疲労困憊
ハイオークウォリアーは紫色の、豚の顔を魔物だった。
そして当然のようにでかい。
さっきの処刑人ほどではないが、身長は人間の2倍以上。
ガキン!
甲高い金属音。
ナックルの剣をハイオークウォリアーが斧で受け止めたのだ。
やはり2足歩行――人型の魔物は手強い。技術がある。
こうして人間の攻撃を受け止めてきたりするのだ。
しかし雷帝の剣は受けてはいけない。
ピシャアアアアァァン!!
雷がハイオークウォリアーを焼き焦がした。
「やあっ!」
ドシュッ!
エリナも、ハイオークウォリアーが斧で受ける暇すら与えず、ダメージを与えていた。
「グアアアアア」
しかしハイオークウォリアーたちは二体とも倒れない。
耐久力が高い。
「ふん!」
ドガッ!
ゴーガンの戦槌が、痺れて動けなくなったナックルのハイオークウォリアーを打ち据えた。
ドサッ。
これで残り一体。
俺も炎槍でエリナが相対していた一体を倒した。
「これが10階層のボスモンスター。たしかにタフな相手ですね」
雑魚モンスターとしてならば、という意味だが。
「やはり君たちはEランクを遥かに超えているな。俺たちのランクに到達するのもすぐだろう」
ナックルはそう言って笑った。
「みんな、おかわりが来たわよ」
ライザに言われるまでもなく全員の視線は部屋の奥に注がれている。
奥の部屋からぞろぞろと、追加のハイオークウォリアーが集まってきていた。
一撃で倒せない魔物との連戦。
みんなダメージこそ負わないものの、次第に体力を消耗していった。
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激闘に次ぐ激闘。
どれだけの時間、戦い続けただろうか。
全員必死で戦って、ようやくたどり着いた40階層への階段の前。
ナックルですら顔に疲労の色を浮かべていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
エリナはあからさまに荒い息を吐くようになった。
ナックルたちはまだ余力がありそうだが、エリナはそろそろ限界だ。
というかむしろ今までAランク冒険者と肩を並べて前衛を張っていたことが異常なのだ。
16歳のEランク冒険者が、いったいどうすればここまでの実力を身に付けられるのだろう。
階層が深くなればなるほど部屋数は多くなり、進むのに時間がかかる。
その上敵の強さも上がっていくとなれば、その難易度は二次関数グラフように上がっていくことになる。
1階層分の重みが、低階層帯とはまったく次元が違うのだ。
1~30階層分の苦労が、30階層以降の1階層に相当するイメージ。
そもそも10階層でボスを張っているモンスターが普通に出てくる時点で難易度のケタが上がる。
他の冒険者をまったく見ないのにはちゃんと理由があるのだ。
「みんな、よくがんばった。いよいよ40階層だ」
「ナックルさんは来たことがあるんですよね?」
「ああ」
「ボスは倒せたんですか?」
「……」
沈黙。
それが答えだった。
なんとなく重い空気になる。
「い、いや。今回こそ倒せる。みんなで力を合わせればな」
声は明るかったが、深刻そうな態度は取り繕い切れていない。
「作戦はこうだ。まずみんなでボスの注意を引き、隙を作って欲しい。チャンスが生まれたら俺が渾身の斬鉄剣を決めてやる。一度では倒せないかもしれないが、雷帝の剣の力があれば痺れさせることは可能なはずだ。そうすれば必ず勝てる」
処刑者の時はまずナックル自身が斬鉄剣を叩き込むと言っていた。
今度はわざわざそのための隙を作る必要があると。
40階層のボスモンスターがどれだけ強いのかは、それだけで明白だ。
「40階層のボスは、なんなんですか?」
「……ドラゴンだ」
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