冠番組!
「おはよ~ございます」
フジサンテレビの会議室に入り打ち合わせにきた中。
「お~早いな~」
ディレクターが煙草を吸いながらイスに腰掛けていた。
「いや~初の冠番組ですから」と言いながらイスに座った。
それから会話がないまま十分が過ぎた。
「内おそいな~」
ボソッと中がつぶやくと、ディレクターが「へっ?アイツはこねぇよ」煙草を消しながら言う。
中は少しポカ~ンとしてから「な……何でなんすか?」と声を張る。
「んなデケェ声だすなよ
アイツはTBHでレギュラーあるんだよ」
それを聞いて、二人でレギュラーを持てた嬉しさと二人でできない悲しさが出てきた。
「あっちはエイフィフの岡部と、こっちは矢村とだからな
ちょっと複雑だけどな…」
二人で会話していると、矢村と二人のマネージャーが入ってきた。
「んじゃ~始めますか」
ディレクターが眼鏡をかけ直しながら立ち上がる。
TBHの会議室に内が着ていた。
ドアを開けると岡部が一人で座っていた。
「おざ~す」
「…おう」
きまづい空気が会議室に流れる。
打ち合わせが始まったのはこれから三十分後だった。
内も初めての冠番組で張り切っていた。
爆バト準優勝、WMOもある、冠番組、今二人は絶好調だった。
中の打ち合わせが終わったのは、午後九時だった。
「アイツまだ待ってんのかな…」
電車の中で一人つぶやいた。
お台場から渋谷に向かっている。
電車の時間が長く感じる、中は美優のことが心配になってきた。
三十分かけて渋谷駅につくと美優はまだ歌っていた。
十時近くになると聞いてくれる人はいないが、一生懸命歌っていた。
歌が終わると中は美優に声かけた。
「ワリィ待たせたな」
美優はギターをしまって「んじゃ~帰りますか」立ち上がり歩きだした。
中もその後に続いて歩きだした。
帰り道はいつも美優が話して、中が聞き役だったが今日は中がずっと話していた。
美優はそれを笑顔で聞いていた。
「……なぁあそこに誰かおれへん?」
「ホントだ」
二人がアパートに近付いて行くと男の姿がハッキリ見えた。
「内かよ」ため息のように息をはいた。
「こんちわ~」美優はスッと内の横を通っていった。
「どうしたんだよ?」
中は珍しく自分から話しかけた。
内は申し訳なさそうに「いや…なんつうかオレさレギュラー決まったんだけどさ…」
それを聞いて中は「聞いた聞いた、オレも決まったんだよ」
内は唖然とした後、「なんだよ~んじゃ~帰るわ」と言って帰っていった。