雪のように白い天使
なに不自由のない生活...それはまるで楽園のようだった。
(コンコンコン)
ノックする音が聞こえた。
「朝食のご用意が出来ました。」
ドア越しに、私と同い年の少女の声が響いた。それに、翠はあまり間を開けずに返答する。
「分かりました。では、10分後に食事をするとお伝えください。」
そう言うと、ドアから私の方に視線を移す。
「身支度をしましょうか。こちらへどうぞ。」
そう言うと、私を化粧台に誘導して座らせる。鏡には、翠の緑色の瞳がほほえみを浮かべていた。そして、ぼさぼさの髪の私が居た。翠は、腰まで伸びた白髪に櫛を入れる。整ったストレートヘアにくろいベールをふわりとのせて、それから修道服を身にまとわせる。
「さあ、行きましょうか。」
翠はそう言いながら、部屋のドアを開く。
そのあと、薄暗い廊下を進み教祖様に挨拶しに、教会へ行く。
教会に入ると、朝日が淡い光でステンドグラスを照らし、パイプオルガンは、重圧低音であり、それでいてどこか悲しげな音色を奏でていた。なんとも言えない神秘的な雰囲気である。
「おはようございます。子羊たちに神の御加護があらんことを」
こちらに、気づいた教祖はゆったりとした笑みを浮かべて挨拶をする。紫の瞳で銀髪ウルフカットの彼は修道者にはとても見えないが、立派な教祖様である。
『おはようございます。』
それに続いて、ミサを挙げていたシスターたちが丁寧に挨拶をする。
『おはようございます。』
私と翠もそれに続く。
「哀れな子羊よ、今朝も悪夢にうなされていたらしいですね。」
「はい、ご心配ありがとうございます。」
私は、悪夢を引きずっていてはだめだと気を引き締める。
お読み頂いてありがとうございます。本作品はどうでしたでしょうか。
まだまだ楽園で平和なストーリですが、今後ともに少女や翠のことを見守って頂けたら幸いです。