オンステージ
十一月上旬ー
WMO三回戦ー
「は~いど~もナカナカです」
二人は三回戦のトップで漫才をしていた。
エントリー番号が1番のせいでWMOの予選はずっとトップで漫才をしてきた。
「もういいよ」
「あざ~した」
舞台裏に帰ると芸人から拍手喝采だった。
「スゲ~よトップであんなウケんのかよ」
芸人達がナカナカを絶賛をする。
漫才を終えると結果を聞かずに次の仕事に向かった。
最近二人の仕事がバラバラ になることが多くなってきた。
漫才、仕事以外での会話はまるっきり無くなった。
WMOだけが唯一と言っていいくらいだった。
中は、予選を終えてフジサンテレビにて収録をしていた。
セットにはデカデカと【矢村、中のやったりまSHOW】と書いてあった。
「今日も依頼がきております」
矢村がいつものように仕切る。
中は隣で相槌をうちながらスタジオに連れてきていた後輩をみた。
その後輩は電話をしている様子だった。
そして頭の上に両腕で丸を作った。
「はい!!じゃあ!!VTRスタート!!」
「いきなり声大きくなったな」
ナカナカWMO三回戦突破
中はいい気分で食べていた。
「パリブーさんも通ったか…WMO…」
店長から酒を勧められるが「すいません宴会のときとかしか飲まないんです」と断る。
「あれ?中さんじゃないすか?」
中は見たことない奴に声をかけられてビックリした。
「誰ですか?」
「あぁ~オレはオンステージってコンビの石上っていいます」
関西弁混じりに自己紹介する。
勝手に中の隣りに座り注文する。
唐揚げを頬張りながら「隣りで食うのかよ」石上に言う。
後輩とわかったら敬語使わなくなった。
「WMO出てはるんすか?」
石上が初対面にもかかわらずなれなれしく話してくる。
「出てるよ、エントリー番号は1番だしな」
「1番すか?オレらも1番欲しかったんすけどね…」
うらやましそうな口調で言うが、よく聞けばちょいちょいカッコつけようとする奴だということがわかった。
意外と会話は続き、さらに一時間くらいずっと話していた。
中が家に帰るときは、もう夜中の一時だった。
自分の部屋に入るとギターが置いてあった。
美優が寝てるため、静かに掛け布団をだして寝ようとしていた。
そのとき、ケータイの着信音がなった。
「はい、もしもし」
「あ~オレですけど…」
ディレクターからの電話だった。
「いやな、実はな、前にゴールデン番組言ったんだけど深夜なんだわ」
「マジですか」
笑いながら聞き返す、するとディレクターから「テレビをつけろ」と言う指示が出た。
テレビをつけると、中のレギュラー番組のエンディングが入っていた。
「野球中継で一時間くらいおそいけどな」
「そうですか…わかりました…」
電話とテレビを切って、寝に入る中。
「ダマされた…」
寝る間際に気付いた中だった。