表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気づいたらもふもふ王国の住人だった件について  作者: すじこ
5~10歳 ナペルの町でグアルタのお手伝い
30/36

その後の3人

本小説の更新は月、水、金です。


 ルークさんロリコン確定事件から数ヶ月。


「セイン、今日こそは俺の膝の上でご飯食べよう?」

「すごい。今日もいるよ、グアルタさん」



 食材がなくて仕方なく食堂でご飯を食べる予定の日には何故かほぼ毎回ルークさんが合流するようになっていた。

 食堂でご飯を食べるかどうかは早くても前日の夜、遅いと当日の朝に決まるのになんで私達が食堂に来るって分かるんだろう?

 単純な疑問で終わらせて良いのか微妙なところだ。

 しがしながら、やぶ蛇が恐ろしいのできっと野生の勘が鋭いのだろう、と自分を納得させている。



 手を広げて私を見つめながら待っているルークさんを華麗にスルーしたグアルタさんは私を抱き上げ、ルークさんの向かいの席に着席する。

 もちろんその膝に私を乗せて。

 いつも通りのグアルタさんの行動に、いつも通りルークさんも上げていた腕を降ろして店員さんに3人分の食事を頼む。


「セイン、松葉杖のことなんだけど」



 ルークさんが怪我をしたときに使ってもらっていた松葉杖はその後、ルークさんと同郷の人の手へと渡った。

 冒険者だった頃に怪我で片足を失ったその人はなんとか一命は取り留めたものの、まともに歩くことができないため、ただ神殿のベッドの上で一日が過ぎていくのを待っている状態だったらしい。

 そんな彼に松葉杖を渡したところ、それまで生気がなく生ける屍のようだったその人が自分の残った片足で外へ出れるようになり、少しずつではあるが元の明るい性格を取り戻してきているそうなのだ。

 そんな友人の姿を見てルークさんは松葉杖を自分の力で作りたいと思ったそうで、今は材料選びを行っている。


 ちなみに私は神殿が怪我などの理由で自力での生活が困難な人の受け入れを行っていることをこの話を聞いて初めて知った。


 そんな話を聞いてしまっては、どれほどの需要があるのかは分からないが、私も松葉杖をもっと世に広めるべきなのだろうと思った。

 今はまだ時期尚早ではあるが、いずれ怪我などが理由でどうしても職に就けずにいる人たちのために何かをするのも悪くないだろうと考えている。



「作りとしてはそう難しい物じゃないけど、体重が重いやつが使うとなるとどうしても耐久性に問題があるんだよね」

「大柄な人だとかなり重そうだもんね……」


 私はちらりと自分の頭の上にあるグアルタさんの顔を下から見上げる。


 グアルタさんはクマの獣人だからなのかかなり大柄だ。

 縦にももちろん大きいが、全身に鎧のような筋肉を纏っているため、スリムとはお世辞にも言えないような体型をしていらっしゃる。

 体重も150kgは余裕で超えているだろう。

 下手したら200kg近くあるかもしれない。


「……自分の体重なんて知らねーぞ」


 私が見上げているのに合わせてグアルタさんも見下ろしてくる。

 存外に顔の位置が近いことに少しビックリする。


「でもグアルタさんが使って壊れなければ大体の人が使っても大丈夫なんじゃない?」

「まぁ、そうかもな」

「じゃあ、松葉杖の試作品ができたらグアルタに試してもらいにお前の店に行くから!」


 ニッコリと笑うルークさんの顔を見て、あ、誘導された、と気付いた私だった。


「お待たせしましたー!」

 

 そして、タイミングが良いのか悪いのか店員さんが持ってきてくれた食事に話の流れが途切れる。

 忙しいお昼時なので迷惑にならないよう、3人とも素早く食事を進めていく。

 


「来週くらいにはできるから楽しみにしててね!」


 そう言い残して自分の職場である木工所の中へと戻って行ったルークさん。

 ロリコンである以外はすごく良い人なのだ。

 ロリコンである以外は。


 

 やはりこの世界の常識でも珍しいものの、ルークさんが私に対してロリコン発言をしたことは誰にも咎められることはなかった。

 なんだか聞きづらくて両親にもグアルタさんにもきちんと確認はしていないのだが、木工所の親方さんやお店の常連さんたちの反応からそう考えている。

 

 噂好きのおば様には言われた、

「ルークがあの歳で身を固める決意をするとはねぇ。てっきりセインちゃんはグアルタとそういう関係なのかと思ってたわ」

 というセリフに思わず手にしていたお金を床にぶちまけたのはもう1ヵ月以上前の話だ。

 完全に思考停止してしまった私に代わりグアルタさんがおば様に何かを説明してくれていたのだが脳内が真っ白になっていた私はその時グアルタさんが何と言って説明したのかは聞かされていない。

 が、それ以降はお客様からそう言った類のことを言われることが無くなったので随分と上手く伝えてくれたようだ。

 そして、木工所の親方さんからはそれとなくルークさんをお勧めされている。

 解せぬ。

 


「セイン、午後なんだが、」


 とりあえず、仕事の間はちゃんと集中しよう。

 いずれ時間が解決してくれるだろう。


 そう思い、私は今日もグアルタさんのお手伝いに精を出す。





   

 この時の私は獣人と人間の根本的な違いをまだきちんと理解できていなかったのだ。





ナペルから舞台を移動できなくなっていく…‼

今後の3人の関係をそっと見守っていただけると嬉しいです。


今回も最後までお読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ