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神様

いつもより長くなっております。


 ふと目が覚めた。

 起きた時に見えるはずなのは自分の部屋の天井なのに今見えているのは緩やかに流れていく雲と透き通った青い空だ。


「……どこ?」

 

 大の字になっていた体を起き上がらせる。

 見渡す限りの大草原。

 草原の植物を穏やかな風が撫でていく。

 そのたびにさわさわと鳴る、草が擦れる音が心地よい。


 私が両親と住んでいる山ではなさそうだ。

 ここまで木の生えていない草原は私たちが住む周りにはなかったはずだ。


 突然知らない場所に、知らない間に移動していたならば普通は不安になるものだと思うのだが、不思議と今の私にそのような感情は芽生えていない。

 穏やかなこの環境が心地よい、という感想しか出てこない。


「____だな」


 全方向見渡した時に草と空しか見えなかったはずなのに突然声が聞こえる。

 しかし上手く聞き取れない。

 どこから誰が声をかけてきているのかも判断ができない。

 それでもやはり私の心は凪いでいる。


「どなたですか?どこにいるんですか?」

「そなたに能力を授けるもの」

「あぁ、神様」


 神様ほんとにいたんだなぁ


「で、どちらにいらっしゃるんでしょうか?」


 声は聞こえるのにもかかわらず、やはり姿は見えない。

 声はだんだんとはっきりと聞こえるようになってきている。

 

「この空間すべてに」


 んんん?


 難解な回答だ。


 しかし、なぜ声の発生源が確認できないのかが分かった。

 通常であれば空気が振動することで音が聞こえるはずだ。

 その発生源に声の主がいるはずなのに、どこから声がしているのか皆目見当がつかない。

 すなわち発生源として、ピンポイントに声の主がどこかに存在しているわけではない。

 

 もしかして、「あなたに脳に直接語り掛けてます」的なやつ?


「姿が見えないと話しにくいのですが」


 どこに向かって話をすれば良いのかわからない。

 話すのであれば相手の姿を認識したいというのはごく普通の感覚だと思う。


「ふむ」


 という声が聞こえると空間が眩しくなった。

 あまりの眩しさに目をつむる。


 次に目を開けた時には目の前に茶髪の西洋風男性が立っていた。

 特筆すべきは彼が着ている洋服だろう。

 中世のヨーロッパ貴族が着ていたような服装だ。

 随分時代遅れな眼鏡をかけて、髪はボサボサだ。

 

「神様って人間みたいな姿なんですね」


 思ったことをそのまま口に出す。


「いや、これは以前に送り出したヒューマニアの姿だ」

「サルージアの歴史書に載っていた人ですか?」

「しらぬ」


 会話終了。

 まぁ、私たちの書物のことまで把握していないのも当然か、と思い至る。


「えっと、今から能力を頂けるんでしょうか?」

「さよう」

「普通は神殿とかで授かるって聞いたんですけど家のベッドでも大丈夫なんですね」

「5歳になった瞬間に授かるものだ。場所は関係ない」


 能力授与は神殿、神像関係なくできるものらしい。

 そうなると能力授与の際に神殿や神像の下に人を集めるのは神殿の権威のための行為なのかな?


藤原(ふじわら)美鈴(みすず)だな」

 神殿についてあれこれ考えていると神様から最初の質問が繰り返される。


(あぁ、そんな名前だったな)


 前世での名前を今まで完全に忘れていた。

 何回か思い出そうと過去の記憶をたどったこともあったが思い出せなかったのだ。

 前の名前がわからないことによる弊害はなかったので特段気にしていなかった。

 今の私はセインなのだ。


「今はセインという名を両親からつけてもらいました」

「そうか。では、セイン。そなたはヒューマニアである」

「えぇ、存じております」

「・・・・」

「・・・・?」


 無言が続く。


「・・えっと?」

「なぜ知っている!?」


 今まで無表情無感情だった神様の顔に初めて表情が見えた。

 目を眉中央に寄せながら目を見開く、という器用な表情筋の使いかたをして驚きを表現している。


「両親からそのように言われました。私は神から遣わされたヒューマニアだから能力授与の際に多くの魔力をもらうことになるだろう、と」

「どこまで知っておるのだ!?」

「えっと、」


 なんかキャラ変してるなーと思いながら、私は両親から教えられたことをそのまま神様に伝えていく。

 

 ① 稀にヒューマニアと呼ばれる種族が突然現れる

 ② 総じてヒューマニアは魔力が高い

 ③ ヒューマニアはその魔力を用いて、現れる度に何かしらの大きな社会的影響を残す

 ③ 現れた時と同様、姿を消すときも突然である


「おおよそ合っておる」


 神妙な顔でうんうんと頷きながら神様がそう言った。


「おおよそとは?」

「最後の突然姿を消すというものだ。今まで送ったヒューマニア3人は全て我の箱庭で命を落としておる」


 神様の言う『箱庭』とは『世界』のことであろう。

 この世界にやってきたヒューマニアは3人。


(歴史書に書いてあった突然姿を消した、という文脈から勝手に元の世界に帰ったと仮定していたけど、神様が言うならこの仮定は違うことになる。けど両親から聞く限り王宮の書物にもヒューマニアは突然姿を消す、と記載されていたらしい。姿を消したことにしたのはヒューマニア自身なのかあるいは別の誰かなのか・・)


「なぜお前の両親はそこまでヒューマニアについて知識があるのだ?」

「王宮にヒューマニアについて書かれた書物が残っており、それを読んだと言っていました」

「・・書物とはなんだ」

「え?」

「読む、とはどういうことだ」


 



 んー---?


 これはなにか認識にずれが生じているぞ、と把握した瞬間だった。





神様登場!


次回更新は二日後です。



ブクマ、いいね、評価などなどいただけますと泣いて喜びます。

よろしくお願いします。

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