グアルタと話し合い
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いつもありがとうございます!
お腹が空いたから、グアルタさんにお願いしてご飯を買って帰ろう。
晩御飯までの時間は短くなっちゃうけど、そんなことよりお腹が空いてしょうがない。
グアルタさんがルークさんを家まで送って戻ってくるまでの間、私はルークさんが寝ていた部屋でだらだらしていた。
これまでにない量の魔力を使用したので無理は禁物だ。
異常にお腹が空いているのも魔力が影響してるのかもしれない。
考え事をしながら待っているとグアルタさんが帰ってきた。
その顔はルークさんが助かったというのになぜか陰っている。
その表情に脳内で疑問符を浮かべながら一緒に工房を後にする。
「グアルタさん、お腹空いちゃったから食堂でご飯買ってお店に戻ってから食べよう?」
「ああ」
「ルークさんのお家近くだった?」
「ああ」
「グアルタさん?」
「ああ」
「どうしたの?」
「ああ」
一体どうしたというのだろうか?
こんなグアルタさんは初めてだ。
いつもはちゃんと私の話を聞いてくれるし、私としっかり目を合わせて会話をしてくれるのに。
今はぼーっと前だけを見てこれでもかというレベルの空返事だ。
「グアルタさん!」
あまりにもいつもと異なるグアルタさんの様子にどうしようもないくらいの不安がこみ上げてくる。
私は隣を歩いていたグアルタさんの手をぎゅっと掴むと夕方になり、人がまばらになってきた町の広場へと向かう。
そこにあるベンチの一つにグアルタさんを座らせると、その正面に立ち、グアルタさんの両頬を自分の小さな両手でぎゅっと挟む。
ベンチに座ってもなお立った私よりも高い位置にある目線がようやく私に向いたのにほっとする。
頬に触れる手はそのまま、グアルタさんのもふもふを堪能させてもらう。
「グアルタさん、どうしたの?」
きっと今日の私の行動に思うところが合って悩んでいるのだろう。
分かっているものの、きちんと言葉にしてほしくて尋ねる。
これから少なくとも5年は私と一番長く一緒に過ごす人なのだ。
変なわだかまりは残したくない。
そもそもグアルタさんと二人きりになったタイミングで可能な範囲で色々と説明しようとは思ってたし。
「なあ、」
「うん」
やっぱり陰のある表情で、慎重に言葉を選ぶように口を開けては閉じてを繰り返すグアルタさんを辛抱強く待つ。
そうしているとグアルタさんがぐっと眉間に力を入れながら小さく息を吐き出し、口を開いた。
「……ルークと番になりたいのか?」
「なんのこと⁉」
一体なんの話⁉
いつそんな話になった⁉
というか私まだ肉体年齢5歳だし!
さすがにつ、番とか、そんな話はあまりに早すぎるでしょう⁉
想像していた内容とあまりにもかけ離れていて頭が追い付かず、混乱する。
「……ずっとルークと一緒にいたいって言ってただろ?」
「え?そんなこと言ったっけ?」
「ルークが子供欲しいって言った後にそう言ってた」
言ったような、言ってないような?
「いや、ルークさんにはいつもお世話になってるし、近所のお兄さんみたいな感じにこれからも仲良くして欲しいなって意味で言ったんだと思うよ?」
「だが、一緒にいたいって……」
「え、ルークさんに限らずグアルタさんとだってずっと一緒にいたいと思ってるよ?」
「……俺とも?」
「うん。父さんと母さんともずっと一緒にいたいし」
「……?」
何故かグアルタさんが首を傾げている。
その様子に私もグアルタさんの頬に手を当てたまま同じ方向に首を傾げる。
これはもしかしたら私がまた何かやらかしたかも……?
「ごめん、とりあえずお腹空いて倒れそうだからご飯買って続きはお店に戻ってからでも良いかな?」
疑問符は浮かんでいるようだが、先ほどまでの暗い表情ではないので良しとする。
そして私のお腹が限界を迎えているので正直にグアルタさんに伝えて移動をお願いする。
「そういや昼飯食ってなかったか」
すっかり忘れていたらしいグアルタさんも思い出した途端にお腹が空いたらしい。
グアルタさんのお腹から盛大に音が鳴るのを聞いて二人で笑い合った。
「えっと、さっきの話に戻る前に色々説明しなきゃいけないことがあるんだけど」
今日はもうお店は開けないことに決めたグアルタさんと食堂で買ってきたご飯を食べ始め、ある程度お腹が落ち着いたところで話を切り出す。
「ああ、今日ルークになんかしてたことか?」
グアルタさんももりもりご飯を食べながら話を続ける。
「うん、それもだけど。
まず、グアルタさんも知っての通り私って山の中で父さんたちとグアルタさん以外とは接触しないで生活してたでしょ? だからたぶん、普通の生活をしていれば常識として知ってることも私は知らないことが多いんだと思うの」
「そうだよな。町に馴染出るからすっかり忘れてた」
もちろん、本当は前の世界での常識とこの世界での常識がごっちゃになっているからだ。
けれども山の中で育ったから、というのも完全な嘘ではない。
「それとグアルタさんも知っての通り、私はサルージアでもなければ、クマデートでもないでしょ? 母さんたちにも分からないくらいに珍しい種族ってことはきっと生態も色々違って、皆と考え方も違ってるんじゃないかと思う。
正直今もなんでグアルタさんがあんな反応してたのか理解できてないんだけど、一緒にいたい、ってどんな意味があるの?」
全部が嘘ではないけど、全部が本当でもない説明をする。
「あー……」
困ったように斜め上を見上げて唸るグアルタさん。
そんな姿にどんな深い意味があるのか、と怖くなる。
「詳しくはセインがもっと大きくなってから説明するが、ずっと一緒にいるってのはお前の両親みたいに生活するってことだ」
「え? 父さんと母さんは夫婦だから一緒に生活するのは当たり前だよね? 」
「そうだよな、あの二人しか知らないとそうなるよな……」
ご飯を食べる手を完全に止めて頭を抱えてしまったグアルタさんを横目に私は自分の食事を再開する。
「お前の両親はすっごく仲が良いんだ。あんなに仲が良い番は滅多にいない。そんで、ずっと一緒にいたいって相手に伝えるのはあんな風にお互いだけを見て過ごしたい、って伝えることで……。あー!これ以上は説明できん!」
分かったような、分からないような?
「夫婦として一緒に過ごしたいって相手に伝える時の言葉ってこと? なんか大げさだね」
ようするにプロポーズの言葉として使われるのだろう。
一緒にいたいと伝えるだけでそんなに大事になるとは。
「とりあえずあんまり気軽に使わない方が良いってことだよね?」
「ああ、そうしてくれると助かる……」
疲れたように机に顎をつけ私を上目遣いで見てくるグアルタさん。
可愛い。
「そうだ、ルークさんの怪我を治したことについてなんだけど」
「ああ」
「私、魔力を持ってるでしょ? 一応その応用でやったことなんだけど、人から恨まれるのも嫌だから魔力を持ってることも含めて内緒にしてもらって良い? 」
「もちろん」
私が本題だと思っていた話の内容はさらっと終わってしまった。
獣人の生態は人間のそれとは異なるんだよ、けど詳しくは主人公がもっと大人になってからね、という内容でした。
いつも読んでいただきありがとうございます。
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