ライブ全開
八月下旬ー
締切を過ぎて予選まで残り一週間に迫った。
しかし、いつもと変わらず芸人らしい空気が古本本社に流れる。
会議室では明日行う若手を集まってやるライブの最後のリハーサル兼打ち合わせをしていた。
ナカナカとオリジナルレイディオなど若手のエース級が一同にやる、そこそこ大きなライブである。
「んじゃ~それでいいっすね」
決定したようでみんな「おつかれさまでした」と言って出て行く。
内と中は会議室残ってネタ合わせを始めた。
「短いのを二本ってキツいな~」
会議室の天井を見ながら言う内。
中はネタ帳を見て何かをつぶやいていた。
「……何かしたか?」
中に心配そうに聞く。
しかし、何も答えずネタ帳を見てつぶやいていた。
「明日、早いし今日は終わるか」
中から返事がない。
内は中の肩を揺らす。
「あっ…何?」中がマヌケな声を出す。
「明日、早いから今日は終わりな」
「あ……あぁ…」
内はネタ帳をしまって、コピーを中に渡し会議室から出ていった。
「………言えねぇよな…」
中はコピーを持ち上げて、つぶやいていた。
ライブ当日ー
「は~いど~も」
「ナカナカですヨロシクお願いします」
ライブはナカナカの漫才から始まった。
新ネタを披露していた。
最初は緊張した様子だったが、客のウケ具合はそこそこよかった。
「いい加減にしろ」
「あざっした」
漫才を終えて二人は袖に戻って来た。
「フゥ~~」
大きく息をはいて、内はネクタイを緩めた。
中はスーツを脱いでタンクトップとパンツ一丁になった。
出囃子と同時にライダースが出ていった。
そして、無事にライブを終えて打ち上げに来ていた。
「おつかれさまでした
乾杯!!」
みんなワイワイ騒いで食べ始める。
藤林がかなりのペースで飲んで酔っ払っていく。
藤林が「いや~兄さん結婚しないんすか」中の頬を突っ突きながら聞いてくる。
「相手がいねぇからな~
出来ねぇよ」
頭を書きながら答える中。
藤林は頬を引っ張りながら「いや~噂ありますよ~あの娘と~」ギリギリの滑舌で聞く。
「うるせ~よ、あくまで噂だからな…」
「意味ありげな言い方ですね…」
中が藤林の頭をヘッドロックしながら酒を飲んだ。
内はネタのことを考えながら隅っこで一人酒を飲まずボーッとしていた。
内と中はお互い心に何かを抱えたままWMOの一回戦を迎えることになった。