはよく分からないが、恐らく某伯爵家の弟と繋がりのある誰かの事で、"裏切り者"は、魔塔内にいる魔道具を手引きした者の事なのだろう。


 だとすると、私達が探る予定だった人物と某伯爵家の弟と繋がりを持つ人物が、明日接触するという事になる。

 確かに急な話だ。



 ───というか、ここまで分かったなら裏切り者が誰かまで分かりそうなものじゃないの?



 手紙に書いてないということは、そこまでは把握しきれなかったという事なのだろう。

 が、なんとも微妙な情報である。


 軽く嘆息して、続きを読み進めていく。



『……そういう訳で、決行は明日に繰り上げることになった。

 急で悪いが、その分前報酬は弾むので我慢してくれ。また、君が明日潜入する上での手続きと根回しは、こちらでしておくので問題はない。


 良い報告を期待している。

 幻影の庭の主より


 追伸

 この手紙は読んだら処分しておくように』

「はぁなるほど、決行は明日に繰り上げ……」



 読みながら内容を反芻して、一泊後。



「明日っ!?!?!?」



 有り得ない「明日」という二文字に、思わず絶叫と共にぐわっとレン様を仰ぎ見ると、小さく肯定の頷きが返ってきた。いつの間にかその手には、何処から取り出したのか、ジャラっと金属の擦り合う音のする袋が握られている。


 正気か(マジか)


 それでもやはり、私の読み違いじゃないかと淡い期待をして何度読み返しても、手紙には憎たらしいほど綺麗な文字で「決行は明日」と書いてある。はあ?!



 レン様が見てなかったらぐしゃっと手紙を潰しているところだわ。

 なんだ、明日とは。

 いくらなんでも急すぎるわ!!!



 ───あんの腹黒くそ王太子様めっ!!! 報酬を弾めばいいって問題じゃないっ!!!!



 腹黒い笑みで「よろしく頼むよ」と言って手を振っている様が目に浮かぶ様だ。

 何が、良い報告を期待している、だ。事前準備も練りに練った打ち合わせもなしに、今日の明日のでいきなり敵陣に突っ込まねばならぬ、こっちの身にもなれ。鬼か己は。無茶振りして慌てるこちらを見て楽しんでやしないか。



 前世の鬼畜上司を彷彿とさせるあまりの無茶振りに、思わず冷静さがどっかへ飛んでいった。

 一旦落ち着こう。



 ───いいわ、上等じゃないの。こうなったら、見事囮をやり遂げて、あの腹黒王太子にでっかい恩を売りつけてやるわ、うふふふふふ……ははははは。



 内心の荒んだ高笑いを笑顔で押し殺し、部屋の隅の暖炉まで歩いていくと、私は手紙と便箋を投げ入れた。

 完全に炭となって消え去った様子を見届けてから、くるりと振り返ってレン様に向き直る。


 私の視線を受けたレン様が、心做しか僅かにビクッとした様に見えたが、多分目の錯覚だろう。王家の影ともあろう人が、ちょっとくらい目のハイライトが消えているかもしれない子供如き、何を恐れることがあろうか。気の所為よ、きっと。



「承りました、と。殿下にお伝え下さい」



 最高に貼り付けた笑顔と共にそう伝言を伝えると、小さく頷いたレン様は、出てきた時と同じ様にあっという間に掻き消えてしまった。



 そんなこんなで。



 急遽部屋へと呼び戻した使用人の皆に、いきなり明日出掛けることになったと説明した事により、メリナ達にもサム達にも超特急で諸々の準備をさせてしまう羽目になった。

 けれども、幸か不幸か、師匠による事前予告無しの突撃強行軍で慣れていた皆は、顔色を変えることなく動いてくれた。


 いつも本当に苦労をかけるわ……。

 今度、養父様にいって皆のお給料を上げてもらおう。



 そして、(きた)る次の日。


 例によって例のごとく、メリナ達の努力によって絶世の美少女に大変身した私は、魔塔と呼ばれる場所へと赴いていた。



「これはこれは、ようこそいらっしゃいました! 噂に名高いハンスベルク公爵家縁の姫君にお会い出来るとは、我ら魔塔の者一同、この上ない喜びにございます」



 にこやかな笑みを浮かべ私に歓迎の言葉を述べているのは、お揃いの紺色のローブを羽織る集団の一人だ。

 彼らは魔塔のメンバーの一人で、集団と言っても、ここにいるのはその内の七人だけである。

 とはいえ、馬車から降りてすぐの場所に立って待っていたことを踏まえるに、私はなかなか歓迎されているとみえる。


 私は、ジルベールの手を取りながら彼らの前までゆったりと歩いていき、優雅にカーテシーを決めた。

 ほぅ…という感嘆の溜息が、何処からともなく聞こえる。



「手厚いもてなしに感謝いたします。私、レリノレアと申しますわ。訳あって家名は明かせませんの。失礼かとは思いますが、ご了承下さいましね。念の為、公爵様ご本人からの紹介状もございますわ。お改めになる?」

「はっはっは、お気になさらず! 貴女程強い風の魔力を宿す方を、疑う者などこの魔塔にはおりませんよ!」



 事前に公爵様に書いてもらったおいた紹介状を見せながら、私が少し困った顔をして言うと、目の前の代表らしき男性は屈託なく笑ってそう述べる。


 けれども、私がにこやかに頷いてジルベールに紹介状をしまうよう手渡そうとすると、それを遮る様に付け足してきた。



「と、言いたい所なのですが。近頃怪しい輩が魔塔の周囲を彷徨(うろつ)いておりましてなあ。大変申し訳ないが、初めて魔塔に出入りする方には全員、紹介状を改めさせて頂いているのです。公爵家縁の方には無礼かと存じますが……」



 そういって手を差し出してくる代表の男。


 間違いなく、無礼である。

 公爵家縁の令嬢に対する言葉としては、本当に最低限の礼儀しか弁えていない。


 一見して、家名を明かせぬと言う私の方が礼を欠いている様に思えるが、この場合ハンスベルク公爵家当主の印が押されたと分かる紹介状がある上、私は百人中百人が認める風の魔力保持者である。


 養父様が私を見つけた際も、直系の縁者の子供である事を見ただけで認めざるを得なかった。

 その事からも分かるように、見る者が見れば私がハンスベルク公爵家の縁者である事も、わざわざ建前にすぎない紹介状を改める必要などない事も分かるのだ。


 ましてや、彼らは魔法の権威である魔塔の人間だ。それは分かっていて当然の事柄で、現に彼もその様に述べていた。



 その上で、紹介状の開示を要求するという事は即ち、(へりくだ)った様子とは裏腹に、こちらを全く敬っていないのが明白だ。



 ───歓迎されているかと思ったけれど、これは認識を改めた方が良さそうね。



 隣で静かに怒るジルベールが怖い。傍から見れば分からないほど小さく一瞬だったが、エスコートする手が僅かに強ばった。

 顔を向けられないから表情は分からないが、後ろで控えているサムとカサーラからも、うっすらと怒気が漏れ出ている。



 無理もない。

 仕えている家の主人が、それも貴族社会では王族の次に敬われるべき公爵家の人間が虚仮(こけ)にされたのだから。

 ハンスベルク公爵家の使用人として誇りを持っている彼らにしてみれば、直接己を馬鹿にされる以上の屈辱だろう。


 これが夜会で行われたことならば、目の前の男性は大顰蹙を買っていること間違いないし、家にも厳重な抗議が行く。

 けれども彼には、己の言動を焦る素振りも、後ろめたい様子も見受けられない。


 それが許されてしまうのが魔塔関係者ということなのだろうけれど……。



「問題ありませんわ。その為に書いて頂いたのだもの。どうぞご覧になって下さいな」



 私はにこやかに貼り付けた笑みを浮かべながら、紹介状を渡した。

 別に見られて困ることは書いていない。


 現に、紹介状にさっと目を通した代表の男が、それを返しながら深く礼を執った。連られて後ろの六人も礼をする。



「間違いなく。改めまして、ようこそ。ハンスベルク公爵家のレリノレア様」



 こうして私達は、魔塔の中へと足を踏み入れた。





【◆ブックマーク100人祝い(仮)◆お祝い閑話キャラ候補一覧】

◆孤児院編

・アンフェル

・孤児院の子供達(マーク・トーマス・ギイ・ナンシー

・孤児院長&シスター

・トーフェ

・自警団の衛士


◆貴族編(ハンスベルク公爵家)

・ルトア(公爵)

・ムトア(お義兄様)

・ミシェル(養母様)

・使用人の皆(メリナ、カサーラ、ジル、サム、ジルベール、etc……)


◆貴族編(ラシュブルク侯爵家)

・セルゲイ

・セルゲイ兄弟(兄ズ&弟)

・叔父様&叔母様


◆貴族編(騎士団関係者)

・テルカ(お師匠)

・北訓練所の皆


◆貴族編(王族関係者)

・カラム(王弟)

・シリクス(王太子)

・影の皆様


﹎ ﹎ ﹎ ﹎ ﹎ ﹎ ﹎ ﹎ ﹎ ﹎ ﹎ ﹎


読んで下さり、ありがとうございました!

良いね・高評価★★★★★頂けると、作者もとても嬉しいです( * ॑꒳ ॑*)

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