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目覚め

2022/06/10

ちょっと修正

2022/06/22

合体、修正。


「・・ふぁっ!!」

 目が覚めてあたりを見回す。


 父さんたちと一緒に境界線へ行ったこと、私が父さんたちの本当の子供じゃないこと、前世になるのだろう、以前の記憶が封印されていたことを脳内で整理していく。


 どれくらい寝ていたかは父さんたちに確認しなければなるまい。


 以前の記憶を完全に思い出せたわけではないが、およそ30年分の記憶と知識がドバっと流れてきたせいで若干頭痛がする。


 とりあえずなにやら私はえらくファンタジーな世界に住んでいるようだ。

 前の世界風に言うなら獣人がこの世界の住人だ。

 父さんと母さんは猿の獣人。

 グアルタさんは熊の獣人。

 前に読んでいた図鑑によると彼ら以外にも犬、馬、鹿など陸上で生活する哺乳類系の獣人がいるはず。


 会いたい!!


 前の世界では動物が好きで獣医を職業にしていたほどだ。

 動物好きな私はぜひとも父さんたち以外の種族とも触れ合いたい。




「起きたか」


 そんなことを夢想していると父さんが私の部屋に入ってくる。


「うん。母さんは?」

「リビングでお茶を飲んでる。体は大丈夫か?」


 記憶を取り戻してから初めて見る獣人の父さん。

 どう考えても同じ種族じゃないのに純粋な5歳児だった私はいつになったら全身に父さんたちみたいな毛が生えてくるのかと楽しみにしていたのだ。


 以前の常識を取り戻してしまった私は毛が生えてこなかったことにほっとする他ない。


「大丈夫。まだいろいろ話さないといけないことがあるんだよね?」

「……ああ」


 ベッドから立ち上がり父さんと一緒に母さんの待つリビングへと向かう。




「母さん」

 リビングの机で静かにお茶を飲んでいた母さんに声をかける。


「母さんと呼んでくれるの?」

 振り返って見えた母さんの顔は今にも泣きそうだった。


「今でも私がちゃんと生きているのは母さんたちが愛情を込めて育ててくれたおかげでしょ?」

「けど、本当の親ではないし種族も違うのよ」

「私にとってはサルージアの父さんと母さんが間違いなく両親だよ」


 母さんのところまで歩きながら会話を続けると突然母さんが立ち上がって私を抱きしめた。

 私の肩が濡れているのは気のせいってことにしよう。

 そのままの状態で父さんを振り返ると、父さんも母さんごと私を抱きしめてくれた。



 

 母さんが落ち着いたのを見計らって三人でテーブルを囲む。

 暖かい薬草茶を飲みながら何から話そうかと頭の中を整理していく。


「私のこと、ヒューマニアって言ってたよね? 図鑑では見なかったけどどんな種族なの?」


 まずは自分のことから確認していこうと思い、両親に尋ねる。


「知られていることは多くない。伝説の種族として神話で語られている程度だ」


 なにやらいきなり壮大である。


 父さん曰く、ヒューマニアは伝説上の生き物であり、魔法が使える。

 その魔法で病を治したり、魔道具を作ったりするらしい。

 実際にいつの時代にヒューマニアが存在していて何をしたのか、という正確な記録は一般には知られていない。

 しかし、王宮図書館にはヒューマニアに関する書物が一冊だけ残されていたらしい。

 父さんたちは王宮図書館で読んだ資料から私がヒューマニアだと推測したそうだ。


「私今まで魔法なんて使えた(ためし)がないけど」


 もしや私も魔法使いになれるのか? という期待はあまりしないでおく。

 前世と合わせると余裕のアラサー越えは現実的なのだ。


「能力を授かるのは5歳の誕生日を迎える時なのよ」

 少し瞼が腫れている母さんが私の問いに答える。


「誕生日を迎える時に神様からの贈り物として筋力、体力、知力を授けられるのだけど、サルージアは知力を他の種族より多く頂くの。おそらくあなたは魔力を授けられるわ」


 なるほど。

 ということはもう少ししたら私も魔法使いになれるのか……。


 楽しみしかない!!


 現実的なアラサー脳はどこかへ行ってしまったようだ。


「けど、魔力をもらってもどうやって使えば良いかなんて知らないよ?」


 科学技術の下で育った前世では魔力なんてファンタジーの中だけのものだ。

 使い方なんてわかるわけがない。

 魔力をもつ人がほとんどいないこの世界でも私に使い方を教えてくれる人がいるとも思えない。


「神様からの贈り物は授かった瞬間に理解できるものだから大丈夫よ」


 ……メルヘンだ。


「俺たちもわずかだが魔力を持っている」


 父さんたちも多くの知力とともにわずかな魔力を5歳の時に神様から貰ったらしい。

 魔法として直接発動できるほどの量ではないから準備が必要な魔法陣を使わなければならないそうだ。

 そういったことも5歳の時に神様から教えてもらったと語る父さん。


 獣人、魔法、神様……。

 異世界感がすごいことになっている。


「ヒューマニアの存在を知る人は多くはない」

「あなたは毛が少ないから村や町へ行くと不思議に思われるわ」

「毛がないことは悪いことなの? 毛をもたない種族はいないの?」


 確かに図鑑にはもふもふ系獣人の説明しかなかった。

 爬虫類や両生類、水棲哺乳類、魚類、昆虫などの獣人はいないのだろうか。


「毛がない種族は違う国に住んでいる」


 なんと、私たちが住んでいるところ以外にも国があるらしい!


「基本的に他の国とは交流を持っていないから、毛のない種族をこの国で見ることはまずない」


 なるほど、私のつるつるボディはこの国でかなりのレアものらしい。


「ヒューマニアであることは隠しておいたほうが良いの?」

「ヒューマニアであることが王宮や神殿に知られれば、恐らく一生囲われることになるわ」


 真剣な眼差しでそう言う母さん。

 何かを恐れているようにも見える。





 私はヒューマニアであることを隠す必要があるようだ。





記憶を封印されていたからこそ上手く新しい世界に順応できた主人公。

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