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これは聞いた話なんだけど…  作者: 髙槻 澪
第一部 仲良し五人組
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第四話 返却未定

「ねぇ、そろそろ私にも語らせてよ~」


「珍しいね、静かに聞いてたのに」


「いや、マジであんたらの話、夜に引きずるのよ。だからこっちも吐き出さないと」


「それで自分も話すんだ……」


「うん。これは聞いた話なんだけどさ」


――――――――――――――――――――

駅のロッカーってあるじゃん。

あれでね、“絶対に空いてるロッカー”がある駅があるんだって。


不便な場所とかじゃなくて、けっこう混む駅。

でも一番端のロッカーだけ、いつも空いてるの。


ラッキーだと思って何回か使った人がいたらしいんだけど、ある日その人、ロッカーに荷物を預けてから変な感覚があったらしいの。


荷物はそのまま。でも、自分の中が軽くなった感じ。

空っぽというか、何かが抜けたみたいな。


で、翌朝。

財布を開けたら、中に見覚えのない白い紙が一枚、挟まってた。


そこにはこう書かれてた。


「借用証」

「対象:○○(自分の名前)」

「内容:非公開」

「返却予定:未定」

「※処理済」


手書きじゃなくて、きれいなフォント。

どこかの正式な書類みたいなレイアウトだったらしい。


もちろん、誰にも何も貸した覚えはない。

でも、その日からたまに、“自分が自分じゃない”って瞬間が増えたんだって。


気づいたら立ち止まってたり、話してる途中で意識がぼやけたりするらしい。

――――――――――――――――――――


「……ちょっと待って、それって何かを貸したってこと?」


「本人もわかんないって。“意識はあるけど、何かが足りない気がする”って」


「やだやだやだ……!」


「今も普通に働いてるけど、“たまに誰が喋ってるかわかんなくなる”って言ってた」


「それ絶対、返ってきてないやつじゃん」


「うん。私はあれ以来、ロッカー使ってない」


「……どこの駅?」


「それは、言わない」

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