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セインについて


「グアルタさん、冒険者だったの!?」


 私の憧れの職業、冒険者の先輩がこんなに身近にいたとは!


「職業を決める時にあまりにも頭が悪かったもんで冒険者以外になれなかったんだよ」

「でも、今は商人なんだよね?」

「冒険者の仕事で失敗してなぁ。大怪我を負ってこの山に迷い込んだ時にお前の父ちゃんたちに助けてもらったんだ。どうせ体を動かせないなら頭を使えってアーノルドたちが勉強を教えてくれたおかげでなんとか商人として働けるようになった。俺も最初から商人になれたなら冒険者なんてやってなかった。だからセイン、お前も冒険者は辞めろ」


 私のことを心から心配してくれているグアルタさん。

 その気持ちは嬉しい。

 しかし、私の野望のためには冒険者以外の選択肢は現実的ではないのだ。



「グアルタ、セインのことで今までお前に黙っていたことがある」

「さっき言ってたどうせ明日にはばれるからってやつか」

「あぁ」


 父さんは私が両親の実の子供でないこと、サルージアとは異なる種族であること、明日の能力授与では恐らく魔力を授かることになることを説明していく。

 その説明の中に私の記憶の話やヒューマニアの単語は出てこない。

 

 話の間、グアルタさんは口を挟むことなく椅子の上で腕を組みじっと聞いていた。


「その話、セインの前でして良かったのか」


 少し怒ったように言うグアルタさん。

 実の子供でないという話を私が聞いてショックを受けていないかを心配したらしい。

 なんて優しい熊さんなんだろうか。


 私アラサー+5歳児だから全然大丈夫だよ!


「セインもちゃんと理解している」

「こいつの毛が生えていないのももしかしてそのせいか」

「あぁ。なんの種族かは分からないが、セインはもともと頭と目の上以外には毛が生えない。だからグアルタが心配していた病気とかではない」

「……そうかぁ」


 グアルタさんは全身の力が抜けたようにぐてーっとしてしまった。


「グアルタさん、私が病気で毛が生えてないって思ってたの?」

「あぁ、以前に遠くの地方でそういう病気にかかったやつを見たことがあってな」

「病気にかかってた人の種族ってわかる?あと、どんな症状だったか覚えてる?」

「なんでそんなことが気になるんだ?」

「情報集め」


 以前の世界での動物がかかるのと似たような種族、症状であればもしかすると対応ができるかもしれないと思ったのだ。

 

「特に特定の種族っていうのはなかったな。けど病気にかかった奴の身近な人にも同じような症状が出ることがあった。とにかく痒そうで、皮膚が赤く、ぼろぼろになるまで搔いてたぞ」

「毛が抜けたりとかは?」

「あぁ、斑に全身毛が抜けてるやつもいたし、一か所だけってやつもいた」

「脇とか肘に特に症状が出てるような人はいなかった?」

「そこまではわからん」

「ありがとう」


 目に見える病気だから皮膚病は認識されやすい。

 医学という概念すらないこの世界では皮膚病以外の病気はなかなか発見されることもないのだろうと思う。


 皮膚病であれば闘いようもある。

 もし神様からもらった魔力で治療に役立つような魔法が使えるようになるなら最高なのだが、これは明日神様に会ってみないことにはわからない。


「毛がないのが種族の特徴なんだとしてもお前は体が弱いし、力もない。冒険者はやっぱりむかないぞ」

「明日の能力授与が終わったらまたこの話しよう。私も希望する能力が貰えなかった場合には考え直すかもしれないし」


 そう言って話に区切りを無理やりつけた。

 残りのご飯の時間はわいわいとはいかなかったが、自分の部屋に戻る前にグアルタさんから


「5歳まで無事に育ってくれて良かった」


 と頭やら顔やらを撫でられながら言われて私は幸せな気分でベッドに入った。


 眠りに落ちるまでの考え事は明日の能力授与についてだ。

 あまりにも自然に父さんも母さんもグアルタさんも神様、神様、というからにはこの世界では本当に実在しいるのだろう。

 


 

 神様に会えるとかやばい!楽しみしかない!!


グアルタは主人公が心配で心配でたまらない。


次回2日後の更新です。

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