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002 私、どうやら転生したらしい

続けて投稿します。

なかなかカオスな話ですね(勿論深刻さは皆無です笑)

 ぬくぬくと暖かい、 至福の場所。

 何にも勝る素晴らしき楽園。


 ああ! 素晴らしき寝床、布団!


 久方ぶりになんとも言えない心地良さを覚えながら、私は大きな欠伸と共に目覚めた。



「ふぁぁあよく寝たよく寝た。全く、久しぶりの休みなんだから。明日からまた連日休み無しだなんて、ホント、やんなっちゃうわぁ………。ハッ?」



 連日休み無しで働きずめ、昨晩ようやく一日の休暇をもぎ取って帰宅して就寝。

 泥のように眠ってやっと疲労から解放されて、起きてみたら。


 目の前に見知らぬ子供がいた。



 ──誰? この子。



 見知らぬ子供は私を見て、クリクリの目を限界まで見開いたようだった。

 次いで、張り裂けんばかりに大声をあげる。



「キャメルねぇちゃぁああああん!!! レイお兄ちゃんが起きたぁああああっっ!! シスターーーーっ!!!」


「うわっ!?」



 叫びながら部屋を飛び出して行った子供を目で追い、思わずその勢いに驚いてしまう。

 そして気が付いたのだが、今自分がいる場所も全く見知らぬ場所だった。



「何、あの子。何処、ここ……」



 思わず混乱する。

 どうしてこんな見知らぬ場所で寝てたのか。

 え、まさか。



「家に帰って寝てたって言うのは夢で、まさか、本当は過労でぶっ倒れて病院に救急搬送とか? いやぁぁそんな現実いやぁぁ!!」



 あんまりだ。

 折角我が家で熟睡したと思ったら、過労で倒れただなんて。

 でも有りうる。むしろ、休日をもぎ取れたという方が奇跡すぎて、確かに嘘かもしれない。



「あんのクソ部長! こうなったら今やってるプロジェクトも何もかも全て放り投げてやったろーかしら? 兎も角、今日は流石にお休みだわね。会社に連絡しないと。スマホは……ん? んん?」



 パッと見、枕の周りには愛用している鞄が見当たらない。それよりも、視界に映るこのキラキラしたものはなんだろうか。


 触れてみると驚くほどサラサラで、ツヤツヤしている。金色と若草色を混ぜた様な不思議な色合いの極細の紐が、肩にいく筋も乗っかっているのだ。

 思わず引っ張ったら、ツキンとこめかみが痛んだ。



 ……。

 …………。

 ………………こめかみ?



 何故この綺麗な紐──よく見たら髪の毛──を引っ張ったら、自分のこめかみが痛むのだろうか。

 なんか、おかしくは無いだろうか。


 一度違和感に気がつくと、他にも沢山、違和感があると気付く。



 ──私なんで、子供みたいな手になってるの?



 意識して動かしているから間違いなく自分の手だとわかるのに、視界に映るのは成人女性の手ではなく、八歳年の離れた弟より更に幼い子供の様な手であるし。



 ──さっき独り言言った時の声、私ってあんなに声高かった?



 友人とのカラオケで女性男性両方のパートを歌える程に広い声帯ではあったけど、普段使いの声は落ち着いた声だったと思う。



 ──私、いつの間に髪染めたの?



 いや、染めたのは大学生になってから一度きりで、しかも茶系だ。こんなプラチナグリーンみたいな色にしたことなんかないはずである。



 何より、違和感。

 下半身の足の付け根あたりに、物凄く違和感がある。



「まさかね?」



 頭によぎった一抹の悪い予感は気のせいだと思うことにして、何気なく、そう何気なく違和感の部分に手を置き、固まった。

 一泊後、絶叫。



「んぎゃぁああああぁぁぁああああっっ!!」



 建物を震わす程の声量でもって、たった今知った恐るべき事実を忘れようとする。

 結論、無理であった。



「レイ?! 意識が戻ったの!」


「レイ!」


「レイ、どうしたの!?」


「お兄ちゃん?!」



 絶叫とほぼ同時に部屋に駆け込んできたのは、女の子と男の子、映画で見た教会のシスターのような服を着た女性と、先程飛び出して行ったちびっ子だった。

 いや、そんな事よりも。



「いやぁぁぁああああっ! 何!? 何で()()が付いてるのどおいうことなのぉぉおっ?!?!」



 パニックである。

 私は正真正銘、生物学上()だったはずだ。

 それが、どうして。



 ()()()()()()()()()()

 悪い夢だ。

 悪夢だ。



 そう、これは夢。絶対、夢……。



「レイ、どうしちゃったの?! そんな、女の子みたいな喋り方……」


「ナニがどうしたって!?」


「レイ? まだどこか痛いの?」


「お兄ちゃん、大丈夫?」



 ええ、ええ。大丈夫だわよ。話しかけないで幻覚。

 なまじ健康優良児だったお陰で、気を失いたくても失えないのよ!



 ──どぉゆう事よ、責任者出て来いっ!



 誰ともつかず責任の所在を問い質した私は、何故か唐突に聞こえた「うん、分かった」という幻聴と共にブラックアウトした。




 ****



「どうも、責任者です☆」


「……」



 目を開けると、そこは真っ白な世界。

 何も無い空間に、ポツンと、浮いているのだか沈んでいるのだか分からない状態で立っていた。

 目の前には、何やら超絶顔貌の整った二十代くらいの男性がいる。



「どうゆう事か、説明してくれるんでしょうね?」


「あ、ハイ。君はね、一回死んでるんだけど……」


「やっぱり! いつか過労死すんじゃないかと思ってたのよ私は!」



 あんまりだ。まだ20代だったのに。

 嘆いていると、美しい男性が慌てた様に告げる。



「いや、君は百歳まで生きるはずだったそうだよ! ちょっと手違いでね……」


「ああ?」


「ぴゃっ! そんなドスの効いた声出さないでよ!」


「詳しく聞こうかしら」


「ひゃいっ!」



 その男性の話をまとめると、こうだ。

 曰く、彼は神である。

 しかし、元いた世界の神ではなく、所謂異世界の神様らしい。



 通常、地球は地球、異世界は異世界で魂の循環が行われて居るのだが、何百年かに一度双方の世界の魂を交換することがあるらしい。

 というのも、その世界で何度転生しても馴染めない魂がいる場合、そのまま放置しておくと魂に不具合が生じるからだそうだ。こういった場合に別の世界へ魂を移すと。



 そんな折、今回もまたいくつかの魂の交換を行ったのだが、交換する一覧の最後の魂がまだ生きている状態だった。

 急いで刈り取りを行おうと焦った結果、なんといくつかのリストに乗っていなかった魂も一緒に刈り取ってしまったそうだ。


 その中に、私がいた。



「つまり、私は元の世界に馴染んでたのに、貴方のミスで死んだって事なのかしら?」


「う、うん。君はとても信心深くて真面目だったらしいね。凄い苦情が来たよ、ヒイズルクニから。地球には山程神々がいるけれど、かの国での信仰は廃れ気味だったそうだからね」



 ヒイズルクニ? ああ、日本か。

 確かに、昔から古事記とか日本書紀とか読み漁ってたし、人より日本の神々への信心深さはあったかもしれない。

 日本てグローバルというか、杜撰というか、正月は神教でクリスマスはキリスト教で死ぬ時は仏教だったからね。

 日本の神々の正式名称諳んじられる私は、敬虔て部類なのかも。



「他の間違いで呼んでしまった魂たちにはなるべく、希望通りの転生先を用意したんだけど……。一人、物凄く我儘な魂がいてね? その子の対応をしていたら、いつの間にか君が転生しちゃってたんだよ」


「ほぉう?」


「ほ、本当なら記憶を抜き取ってから転生するんだけど、僕が気が付いた時にはもう体に馴染んじゃってたみたいで……」


「……」


「ふ、不具合があったら回収するつもりだったけど、なんか、記憶も忘れてたみたいだし大丈夫かなって…様子見で…」


「そしたら、突然記憶が戻って混乱しているから呼び寄せたと?」


「うん! その通り!」


「はぁぁ……」



 もう何も言いたくない。

 手違いで死んでるとか、アフターケアのズボラさとか。

 はあ。



「えっと……。落ち込んでいるところ申し訳ないんだけど……。実はもう、その体から回収はできないって言うか……そのぅ」


「ふぅぅぅ……」


「でもでも! 何か希望とかあれば何でも言ってね! 君には本当に申し訳ないと思ってるから……」



 心底申し訳ないという顔でしょんぼりと話す神様を見て、もういいかという気持ちになる。


 どうやらこのまま男としての一生を送らないといけないようだし。

 どうやら、そこそこ……いやかなり違和感はあるけど、何とか頑張ってみようと思う。



「因みに、今の君の身体はこんな感じだよ」



 そうだと言って神様がパチンと指を鳴らすと、白い世界に細かい装飾の施された等身大の白い鏡がでてきた。

 あまり期待しないで覗いてみて、一言。



「嘘っそぉなぁにこのイ・ケ・メ・ン!! エルフみたい! 凄い! 自分で自分に惚れそう!」



 まるで神か精霊かと思う程幻想的で儚げな少年(?)が、切れ長の瞳を大きく見開いて立っていた。

 サラサラ艶々のストレートヘアが、金色と若草色を混ぜた様な不思議な輝きを放って緩やかに腰まで伸びている。

 森の木々を思わせる深緑の瞳は複雑な色を放ち、とても賢そうに見える。

 整った眉と長い睫毛、形の良く程よい血色の唇に、全体的に色白でしかし不健康では無いミルク色の肌をしていた。



「え、これで男なの」


「男だねぇ」


「少女じゃなくて?」


「違うねぇ」



 驚きである。

 日本人だった頃もそこそこ彫りの深い顔立ちをしていたが、今はもっと各パーツが際立って、それでいてとても小顔である。

 子供なのに既に八頭身で、手足もスラリと長い。

 真面目に、これはやばい。

 男でむしろ良かったかも。



「女の子だったら貞操の危機だったかも」


「うーん、男の子でもかなりマズイのは変わらな……」


「お黙んなさい!」



 神様にきく口では無いと自分でも思うけど、そんなこと考えたくもない。


 しかし、こんなに完璧な外見なのだから、これは何か面白いことが出来るのではないだろうか。

 例えば、女装とか。


 いや、折角男に生まれたのだから、この外見で男らしさを求めるのもアリかもしれない。

 いやいや、それでは面白くもなんともない。もっと楽しい感じに……。



「はっ?! そうだわ、オネエ! オネエを目指しましょう!」



 日本人だった頃、社会人になってから行きつけのバーのマスターがオネエだった。

 とても気のいい人で、包容力のある素敵な大人だったのだが、顔はどうしようもなく濃ゆい男顔でとても残念だったのを覚えている。


 この顔と体ならば完璧なオネエになれるのではないだろうか?


 そもそも、女だった頃の自分のタイプの異性像とは、硬派な筋肉のある男性である。

 男として生きるならば、毎回鏡を見て嫌な気分にならないよう、自分の理想像を実現すべくある程度目指す目標を掲げておくべきだろう。


 という訳で、オネエだ。


 なろうとしてなるものでも無いかもしれないが、別に気にする必要もなかろう。

 第一、体が変わったからと言って、女性とそういう関係になれそうもない。


 最初から割り切って、恋愛対象は男性かつ言動は女性寄り。見た目は性別不詳をはみ出さない範囲で、もしもの時の為の引き締まった筋肉を育てていこう。



 よし。



「ねぇ神様? 私がさっき居た場所って何なの? 子供が沢山居たみたいだけれど、あれは私の家族?」


「いや、今の君は孤児なんだ。あそこは孤児院で、居るのは兄弟のように面倒を見ていた子供や親しくしていた友達、孤児を面倒見るシスターだね」



 今の?

 なんか引っかかる言い方だけど、まぁいいわ。



「分かったわ。何か、注意しなければならないことはあるのかしら。例えば、前の世界での事を人に話してはならない……とか」


「特には無いかな。身分制度のある世界だから、少し考え方とか価値観に違いがあるかもしれない点だけ注意するといいけど。

 あの、何か願いはないのかい? やっぱり女性として生まれ直したいとか……」


「だって、出来ないんでしょ。無いわよ」


「う、うん。そうなんだけれど……」



 神様は指先をチョンチョンとつ突合せながら、何やらごにょごにょと喋っている。

 モジモジされてもよく分らん!



「特筆して何か気を付けなければならないことが無いのなら、結構ね。私は私で好きに生きていくから、神様は気にしなくていいのよ。

 まぁ強いて言うならば、素敵な殿方に出会ってみたいとかはあるけれど、これって運だものね?」


「と、殿方? え? あの、君って男の子なんだけど。異性じゃなくて?」



 神様は困惑した顔をして戸惑いを隠そうとしない。


 やっぱり、まだレズとかゲイとかオカマとかオネエとかって概念が無い世界なのかも。



「そうよ? だって、私今まで女性として生きてきたんだもの。孤児なら尚更、子供を作るには慎重にならないといけないんだから、態々恋愛対象を異性に矯正することはないでしょ? そりゃ、気の置けない女友達なんかもいたら嬉しいけど」


「えええ……」



 前の世界でも思ってた事だけど、産んだら産みっぱなしの子供が多いのよね。

 ま、それぞれ事情があるんでしょうけど。

 私は、責任が取れないことってしたくないのよ。

 だから、幸せにできる自信が無いうちは子供も絶対にできないようにしてたわ。



 今回も同じよ。

 男ならいずれ、家族ができた時に家族を守らなきゃならない。それは義務よね。

 でも、現状伝手も後ろ盾もない孤児というスタートダッシュポジションのまま、そんな義務負いたくないから。

 きっと、自分が生きてくだけで精一杯でしょうし、私、自分が一番大事だもの。



「という訳で今世の目標は、筋トレしつつ性別不詳のオネエを目指す、かしらね?」



 ──悪くないわね。

 美人は他人の権利に侵害しなければ何しても許されるんだから、何してもオーケーなはずよ!


 ──でも美しいだけでは自分の身を守れないから、ちゃんと男言葉も使えるようにならなくっちゃね。

 その点、前世での弟や従兄弟を参考にしたらいいのかしら。



 てやんでぇぃ、べらぼうめぃっ?

 なんか違う。



 兎も角、そうと決まればやる事は山積みだ。

 やる気を漲らせた私は、神様に向き合ってにっこりと笑った。



「そういう訳だから、神様。色々教えてくれてありがとう! 私、何とかやってみるわ!」



 神様はまだ困惑した顔のままだったが、私が踏ん切りをつけたのを見て幾らか安心したように微笑んだ。



「前向きになってくれたのなら良かった。それじゃ、君の為の願いは保留にしておこう。また何かあったら、その時叶えられるように」


「え? 別にいいって言ってるのに……。案外真面目なのね……」


「ふふふ。せめてものお詫びに、ね。さぁ、君を呼んでいる子達がいる。早く行ってあげるといいよ」



 その言葉を最後に、徐々に私の意識はブラックアウトした。




 ***



「ねえ、アンフェルお兄ちゃん。レイお兄ちゃんどうしたのかな? 様子がおかしかったよね……」


「……」


「やっぱり、頭を打ったせいでおかしくなっちゃったのかな? ぼ、ボク……」



 グズグズと泣き始めたマークを横目で見やり、俺はなんとも言えない気持ちになった。



 いつも1人で、他の孤児院の連中とつるむ事もせず、これといった感情の起伏もなかったレイ。

 なまじ顔は整っているから、まるで心のない人形みたいだと、俺を含めた皆から遠巻きにされていた。


 何でかマークを含め、幼少組の子供からは懐かれてやがったが。

 それでも人と相容れようとしないアイツに、俺はいつも、どうしようもなくイラついていた。




 孤児院には、色んな境遇で親のいない子供が暮らしている。

 皆、多かれ少なかれ心に傷を負って、ここに来た。

 だから、レイも初めはそうなのかと皆気を使っていたのに、俺や他の同年代の奴がどんなに声を掛けても無視するし、からかったり一緒に遊ぼうと声をかけても何も反応しない。


 何なんだと思った。

 自分一人だけ不幸だとでも思ってんのか。

 馬鹿にしてんのかって。


 それなら、お望み通り一人にしてやろうと。



 次の日から集団シカトを食らっても、アイツは何も変わらなかった。

 遂に我慢出来なくなって、アイツを怒鳴りつけた。マークが止めに入ってきてが俺は止めなかった。

 ほんの一瞬、アイツはこっちを見たけど、虚ろな目に俺の姿が映り込むことは無かった。


 それで……俺は…………。



 ほんのちょっと、突き飛ばしただけだ。

 でもアイツはビックリするくらい軽くて、こっちが驚くくらい飛んで、転がってた石に頭をぶつけて、それから意識が戻らなかった。


 3日も。




 今は何事も無いように寝ているレイだが、起きたら何と言われるだろうか。

 俺がした事を、シスターにバラすだろうか。


 さっき、俺達を見ても何も言わなかったのは、言う気は無いということか。

 でも、アイツがあんなに喋ってるのも初めて見た。

 様子も変だったし。



 俺が黙っていると、レイが横たわっているベッドの向かい側で同じく、レイを見舞っていたキャメルがジトっとした目を寄越した。

 責められているような気がして、思わず睨んでしまう。



「んだよ」

「取り敢えず、もう一度レイが起きたら今度こそ謝っときなさいよ。悪気はなかったんでしょ」

「……許してもらえるか分かんねぇだろ」

「はぁ? 何言ってるの? 許して貰えるまで謝るに決まってるでしょ。シスターには私もマークも言い付けたりしないから、ちゃんと自分で謝るの! 分かった?!」

「チッ。 分ぁってるよ」



 キャメルは暫く言い聞かせるように話していたが、やがてシスターに呼ばれてマークと共に部屋を出ていった。


 クソっ。

 何なんだよ。



 俺はガシガシと頭を掻きながら、寝ているレイを覗き込んで睨み付けた。

 呑気に眠りやがって。



「お前だって、悪いんだからな。俺だけのせいじゃねぇ……」




 どうせ聞いちゃいないと思ったら、つい悪態が溢れた。

 が次の瞬間、微動だにしていなかったレイが身動ぎ、唐突に目を開けた。

 視線がかち合う。




「ッ〜〜〜?!?!?!」

「…………」



 反射的に後ずさったせいで、椅子が倒れた。驚きで咄嗟に言葉が出ない俺を見て奴は二三度瞬きを繰り返すと、一呼吸後言い放つ。




「誰?」



「………………。は?」



 今、こいつは何と言った?




「ねぇちょっと、聞こえてる? あんた誰よ。あんたって言い方はあれかしら、でも子供同士だし別にいいわよね? それで、誰なの? ああそうだわ、ついでにあたしの名前も教えて頂戴ね」

「は?」

「は、しか言えないの。あ、喋れないのかしら。いえ、さっきは話してたはずよね? 何なのかしら。あたしってもしかして、虐められてたりするのかしら。ちょっとどうしましょう。記憶がすっぽり抜けてて分からないわ。もう! あの神様ったら怠慢すぎよ! 記憶が無くなるなんて、早速困っちゃうじゃない!」




 矢継ぎ早に捲し立てるレイを、俺は呆然と見つめた。

 頭が混乱している。ちょっと待て落ち着け俺。


 今喋っているのは、レイなのか?

 この、女みたいな話し方をするのが?


 首を傾げる様子や話し方が、下手な女たちよりも女らしい。容姿と相まってまるきり女みたいだ。



「ねぇ。教えて欲しいんだけど?」

「ッ?!」



 いつの間にか息がかかるくらい近くにアイツの顔があった。

 キラキラと輝いているアイツの緑の目の中に、驚いた顔の俺が映っている。


 長い睫毛、日に焼けていない色白の肌。ほんのりと薄ピンクに染まった頬に、柔らかそうな唇が少し不満げに歪められている。

 ベッドから身を乗り出している奴の肩でサラサラの金緑の長い髪が緩やかに流れ落ちる。

 その様はまるで、人形が命を得て動き出したような……。




「レ、レイお兄ちゃん!? 起きたの!?」

「ハッ?! ち、近ぇよ! 離れろ!」



 戻って来たらしいマークのお陰で意識が戻った俺は、慌ててレイを押し退けた。



 あ、危なかった。



 ……ん?







 あ゛あ゛!?




 何も危ないことなんかねぇだろ俺?! ちょっと色っぽいなとか考えてなんかね…え………。

 …………。

 …………。






 何考えてんだ俺考えるな俺?!?!



 そ、そうだ。

 これは、あれだ!

 人形みたいだったアイツが人間ぽくなったから、ちょっと驚いただけで……?!?!

 別に可愛いとか綺麗だとか思ってねぇっ!!!!



「なんかよく分からないけど、思ってることが口から全部で出んのよねアンタ。面白いけど……」

「なっっっ?!?!?!?!」



 心做しか呆れた様な馬鹿にしたような顔でこっちを見てくるレイに、俺は口をハクハクと動かすことしか出来なかった。


 しかも、次の瞬間───。



「フッ。……可愛いわね?」

「ッ〜〜〜〜〜?!?!?!」




 クスリと。

 笑いやがった。




 あの。

 人形のようだった。

 レイが。




「クッ…………!」




 左胸が大きく軋む。

 突然の鈍い痛みに服の上から抑えるように俺は耐えた。






 やばい。





 俺は。

 おかしくなったみてぇだ。







 レイが物凄ぇ、可愛く見える。











人形に命が吹き込まれた様な主人公により、早々にアンフェル(ニヤリ)。

主人公はポジティブシンキングです。




読んで下さり、ありがとうございました!

良いね・高評価★★★★★して下さるととても嬉しいです!


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