グアルタの心配
現実世界ではありませんが、獣人の皮膚病に対する偏見について書かれています。
作者自身はそのような偏見は一切ないです。
気分を害される可能性がある場合には飛ばしていただくことを推奨します。
「冒険者になりたい」
そう言ったのは昔なじみのアーノルドとソフィアの娘であるセインだ。
アーノルドたちは二人とも魔力が強い故に子供ができにくかった。
山に引きこもったアーノルドたちとは定期的に会っていたが、ある時行ったら娘としてセインを紹介されたのだ。
サルージアの妊娠期間なんて知らないが、出産前最後に会った時には何も言っていなかったし、妊娠しているようにも見えなかった。
妊娠期間が短かったせいなのかセインは病弱だった。
ただでさえ非力なサルージアだっていうのにその中でも特段にセインは病弱だ。
最近はかなりましになってきたらしいが、年に何回かは体調を崩して寝込んでいるようだし、もう5歳になろうとしているのにいまだに全身の毛が生えてきていない。
普通であれば生まれてすぐ、あるいは数日で全身に保護のための毛がふさふさになるはずなのにいつまでたってもこいつはつるつるのままだ。
アーノルドたちは問題ないと言っているが毛が生えてこない病気なのではないかと俺は思っている。
冒険者としてあちこち行ってた時に、毛が一部分生えてこない、あるいは生えていたのが抜けてしまう病気になっていた奴らがいた。
その病気になって死ぬことはあまりないようだったが、痒みからか常に皮膚を掻いていた。
症状が重い奴らは皮膚そのものがぼろぼろになっていくし、近づくことによって病気をうつされた奴がいたことから世間的にあまり良くは思われていない。
皮膚病を患った奴は家に引きこもって家族に面倒を見てもらうか、森や山に入って一人で生きていくかしかない。
幸いにもセインに痒みは出ていないようで、皮膚を掻きむしっている様子は見たことがない。
毛が生えないほどの病気のはずなのに見えている顔や手足の肌はどこも滑らかでつるつるだ。
けれどこの魔法陣の範囲から出て、他の奴らと接すれば絶対に悪意に会う。
だから、俺はセインにはこの魔法陣の中でずっと生活する方が幸せだと思う。
セインにはずっと笑顔でいて欲しい。
だからセインが冒険者として各地を見て回りたいと言っても、俺は反対する。
「お前に冒険者は無理だ」
冒険中の病気や怪我以外にも心配事があったグアルタさん。
本人に知らせるのはかわいそうだし、アーノルドとソフィアは気にも留めてないし。
俺が止めないと!と思っています。
まぁ、杞憂に終わるわけですが。
次回2日後の更新です。
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