漫才
「さぁ最後のコンビになりました」
「10組目のコンビはこちらのコンビです」
【関西のホープ
オンステージ】
エレベーターが上がり、最後のライバルの追撃が始まった。
最終決戦が決まった、パリブーツと爆笑チャーハンはネタの最終確認をしていた。
内は勝利を確信していたが、中はオンステージの漫才を一度見たことがある、だから気は抜けなかった。
「はいど~もオンステージです」
「いきなりなんやけどな」
「なにしたん」
二人の漫才は若いからこそできる世間知らずの漫才だった。
審査員はパリブーツのときのように笑っていなかった。
それを見てちょっと安心する。
「おい確認するぞ」内が声をかける。
「あぁ…」中はネタの確認をするが、今一つ集中仕切れなかった。
「全力投球しはるタイプは合わんな……」
「だな…こっちのほう最終決戦来てくれたらいいな…」
三田村と遼が小さい声で話していたのを偶然、中と小鉄の耳に入った。
警戒されることはいいことだと自分に自信を持っていいと受け取る。
「もうええわ」
「お前がいうな!!もうええわ」
オンステージが舞台から降りた。
司会席に行ったところでCMに入った。
「ヤバいな~」
「大丈夫だって」
中は頭を抱えていた。
内が隣で肩を叩く。
CMが終わり、今野が「さぁ最後でしたけど、どうでしたか?」二人に聞く。
そして、運命の点数の時がきた。
「630点、高得点ですけども……
さぁ点数が出ます」
モニターにジャッジの文字が出た。
心臓の音が聞こえてくる。
「95
95
91
88
86
87
89
合計は…………631点!」
「現在の順位は……第3位です!!」
3位以内から自分たちの名前が消えた。
一点差で負けた二人は静かに楽屋に入っていった。
「惜しかったな~」
今日負けた芸人達が温かく迎えてくれた。
「よかったですよ」
オリジナルレイディオが中に抱き付いて来た。
「やめろよ」
中は笑いながら押し退けた。
内は同期のフジサンの隣に座った。
「いや~悔しいな」上を見ながら内は呟いた。
モニターでは最終決戦トップのオンステージがネタをしていた。
一本目と変わらず、石上をバカにするパターンのネタだった。
楽屋は明るい雰囲気で漫才を見て笑っていたが、全員が来年に向けての闘志を秘めていた。
3組の漫才が終わり、審査員のジャッジの時が来た。
楽屋も静かに結果が出るのを待っていた。
画面に映っているパネルが、ひっくり返える。
「爆笑チャーハン
爆笑チャーハン
パリブーツ
パリブーツ
パリブーツ
爆笑チャーハン
爆笑チャーハン!!
初代チャンピオンは爆笑チャーハンに決まりました!!」
会場も楽屋も明るく拍手していた。
楽屋の芸人達は舞台に向かって歩きだした
表彰式は全員参加で行われた。
その後、打ち上げをしているときに爆笑チャーハンのマネージャーのケータイは鳴りっぱなし、改めてWMOの影響力を知ったのだった。
「ただいま…」
十一時ごろ家に着いた中。
「おつかれさ~ん」美優はダラッとしながら言った。
座るといつになく、くらい空気が流れる。
「はいよ」美優が酒を渡した。
中は「いらねぇよ、飲めねぇから」酒を卓袱台に置いた。
美優は「今日くらいええやん、励ましの会ってことで」また中に酒を渡した。
中は黙ってコップについだ。
「乾杯」
「はい乾杯」
一気に飲み干す。
「ウチな、今日な兄ちゃんが頑張ってるとこ見たら、ウチも夢に向かって頑張らなアカンと思って…………一人暮らししようと思ってんねん」
美優がまっすぐ目を見て言う。
中は少し黙ってから、「ん~いいんじゃねぇか、家とか決まってるんだろ」
「決まってないんやけど…」
中は酒をまた飲んで「んじゃ~決めないとな」と言った。
「止めたりせぇへんの」美優もまた一杯飲んで言った。
「元々、京都から飛び出して来たんだろ、そんなの心配してられねぇだろ」
美優はそっかと言って黙っていた。
「…なぁ……オレたち…面白くなかったかな…」
中が突然、美優に聞いた。
美優は、今まで見たことない中にビックリした。
「面白かったやん
あのメンバーで4位やで
あとちょっとで最終決戦までいけたんやし」
「そうだよな、あんがと
オレもう寝るわ」
布団を出し、寝てしまった。
「ウチも寝よ」
隣の部屋の布団にくるまって眠りに入った。