表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/36

セインの今後


 詳しくは教えてもらえなかったが、魔石をプレゼントすることは何か意味があることらしい。

 詳しく尋ねてもいずれ分かることだから、と教えてもらえなかった。

 グアルタさんの様子を見ている限り別に特別な意図があるようには感じられないが。



 まあ、そんなことはさておき。


「冒険者っていつからできるようになる?」


 私の目下の目標は外の世界へ繰り出すことだ。


「まずは外の世界に慣れることからだけどな」


 苦笑いのグアルタさんに言われる。


 超絶箱入りな私は家の周りという狭い世界しか知らない。

 まずはグアルタさんが住んでいる町に繰り出すところからのスタートだろう。

 

「だいたいの子どもは10歳になると仕事を持つようになる。能力を授かった5歳から10歳の間、なりたい職業を探していろんな人の手伝いをするんだ。俺の場合はその間に色んな物を壊しまくったせいで就ける職業がなくなっちまったが。それで仕方なく冒険者やってたってわけだ」

「私の場合は魔力持ちであることを買われて、初めは神殿でお手伝いをしていたの。そこで手伝いをしている間に色々なことを学ばせてもらって、研究って楽しそう!って思って研究者になることにしたの」

「俺も似たような感じだ」


 子供たちの独立が以前の感覚から言うとかなり早い……。

 5~10歳なんてまだまだ子供ではないか。

 その頃に将来のビジョンが明確に見えている子供がどれだけいるのだろう?

 

「じゃあ、私は10歳に向けて冒険者の手伝いをすれば良いの?」

「いや、10歳にならないとギルドでの冒険者登録もできないし、当然依頼の手伝いなんかもできないことになってる。言っただろ? 冒険者なんてなりたくてなる職業じゃないんだ。どの仕事も上手くできない場合の、最終手段なんだよ」

「そっかあ。じゃあグアルタさんのお手伝いしても良い?」


 知り合いのいない私にはお手伝いを申し出るところがグアルタさんしかないのだ。

 当然の選択としてグアルタさんに尋ねる。


「……お、おう」

「ん?」


 何故かグアルタさんが気まずそうに視線を私からそらした。

 なんで?


「セイン、グアルタの店からうちまでは距離があるから手伝うにしても通いじゃできない。普通は村や町に住んでいるからこんなんことはないんだが、すまない」


 辺鄙なとことに住んでいる我が家ならではの悩みだ。


「そんなに町って遠いの? たぶんすごく早く走れば大丈夫じゃないかな、って思うんだけど……」

「普通の大人が町からここまで来るのに、最短距離で進んで丸1日はかかる。いくら足が速いとしても仕事をしながら往復をするのは無理だ」


 父さんが申し訳なさそうにしている。

 町に行くきっかけが得られないのはよろしくない、どう両親を説得しようか頭の中で悩んでいるとグアルタさんが、


「あー。セインなら俺と同じくらいでいけると思うぞ」


 と言ってくれた。


「……お前と同じくらいだと?」

「ああ。昼に一緒に走っててまだ余裕ある感じだったしな。セイン、お前あれよりもっと早く走れるだろ?」


 チート過ぎないようにと魔力少な目にしてスピードを抑えていたのだが、グアルタさんにはバレていたようだ。


「うん、倍の速さでもたぶん1日は走り続けられると思う」


 正直に申告する。


 さすがにそこまでとは思っていなかったのか、グアルタさんが僅かに目を見開く。

 そして意地悪そうな笑顔。


「随分俺のために手を抜いてくれたみたいだな?」


 おっふ。

 グアルタさんのための手加減ではなく、チートがばれないようにやったことなのだがお気に召さなかったようだ。


「いや、私もあれだけの距離を走るの初めてだったから、走り終わってあーまだまだいけるなって分かったのであって、別に手を抜いていたとかそういうわけではなくて、なのでグアルタさんに合わせるためにとかそんなんじゃなくて、」

「悪い悪い。冗談だよ」


 焦りながら言い訳をしているとくつくつと笑うグアルタさんに止められた。

 どうやらからかわれたようだ。

 

「グアルタ、それならセインはどれくらいで町を往復できそうだ?」

「往復に1節もありゃ十分だろう」

「……そんなにか」

「ああ。だからお前らが許可すんなら俺としてはセインが手伝いに来てもらっても構わねぇけど。なんなら送り迎えもするし」

「他にもお手伝いの人いるんでしょ? 私だけそんな特別扱いしてもらうのは悪いよ」

「俺のとこには手伝いがいないんだよ。だから気にすんな」


 こんなに面倒見が良いグアルタさんなのにお手伝いが誰もいないなんて意外だ。


「父さん、母さん、グアルタさんのお店に手伝いに行っても良い?」


 これはもう行くしかないだろう。

 すごく行きたい。


 期待を込めて両親の顔を見つめる。

 きっと私の目からはキラキラしたものが出ているはずだ。


 両親は小さく息を吐き出すと仕方ない、という風に小さく笑う。

 

「まあ、グアルタのところなら大丈夫だろう」

「ほんと⁉ だって、グアルタさん! これからよろしくね!」


 嬉しくてその場で両手を上に向かって万歳する。

 

 いつから行けるだろうか?

 私としては明日からでもお願いしたい。


「まずはお前の見た目をどうにかする魔法陣が完成してからだがな」

 



 おっふ。

 そうだったよ、完全に忘れてました。



というわけでグアルタの店で手伝いをしながら世の中のことを少しずつ知っていきましょう。

ということが決まりました。


次回か次々回には主人公の世界が広がる予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ