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ギター

一週間後ー


ダウンビレッジ の前説に呼ばれて漫才をしている。

関東ローカルの爆バトで気に入ったようだ。


ナカナカは前説を終えて袖に帰る。

「はぁ…」

決して明るい方ではない内が爆バトが終わってから溜め息が増えてきた。

仕事では見せない、相方には見せない、内はこの二つを心に決めていた。


「お疲れさん」


マネージャーがファイルを開きながら迎えてくれた。


「今日はこれ見て、明日は京都に営業な」


内は黙って袖からダウンビレッジのトークを見ていた。

中は客席の方に周って見ていた。


二人の会話を爆バト以来見ないマネージャーは頭を抱えていた。



「お疲れ様でした」


ナカナカは今日の出演者に挨拶をしていた。

ダウンビレッジもこの局を出ようとしていた。


「お前らええやん」


浜本はナカナカにそう言って局を出て言った。


「ありがとうございます!」


中は勢いよく頭を下げた。

内もそれに合わせて頭を下げた。


「やったぜ」とはしゃぐ中。

ガッツポーズはしてるがあまり嬉しそうに見えない内。



「はぁ……出て来たのはいいけど…どうしよう」


裕子は同棲していた家を出て来たが、東京に住む場所は他になく友達の家に泊まっていた。

しかし、迷惑はかけたくないので実家に帰ることにした。

それに裕子には夢があった。

世界を見て回ること。


「明日か……」


明日には実家の秋田に帰ることを決めた。

内にも電話でそう告げた。

そのとき内は子供のように明るく応援してくれた。


重い足取りで友達の家へと向かう。


「あれ…裕子ちゃん!」


後ろから声がした。

その声の主は中だ。

裕子の隣りに走ってきた歩幅を合わせて歩く。


「あのさ……内の様子が最近変なんだけど…何か知ってることない?」


中の言葉が胸に刺さった。


「あの……」

「やっぱ…爆バト負けたのがショックだったのかな……」


裕子の言葉をかき消すように言う。

「まぁアイツのこと頼むよ!じゃあな」


手を振りながら走っていく。

裕子は一人で人込みの中にたたずんでいた。


内は渋谷の駅の前に座っていた。

裕子と初めての待ち合わせがここだった。

未練がましい自分が恥ずかしくて一人で笑っていた。


「あの…そこ…ウチの場所やねんけど…」


ギターを持った小柄な女の子が内の目の前に立って言った。

内はその一言でハッと目を覚まして「ゴメン…」っと言って立ち上がった。


ギターの子は内の顔をジッと見つめていた。

内はちょっと恥ずかしくなり背を向けて歩き出した。


「あ~お笑いさんや!」


後ろで思い出したように言う。

周りの視線が二人に集まる。

内は急ぎ足でこの場から離れて行った。


「今度ウチの歌聞きに来てな~!!」


女性とは思えない大きな声を張り上げて言った。

内は聞いてないフリをして遠くへ早歩きしていった。


夜になり四月半の風は冷たかった。


「お~けっこう人いるな」


渋谷駅の近くに人だかりが出来ていた。

人だかりの一番奥にギターを持った娘が座っていた。

気持ちよさそうに歌っていた。


「やっぱ…歌うめ~な…」


中は女の子を見て呟いた。

歌が終わり拍手が贈られた。


「美優!帰るぞ!」


ちょっと離れたところで大きな声を出す。

美優はビックリして周りを見渡していた。


「おっ…中兄ちゃん」


大きく手を振る美優、それに軽く手を振り返す中。

ギターをしまい、中のところに走ってくる。

「じゃあ…行くぞ」


中は美優を連れて家へと歩き出した。


「そうだ今日さ、プロお笑いさん見てんで」


中は笑顔で「誰をみたの?」と聞いた。


「名前は知らんねん」


美優が両手を上げて答える。

中は苦笑いしながら、やっぱコイツはアホだなと思った。



美優は中の家についた。

家に入るとまず先に寝床を確保しにいった。


「ウチここな!」


大きな声で中がいつも寝てる布団を指差す。


「そこはオレの……まぁいいや」

「優しいね~」


うるせぇと照れながら中は台所に向かった。

美優は横になってテレビを見ていた。



「あっ…中兄ちゃん!この人!!……って」


中は美優の隣にしゃがんで唖然としていた。


「内かよ」

「兄ちゃんと映ってる」


美優は手をたたいて笑っていた。

「なんか運命やんな」

「どこがだよ」


そう言ってまた台所に向かった。

美優は笑って二人が出てる番組を見ていた。



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