準決勝、やったりまSHOW
十一月三十日ー
WMO東京準決勝ー
今までバラバラだったが三回戦を突破してきた東日本の芸人が一同に集まった。
楽屋で煙草を吸って時間を待つ内。
中は廊下で漫才の練習をしていた。
お互い会う機会がなく、WMOですら話す姿は見られなくなった。
「何してんすか?」
石上が中に声をかけてきた。
ネタ帳を閉じて、石上の方を向く。
「ネタ合わせだよ」
「いや、それは二人でやるもんでしょ」
石上は中の隣に座って、漫才について語りだした。
中はうなずきながら聞いていた。
石上が段々熱くなっていくと、向こうから真っ白の服をきた細長い男が近付いてきた。
「石上!何してんねん!ネタ合わせの途中やろ」
石上は立ち上がって「今いくわ!!それじゃ~失礼します」中に頭を下げて白い男の方に歩いていった。
話しができるコンビがうらやましく思う中だった。
「ナカナカさん、そろそろお願いします!」
WMOスタッフが舞台裏全体に聞こえる声で呼ぶ。
「よし!」
気合いをいれて歩き出す。
内は煙草を消して舞台に向かった。
あらしーズがMCをしているところを舞台裏にあるテレビで見ていた。
近くにいた三田村が中に「前説かなりすべってたぞ」と笑う。
「マジですか」自分の髪をクシャっとしてしゃがんだ。
三田村は肩を叩いて「まぁ前説頑張れよ」とふざけていた。
WMOスタッフが舞台袖までナカナカと次のアイルランドを連れて行く。
「ほんなら、準決勝始めましょう」
あらしーズがはけてきて出囃子がなる。
中は大きく息をはいて勢いよく飛び出す。
「は~いど~も」
「ナカナカです」
二人の舞台を険しい眼差しで見つめる舞台裏の芸人達。
準決勝には、WMOの前に作った新ネタではなく今までやりなれたネタ、爆バト史上最高得点を叩き出したときのネタ。
今はネタを噛むことも無くなって、中はネタを楽しめるようになった。
内も漫才のときは、何故か中に感謝、尊敬をしてしまう。
「ゴメン、出来ねぇ」
「いい加減にしろ」
二人は黙って礼をして、はけていった。
舞台裏の芸人は温かく迎えてくれた。
三田村はスーツのネクタイを直しながら「お前らトップであんなウケんのかよ」どこかで聞いたことあるような言葉を言われた。
「ありがとうございます」
深呼吸をするように息をはいて、静かに楽屋に戻り荷物を片付けていた。
「あれ?かえるんすか?」
石上が自分のネタ合わせ中にもかかわらず聞いてくる。
「まだ仕事があるからな」とカバン下げて劇場を後にした。
結果が出るのは明日、緊張で仕事に集中出来るかわからなかった。
フジサンテレビについたのは夜八時半だった。
収録は九時からとしか、いつも聞いていない。
【矢村、中のやったりまSHOW】は視聴者からのオファーを全力で主に中が叶える番組なのだ。
そのため、本番までその内容を知らない。
しかし、いつもは外ロケをしてからだが今日はスタジオでだった。
「おはよ~ございます」
スタッフなどに挨拶して周る中。
既に矢村は来ていた。
「いや~おはよ~ございます」
「夜やねんけどな」
とりあえず矢村の隣に腰をかけるが、会話がないので気まずい中。
中が思い切って話そうとすると矢村が「そや、WMOどうなった?」と前のめりに聞いて来た。
「いや~明日になんないとわかんないっすね~」
中は頭を書きながら答えた。
「手応えてきにはよ」
楽しそうに言う矢村。
それに「決勝いったでしょ、これは」と冗談混じりに言った。
「ほな、いかんかったら五千円な」
「わかりました、オレが決勝いったら言うこと一個聞いてくださいね」
矢村は「ヨッシャ!乗ったるわ」満面の笑顔で言った。
二人が話している間に収録の準備ができ、スタンバイするよう促された。
そして、本番が始まった。
九時ごろ内は芸人仲間と飲みに行っていた。
「誰いったと思います?」
「オレは、いかなかったら順番のせいだな」
「実力だろ」
飲みの席は夜遅くまで続いた。
フジサンテレビスタジオー
「さぁ始まりましたけども、え~まずオファーのVTRが来ております
どうぞ」
画面にVTRが流れ始める。
現れたのは歌手の つんつ だった。
「え~矢村さん、中くん初めまして、つんつです。
え~今回は私が初プロデュースのボーカルグループ、まぁアイドルグループを宣伝していただきたい」
VTRが終わり、後ろから炭酸ガスとともに8人の女の子とつんつが出て来た。
「ど~も つんつです
んで後ろにいるのが、宣伝していただきたいグループの ナイトガールズ です」
8人が同時に礼をする。
緊張しているせいか動きや表情が固い。
緊張をほぐそうと話を聞いてみることにした。
「とりあえず自己紹介お願いします」
矢村は進行をしていく。
「ナイトガールズ、リーダーの 飯岡潤 です」
順番に自己紹介をしていく。
全員し終わると、すかさず矢村が つんつに話をふる。
「どうやって我々に宣伝しろと?」
つんつは「それを考えてもらいたくて来たんや」関西弁まるだしで言う。
矢村と中は、唖然として「え~投げ捨てる感じですか」とつんつに詰め寄った。
「二人で頑張ってくれんかな?」
頼まれた二人は声を合わせて言った。
「やったりましょう」
今日の収録が終わり明日から外ロケが始まることになった。
楽屋でどう宣伝するか考えている矢村と中。
アイデアが出ないまま十分がすぎた。
「よし、お前に任すわ
今までお前がやって来たんやし」
そう言って帰り支度を始めた。
「ちょっと待ってくださいよ」立ち上がって止めに入る。
しかし、矢村は「まぁ、いつも何とかなってたやん
頑張りや」言い残して部屋を出ていった。
両手で顔を多い「またかよ」大きく息をはいた。
そのまま髪をかき上げ、適当な紙の裏に明日のアピールの案を書き始めた。
十一時には局を出て、家に帰ってからも美優にアイデアをもらいながら宣伝方法を何とか作り上げた。