雪のように白い天使
なに不自由のない生活...それはまるで楽園のようだった。
目の前にいる魔女はもう動くことすらなかった。その姿はただれてしまって見るに耐えないものだった。
そんな魔女を見た私の目から涙がこぼれだす。
涙は次から次へと頬を伝っていく。理由は分からない。魔女が云っていたこともわけが分からなかいというのに...。それなのに、頭から離れなかった。「あなたが来なければ私が生きられた」最後にそう言った身勝手な魔女が。そして、その魔女の悲しそうな表情が。
そんな魔女を見たためか、胸が苦しくなり、呼吸が出来なくなる。終いに、視界が暗くなった。
「天使様大丈夫ですか。起きてください!」
身体が揺さぶられる。そんなに揺さぶら無くても良いでしょと呆れながら目を覚ます。
「良かった!」
修道服を身にまとった女性は、まるで宝くじが当たったかのように喜んでいた。彼女は、私がうなされていたのをとても心配していたらしい。いつもの事だというのに。
「翠あいからわずの心配性ね。」
「すみません、つい...。」
彼女は、一瞬暗い表情になった。私は無神経なことを言ってしまったとはっとした。彼女の心配性は仕方がないことなのに...。翠はこの教会で引き取られる前に、家族を失ったのだから。それも、弟の死ぬときの苦しそうな様子が、私が悪夢にうなされているのとそっくりだったそうだ。
「天使様どうなさいましたか。」
彼女に私の顔を覗き込まれ、ドッキとする。
「ボーとしてて...ごめんね。」
お読み頂いてありがとうございます。本作品はどうでしたでしょうか。
物語は始まったばかりです。少女はなぜ悪夢にうなされているのでしょうか。今後とも、訳ありげな少女をお見守りください。