表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これは聞いた話なんだけど…  作者: 髙槻 澪
第二部 職場の五人組
7/12

第一話 呼んだ?

隠れ家風の個室レストラン。

木目の壁に囲まれた落ち着いた空間に、チームの5人が集まっていた。


新人の歓迎会が始まってしばらく、料理と会話がひと段落したころ。

マネージャーが笑いながらグラスを置く。


「緊張、少しはほぐれてきたかな?」


「はい……皆さん話しやすくて、楽しいです」


「慣れると居心地のいいチームですよ。ちょっとクセは強めですけどね」


「誰のこと言ってんすか? 顔見ながら言うのやめてもらっていいっすか」


「ふふ、でもほんと。職種も年齢もバラバラなのに、うまくまとまってますよね」


「そういえば……こうして全員そろって飲むの、いつぶりでしたっけ?」


「年明けの送別会ぶりかな?」


「……あのとき、けっこう盛り上がりましたよね」


「ああ、あれね……」


「せっかくだし、またやってみません?」


「やってみるって、何をですか?」


「ふふ。じゃあ、わたしからいこうかしら。これは聞いた話なんだけど」


 


グラスの氷が、ひとつだけ音を立てて揺れた。


――――――――――――――――――――


わたし、昔ちょっと、悪い子たちとつるんでた時期があってね。

その頃の仲間のひとりが話してたんだけど、夜の学校に忍び込んだらしいの。


何人かでグラウンドにいたら、裏門のほうから「カツ、カツ」ってヒールの音が聞こえた。


最初は「先生か?」って隠れたけど」隠れたけど、姿は見えなかった。

ひとりがふざけて「先生〜、見回りですか〜?」って叫んだ瞬間、音が止まった。


次の瞬間、窓ガラスがガンッと叩かれた。

暗い窓に、白い手が一瞬だけ映ったんだって。


翌日、そのメンバーのひとりが事故で亡くなった。

単独事故。けど、現場にはもうひと組、誰の足跡かわからないものが残ってた。


ひとりで乗ってたのに、後ろにも足跡があった。

誰も言わなかったけど、みんな思ってたらしい。


あの時、呼んじゃったんだって。


だからわたし、今でも後ろから足音がしても、振り返らないの。

誰が来るかなんて、わかったもんじゃないからね。


――――――――――――――――――――


「……それ、マジのやつじゃないっすか……!」


「呼んだら“迎えが来る”系って、じわじわ来るよね……」


「ふふ、わたし、今でも夜道で足音聞こえるとき、絶対立ち止まらないのよ」


「いや……こわ。こっちが怖がってんのに、あんたの声が一番落ち着いてんの、逆に怖いから……!」



テーブルの上に流れる沈黙に、誰もが一瞬、背中を気にする。



「……さて、次は誰かしら?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ