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これは聞いた話なんだけど…  作者: 髙槻 澪
第一部 仲良し五人組
5/12

第五話 あちらとこちら

「わたし、話してみてもいい?」


「ラストを飾る末っ子ちゃん、お願いします」


「ありがとう。これはね、聞いた話なんだけど」


――――――――――――――――――――

ある人が眼科で、「コンタクトがずれる感じがする」と診てもらったんだって。


でも検査では異常なし。異物もない。

医者は「気のせいでしょう」で終わらせた。

だけど、本人にはずっと、“何かが視界にかぶさってる”感覚があった。


ある日、自宅で鏡の前に立って、自分で外そうとしたら、コンタクトの奥にもう一枚、何かがあった。


レンズの下にぴたっと張りついてた、薄い膜みたいなもの。

剥がすと、手に持っても見えないけど、冷たくて、ぬるっとしてて、形があった。


その日から、右目の視界が少し変わった。


視界の端で、人の背中の向こう、曲がり角の先、誰もいない場所に、何かが動いたように見える瞬間が増えた。


でも見たと思ったその一瞬、向こうもこっちを見ていた。


視界が合ったとき、ただ見えたんじゃない。

向こうからも見られていたって、はっきり分かったんだって。


だからその人、今も左目はそのままにしてる。

もう一枚ある気がするけど、外したら戻れない気がするって。


それが、あちらとこちらを分けてたものだったなら、今、自分がどっちにいるのか、分からなくなるかもしれないから。

――――――――――――――――――――


「……やだ、それめちゃくちゃ怖い……!」


「膜って、世界を分けてた“壁”だったんじゃん……」


「見えないから安全だったのかもね」


「うん。“あちら”から見られてなかっただけ、ってことかも」


「ふふ……わたしは、見えないままでいいかな」


 


5人目の話が終わる頃には、陽が落ち始めていて、少し肌寒くなっていた。

そろそろ解散の時刻。


「それにしても、久しぶりに集まれて楽しかったよね」


「わかる。またこうして集まりたいな~」


「うん。次は怖くない話は無しでいいかも」


「ほんとに?」


「ふふ、たぶん」

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