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気づいたらもふもふ王国の住人だった件について  作者: すじこ
5~10歳 ナペルの町でグアルタのお手伝い
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怪我の治り

更新は月、水、金です


 ルークさんが怪我を負ってから今日で2週間。

 本日は抜糸の日である。

 この世界のハサミでは刃が太くて切れ味が悪いので、今回も松葉杖の時と同様、家でハサミを出してからグアルタさんと一緒にルークさんのお宅へとお邪魔する。


「ルークさん、おはよう」

「おはよう、セイン、グアルタ」

「ああ」


 怪我をした日以降もちょくちょくルークさんの傷の様子を見させてもらっていたので経過が順調なのは確認済みだ。

 今はもう体重をかけても痛みは無いようで、歩く姿にも違和感はない。


「じゃあ、糸を切っていくね」


 もう問題なく歩けるようになっているので、ベッドではなく玄関近くの椅子に座ってもらっているルークさんの横に膝をつく。

 そして自宅から持ってきた抜糸剪刀(せんとう)でルークさんの足を縫っていた糸を一糸ずつ切っていく。


「終わったよ」


 合計7糸全てを切り終えてルークさんを見上げる。

 そこには足から目線を逸らした狼の後頭部があった。

 どうやら見ているのが怖かったようだ。

 幼子のようなその姿に思わず笑みがこぼれる。


「ふふ。そんなに痛くなかったでしょ?」


 私に話しかけられてこちらを向いたルークさん。

 

「……痛くはなかったけど、なんか変な感じはした」

「まだ糸が通ってた部分は穴開いてるけど2日もすれば目立たなくなるから。心配しないでね」

「ああ、ありがとう。これでもう傷に関しては終わりか?」

「そうだよ。2週間お疲れ様でした。今日で私とグアルタさんの押しかけ訪問も終わりだから気が楽になった?」


 にやにやしながら尋ねる。


「うーん、それはちょっと寂しいかも。今後も遊びに来てよ」


 予想と異なる返答とルークさんの両手で握られた自分の右手の熱に戸惑う。

 

「……ルーク、この間も説明したが、」

「分かってるって」


 私とグアルタさんの間で誤解が解けた後、ルークさんにもグアルタさんから説明をしてくれていたようだ。

 握った手はそのままに、今までとは僅かに異なる熱量の視線を正面から浴びる。


「ねえ、セイン。グアルタから言われたんだけど中々に世間知らずらしいね?」

「うん、なんか誤解させるようなこと私が言っちゃったんだよね? 今更だけどごめん」


 プロポーズの言葉を私が思いがけずルークさんに伝えてしまっていたことを謝る。

 とは言え、5歳児の言葉を大人のルークさんが真に受けるとは思わないのだが、と今日この瞬間ルークさんの視線を感じるまでは思っていた。


「私、小さい頃から体が弱くて両親と田舎で住んでたから普通の人が当然のように知ってることも知らないことがあるの」

「それなら俺が今後教えてあげるよ」


 ルークさんが握った私の手の甲を親指で撫でる。

 そしてその手をジッと見つめる。


「……? なんかセインの手つるつるしてて気持ち良いね?」


 その言葉を聞いてルークさんに握られていた手をサッと自分の体の後ろに隠し、一歩後ろに後ずさる。

 

 ……やらかした!


 この2週間、一緒にいることが多かったのでルークさんに気を許しすぎていたようだ。

 両親が作ってくれた、毛が生えないというヒューマニアに特徴的な見た目を隠すための魔法陣が刻まれたネックレスは変わらず私の首元にかかっている。

 けれどもこの魔法陣は私自身を実際に変化させるわけではなく、相手に私の姿を幻想によりクマデートに見せているだけなのだ。

 なので当然触られてしまうと見えている私の姿と実態が異なっていることに気づかれてしまう。

 それを避けるために両親からはグアルタさん以外には体に触れられないように気をつけるように、と言われていたのだ。


 冷や汗が背中を伝っていくのを感じる。

 ルークさんになんと説明しようか脳みそを高速で回転させるが最適解が思い浮かばない。


「ルーク何も聞かないでくれ」


 どうしよう、どうしよう、と焦っていると突然体が持ち上がり、私の体はグアルタさんの腕の中へ。

 グアルタさんはルークさんから私の顔が見えないように自分の肩に私の顔を押し付ける。


「……俺の怪我を治してくれた以上の秘密が何かあるみただね? で、グアルタはそれを知ってるわけだ?」

「俺はセインの両親から直接世話を頼まれているからな」

「ふーん」


 そう言ったルークさんの声からは不満であることがありありと伝わってくる。


「セインは10歳まではグアルタのところで手伝いを続けるんだよね?」

「その予定だ」

「そっか、じゃあセインが10歳になるまでに口説き落とせば良いよね?」


 顔は見えないがグアルタさんが低い声で唸っているのが聞こえてきた。

 それにしても5歳児を相手にルークさんは何を言っているのだろうか……。

 え、ルークさんロリコン説??


「……それを止める権利は俺にはないが」

「だって、セイン。だから明日からも遊びに来てよ」


 なんでグアルタさんも止めてくれないの?

 普通に考えて大の大人が5歳児を口説くって言ってるのは止めるべき案件だよね?

 とりあえず少なくともルークさんと一人で会うのは全力で遠慮させていただこうと思う。



 

 グアルタさんが止めないってことはもしかしてまた私の知らないこの世界の常識だったりする?

 



 

グアルタよりも先にルークがロリコンであることが確定してしまいました……。

私もびっくりしてます。←


ここまでお読みいただきありがとうございます。

今後も応援よろしくお願いいたします。

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