478~オラフ王国物語・57「門番兵トールとヴィーゴ」
「トール。待たせしちまったな」
「あ?ああ」
「寝ていたから大丈夫ってわけだな」
「遅かったな」
「それがさ、、、あ、ちょっと仕事しようぜ」
「仕事?してるじゃないか。門番」
「こそこそ話してるとさ」
「俺みたいに寝てる方がよっぽどサボってるみたいじゃないか。ハハッ!」
「いいからいいから。城扉の両脇に立とうぜ」
「なんでもいいけどさ。いったいどうしたってんだい?」
トールはゆっくり立ち上がると、兵服のお尻に付いた芝土を掃った。
「で?」
「お前気づいていただろう?」
「ああ、ハッセかい? 顔を見りゃあわかるさ」
「で今、奴をオラフ王様の部屋に連れて行ったろ?」
「行ったろ? わかってるよ。俺がお前を行かせたんだから」
「そこにあのアデリーヌ・ヘルゲもいてさ」
「オラフ様もいたって話だろ。それがどうかしたのかい?」
「いいか。今から俺の言うこと。いちいち驚けよ」
「なんだよ。いちいちって」
「えっと、まずはあのハッセ。奴はイブレート様の筆頭参謀だったバルウ殿の弟だ」
「え?!」
「驚いただろ?!」
「それで浜小屋を放火した時も、逐一ベルゲン兵の行動を?」
「ああ、エスキモーの情報網は凄い。ただのオラフ当番、餌やりじゃなかった」
「なるほど」
「で、まだある。あの女だ」
「ガキが爵位をもらった」
「そう。あの女。ただの魔女かと思いきや」
「なに?」
「当ててみ?」
「わかるわけないだろう、、、」
「だな。実は、、、このマウリッツを襲ったラーシュ。あのラーシュの元夫人」
「え?!」
「いちいち驚いたかい? つまり公爵夫人」
「ほほう!そりゃあたまげたが、、、ほんとかい?」
「本当だ。事細かにベルゲンでの話をしたよ」
「まさかの話だな」
「まだある。これが一番の驚き」
扉の両脇に立っていたはずのトールとヴィーゴ。いつの間にか扉の中央で肩を寄せ合って話をしていた。
「それ以上のことがあるってのかい?」
「ああ、あった」
「聞かせろよ」
「いいか。耳の穴をカッポじって良く聞け」
「わかった。穿る」
「耳垢取れたかい?」
「ああ」
「残る一人」
「あ、ヤンというガキか?」
「ガキの方じゃないよ!」
「じゃ、王様しかいないじゃないか」
「そう。そのオラフ王だ」
「どうした?」
「お前の女房を魔女狩りしたタリエの」
「はっ?」
「タリエのガキだ。息子だよ」
「なにぃ~!」
「おい、声が大きいよ」
「声が大きいって?お前がいちいち驚けと言ったんだろうがッ」
「あ、そうなんだけどね、、、驚いただろ?あの3人」
「ああ、けどそれがどうしたって言うんだい?」
「奴らの怨みは全てタリエに向けられてた」
「え?オラフ王様も?息子なんだろ?」
「捨てられたのさ。だから巡り巡って、ここマウリッツにいるというわけさ」
「ほ~ぅ」
「つまり、俺たちも含めて皆、矛先はタリエ」
「俺も?」




