表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/36

身体強化


 身体強化はすぐに出来てしまった。


「そなたは本当に……」


 なぜか呆れたようにこたらを見てくるアルク様。

 心外である。

 ここは優秀だ、と誉めるべきところではないだろうか。


 筋細胞一個一個に魔力をコーティングするようにイメージしてみたら驚くほどあっさり出来てしまった。

 

 身体強化した状態で走ればとんでもないスピードが出るし、ジャンプすればとんでもない高さになるし、なのに全然体に疲労が溜まらない。

 強化している間はずっと魔力が消費され続けるため、魔力量チートじゃないとできない力業だが、なかなか使い勝手の良い能力だ。



「ついでにもう一個やってみたいんですけど」

「なんだ?」

「毛が生えていないことで随分と心配されたんです。なので毛を一時的に生やすか、実体がなくてもそう見えるようにしたいんです」

「……それは難しい。最初に説明したように魔力を身体の外に放出するためには能力としての制限が必要だ。身体強化の応用で毛の成長速度を体内から速めることは可能だが、その身体を見るに毛が長くなる前に抜けてしまうのだろう?」

「そうですね……。とりあえず、ダメもとで試してみます。もしかしたら上手くいくかもしれないし」


 アルク様に宣言して毛を生やす毛母(もうぼ)細胞に魔力を集めてみる。

 が、結局目論見は失敗に終わった。

 アルク様が言っていたように毛が長くなる前に抜けてしまうのだ。


「……ダメそうです」

「だろうな」


 これは困った。

 私のつるつるボディはこの国では目立つのだ。

 魔力でなんとかできると思っていたのだが、これは計画変更が必要だ。




「我からそなたに伝えるべきことはもうない。ヒューマニアの娘セイン。この箱庭をそなたに授けた能力でより良くしてくれることを願う」


 アルク様に助言をもらいながらより効率の良い身体強化、能力発動の練習をしていると突然そう言われた。

 そして挨拶をする間もなく突然ぐわっと背中から引っ張られる感覚に思わず目を瞑った。




 引っ張られる感覚がなくなったので目を開けてみるとベッドの上にいた。


 随分と長いことアルク様と一緒に過ごした気がするが、どうやら時間の流れに差があるみたいだ。

 窓の外を確認すると外はまだうっすら明るくなり始めたところ。


 もうひと眠りしよう。


 そう決めてベッドにまた横たわった私はすぐに意識を手放した。






「おはよう」


 いつも通りの起床時間になったので身支度をしてリビングへと入ると、すでに両親とグアルタさんが揃っていた。


「昨日寝てるときに神様に呼ばれて能力授かってきちゃった」


 朝ごはんを食べるためにテーブルに歩み寄りながら報告する。

 驚いたように父さんが私に視線を向ける。


「……岩のところに行かなくてもよかったのか?」

「うん。寝てる間に5歳になったからーって能力貰ってきた」

「……そうか」

「神様、父さんたちのこと覚えてたよ。アーノルドたちは魔力量が多かったーって」

「神様と会話をしてきたの?」


 キッチンから私の分の朝ごはんを持ってきてくれた母さんに尋ねられる。


「え? うん。能力の説明とか使い方とか教えてもらったけど……? 父さんたちも教えてもらったって言ってたよね?」

「私たちは会話をしたわけではなく、神様からの意思を一方的に受け取っただけよ」

「ん? じゃあ、草原みたいなところに呼ばれたわけじゃないってこと?」

「ええ。神殿で能力授与を受けて、魔力が溢れそうになった時に頭の中で神様の声が聞こえたから、その声の言うとおりにしたら上手く抑えられたって感じね」

「父さんも?」

「ああ。ソフィアと同じだ」



「ちょっと待ってくれ‼」


 それまで静かに眼をまん丸にしていたグアルタさんが声を上げる。

 大きな声にすこしびっくりしてしまった。


「グアルタさん? どうしたの?」

「お前らが魔力持ちなのもセインが魔力を授かることになるのも聞いていたからそこは良い。けど、神様がどうのってのはどいうことだ? 実際に神様に会ったのか? アーノルドたちも神様の声を聞いたことがあるのか?」

「……これは種族間の隔たりかもしれんな」


 父さんは眉を寄せてそう言うと、サルージアでも稀ではあるが、他の種族と比べると魔力を授かる確率が高いこと、魔力を上手く抑えられないと命に関わるので神様から助言をもらう機会が多いことを説明していく。

 

「なるほど、神殿に仕えるやつにサルージアが多いわけだ」


 グアルタさん曰く、クマデートの能力授与は順番に神像を前に跪いて祈りを捧げれば一人10秒程度で終わる儀式らしい。

 神様の声を聞いた人の話は初めて聞いたそうだ。

 サルージアは信心深い人が多いのを以前から不思議に思っていたらしいが、父さんたちの話を聞いて納得がいったようだ。


「皆神様、神様って普通に言ってたからグアルタさんや他の人も信心深いんだと思ってたけど違うの?」

「今までになかった能力を突然授かるんだから神様がいることは皆分かってはいるんだが、何て言えば良いのか……」

「本当に個として神様が存在してるのが違和感ってこと?」

「そいうことになるんだろうか……」


 宇宙人って本当にいたんだ! っていう感じだろうか?

 きっといるんだろうっていうのは分かってるけど、実物を見たことがないから、信じてるけど疑ってるって気持ちなのかなと想像する。


「それで、能力はどうだったんだ? アーノルドが言っていたように魔力を貰ったのか?」

「うん。ちゃんと魔力貰ってきたよ。あと、魔力を使って体力と筋力の強化もできるようになったからグアルタさんが心配してた問題も解決した!」

「魔力ってのはそんなに便利なものなのか?」

「いや、それはセインが特別だからだ」


 グアルタさんにどこまで話して良いのか悩むが、父さん、母さんが全てを話さないのには理由があるのだろうと、それに則る。


「これで冒険者になるのに反対する理由もなくなったよね?」

「いや、まずは本当に体力と筋力が補えているのかを確認させてもらう」





 というわけで、境界線までの遠出の用事がなくなった今日、グアルタさんによる試験が実施されることになった。








神様とサルージアは密接な関係。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ