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お昼ご飯

獣医雑学をちょこっと。


 しばらくグアルタさんの胸の中で休憩を堪能した後は予定通りリットの収穫とフリッタを狩って家に帰った。


「ただいまー。リットとフリッタと、森で見つけたマシュムも持って帰ってきたよー」

「お帰りセイン、グアルタ。食材貰っちゃうわね」


 キッチンには母さんがいたので、採りたてほやほやの食材を渡していったん自室に向かう。


 魔力のおかげで体力の消耗はそれほどでもないが汗はすごく出ていたので洋服がびちゃびちゃなのだ。

 ご飯の前に着替えてしまいたい。


 キッチンから貰った水で布を濡らし、簡単に体を拭っていく。

 

 この世界ではお風呂は一般的ではない。

 両親とグアルタさんのことしか知らないけど、家に湯舟なんてないし、今私がしているように体を拭いているのも見たことがない。

 

 さっきのグアルタさんのように、体温が上昇した時には川で冷やすことはあるが、あれは体を洗うことが目的ではないのでお風呂とは言えないだろう。

 

 

 体を拭き終えてさっぱりした私は新しい洋服に着替えてリビングへと戻る。

 キッチンで食事を作っている母さんを見て、ふと食事に関して試したいことがあったのを思い出した。


「母さん、スープ私が作っても良い?」

「良いけど大丈夫? 怪我はしないでね?」

「うん、気をつけるー」


 魔法陣が組み込まれている鍋に水を張り、温め始める。

 お湯が沸くのを待つ間にフリッタの皮剥ぎを進める母さんの横で食材を切り始める。

 もちろん調理器具が重いのでしっかりと魔力で強化を行っている。


 まずは家庭菜園で採ってきた野菜類。

 人参風の食材カロタと玉ねぎ風の食材チボラを火が通りやすいように小さく切っていく。

 森で採ってきた特大キノコのマシュムも切る。

 母さんが皮剥ぎを終えたフリッタのうち一番脂が乗っていそうな部位をもらい、野菜より少し大きめの一口大に切る。

 切り終わった食材を温まった鍋にすべて投下。

 食材に火が通るのを待つ間、ポプを煮込み始める。


 さて、このポプをどうしようかな……。

 

 この世界なのか、我が家だけなのかはまだ不明だが、現在手元に調味料になるものが存在しない。

 日本人のソウル調味料、味噌や醤油はもちろん、塩コショウすらないのだ。


 それでもポプだけの味気ない状態で食べるよりはリゾット風にしてスープと一緒に食べた方がまだ美味しいだろうと予想している。

 とは言え、初の試みで美味しく出来上がるのかも全くの不明なのでとりあえず私の分だけリゾット風にして、他のみんなの分はいつも通りバラバラで出そう。


 そうと決まればスープの食材に火が通るの待ちである。

 鍋の中で踊っている食材を眺めていた時、すごく今更なのだが、大事な質問をグアルタさんにしなければならないことに気づいた。


「グアルタさんってチボラ食べて具合が悪くなったことない?」

「あ?」


 鍋から目を離し、振り返ってテーブルに座るグアルタさんに質問する。

 肘をつきながらぼーっとしていたようで些か反応が鈍い。


「大丈夫? 走ったの疲れた?」

「いや、それは大丈夫だ。気にすんな。それで? チボラが何だって?」

「今までチボラを食べた後に具合悪くなったことないかな? って思ったんだけど」

「別に何ともないが?」

「いっぱい食べた後とかも?」

「あ? チボラなんてそんな大量に食うもんでもないだろ。 とりあえず腹壊したりって話ならそんなことはなったことないぞ」

「なら、良かった」


 チボラが玉ねぎ風の食材なので少し警戒してしまったが問題ないようだ。

 もしくは中毒量に達してない可能性もあるが……。


 基本的に玉ねぎを、というかニラ、ニンニク、ラッキョウなどのネギ類に分類される食べ物を問題なく消化できるのは一部の動物だけなのだ。

 玉ねぎに含まれる有機チオ硫酸化合物と呼ばれる物質が原因となり、最終的に酸素を運ぶための赤血球を壊してしまう。

 人間や猿、その他わずかな種類の動物以外が玉ねぎをたくさん食べると貧血や血尿といった症状が出るのだ。


 とは言え、中毒量は体重1kg当たり約20g。

 チボラ1個が200gだとするとグアルタさん一人で10個くらい食べないといけないと思われる。

 そこまでの量を一人で一度に食べることはたぶん一生ないだろう……。

 そもそもチボラに有機チオ硫酸化合物が含まれているのかも不明だし。


 いつか教授と一緒にこれもちゃんと研究しよう、と決めて一旦このことは脳内で棚に上げておく。



 スープも問題なく火が通ったようなのでスープとポプをそれぞれの器に取り分ける。

 私の分の食事は小さい鍋にスープとポプを一緒に入れて少し火を通してから器に入れる。


 母さんが外で焼いたフリッタもちょうど良い感じに焼きあがっていそうだ。


「お昼ご飯できたよー」


 地下室に姿を隠した父さんに声をかけるとテーブルに皆の分の食器を並べていく。

 途中でグアルタさんが運ぶのを手伝ってくれたのでバトンタッチし、全員分のお茶も準備する。

 スープに使った部分以外を適当にぶつ切りにして焼いたフリッタを乗せたお皿を母さんがテーブルの中央に置いたらセッティング完了だ。

 リビングに集合して皆でテーブルにつく。

 向かいに父さんと母さんが並んで座り、私はグアルタさんの隣に着席した。


「いただきまーす」

「……? なんだそれ?」

「食事の前の挨拶?」

「いつからそんなことやるようになったんだ?」


 前世での記憶のことなどについて、グアルタさんには話していない。

 久しぶりに会う私がいろいろ変わったことをしているのが目につくらしいグアルタさんに突っ込まれる。


 そういえば昨日は記憶を取り戻してから初めてのグアルタさんだったからぼろを出さないように気をつけてたけどすっかり忘れてた。

 とりあえず、


「神様から教わったんだ」


 ……ってことにしておこう。

 


「その食事は?」

「ポプだけで食べるの苦手だからアレンジしてみたの。って言ってもスープに入れただけだけど」

「ふーん。旨いのか?」

「そのまま食べるよりは美味しいよ。 食べる?」

「あ」


 食事についてももれなく突っ込まれた。

 事情を説明し、少し味見してみるか尋ねると口を開けたまま待ってる熊が……‼


 え、なにこれ。

 熊がご飯くれって待ってるの可愛い。

 え。


 脳内で若干パニックを起こしながらリゾット風の物をグアルタさんが待ち構えている口の中に少量スプーンを使って入れる。


「確かに普通にポプを食ってるより旨いな」


 口の中の物を飲み込んだグアルタさんから評価を貰う。

 どうやら、私の味覚で美味しいものはちゃんとこの世界の住人にも美味しく感じるらしい。

 

「良かった。おかわりするなら作るよ? 父さんたちも試してみる?」


 父さんたちは私とグアルタさんのやり取りに苦笑いしながら頷いた。


 なんの苦笑い?

 と思ったが、先ほどのやり取りを傍から見たら苦笑いするしかないだろう。


  


 いくら見た目が幼女と熊の微笑ましいやりとりでも自分の友人と自分の娘がそんなやり取りしてたら苦笑いもしますよね!

 気づかなくてごめんね‼




グアルタ……!

どうしたのグアルタ…!

可愛いよ‼



グアルタさん好きになってくれた方がいらっしゃいましたら下の星をぽちぽちしてくれるとめっちゃ喜びます!

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