第二話 シェア
「じゃ、次、俺がいいっすか?」
「どうぞ」
「じゃあ……これは聞いた話なんですけど」
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後輩の部屋に泊まりに行って、夜中までゲームして、そろそろ寝ようって布団を敷こうとしたんですよ。
押し入れを開けたら、荷物の奥の隙間から、何か、色あせた布がちょっとだけ見えてて。
湿気っぽい感じで、ちょっとぞわっとしたんすよね。
「これ何?」って聞いたら、その後輩がさらっと言ったんです。
「あ、それ、人のなんで」
いや、“人の”って何?って聞いたら、「自分のじゃないっす」って。
「最初からあって、気持ち悪いから見てない」って言うんです。
怖っ、と思ったけど、本人が普通にしてるんで、それ以上は突っ込まなかったんですよ。
で、翌朝、押し入れのふすまが少し開いてて。
中は暗くてよく見えなかったけど、なんとなく空気が違ってたんですよね。
そのとき後輩がぽつっと言ったんです。
「共有の押し入れなんすよ」
「何と共有してんの?」って笑いそうになったけど、
その時だけは、なんか笑えなかったんですよね。
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「で、今話してて思ったんですけど……これ、俺の実体験でしたわ」
「……自分の体験だったんだね」
「“共有の押し入れ”って、響きがじわじわ来ますね……」
「ふふ、今どきシェアって言ってもさ……相手が見えないのはダメよね」
「ほんとそれ。今晩押し入れ開けるの、ちょっとだけ嫌だなって思っちゃいました」
「あの~、そういった話なら、僕にも……」