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これは聞いた話なんだけど…  作者: 髙槻 澪
第二部 職場の五人組
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第四話 内側のモノ

「……結局、どこの研修施設なのか教えてくれないんですね」


「あ……すみません、職員の方に、あまり広めないでほしいって言われてて……。時々、その部屋のことを聞いてくる人がいるらしくて……」


「……まあいいです。次は、私が話をしましょう」


「……これは聞いた話なんだけど」


――――――――――――――――――――

ある大学の研究室で、旧校舎の整理をしていた学生がいたそうです。


古い書棚の奥から、南京錠のついた木箱を見つけたらしくて。

鍵がなかったので、そのまま開けずに研究室へ持ち帰り、棚の上に置いたそうです。


翌朝、研究室のドアが施錠されていて、誰も開けた覚えがなかった。

鍵は保管庫にあるはずだったのに、その日に限って見当たらなかったそうです。


結局、管理人が鍵を壊して中に入ったら、昨日まで棚の上に置いていたはずの木箱が、部屋の中央に移動していた。


誰も出入りしていないはずなのに、明らかに場所が変わっていた。


中身を確認しようと、学生のひとりが木箱に手をかけた瞬間、たまたま居合わせた民俗学の教授が「ああ、それは……やめておきなさい」とだけ言ったそうです。


それ以上の説明はなく、大学の判断で封印され、倉庫に移されたとのことです。


その後も研究室では、夜になると施錠されたドアの内側から、「コン、コン」とノック音が聞こえることが続いたとか。


ある日、たまたま管理人が様子を見に来て、ドアの外から「どうかされましたか」と声をかけたそうですが、返事はなかったそうです。


今もその研究室では、夜間はドアを閉鎖管理対象として扱い、外側から封印シールを貼って誰も出入りしないようにしているそうです。

――――――――――――――――――――


「……箱、開けなかったのは正解ですね」


「ふふ、開けたらどうなったんでしょうね」


「でも、閉めても開けても出てくるってことじゃ……?」


「箱の中身が、今は研究室にいるってことですよね……」

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