鑑定チートで掘り出し物を探す
帰りの道中、雑多な露天商が軒を連ねる一角が目に付いた。
見ればダンジョン産出の魔法品を売っている店らしい。
剣や盾、帽子やローブ、何に使うのか分からない小物や装飾品まで様々だ。
「いらっしゃい坊や、いい物あるよ。この手袋はおすすめだ。パンチの威力が上がる。ケンカで負けなしになれるよ。こっちの木槌は火属性付きだ。叩いた場所に炎が発生する。まあこのサイズだから戦闘には使えないが、火起こしにはもってこいだ」
手のひらサイズの小さな木槌だ。
「木製だと火が点いてそれ自体が燃えるんじゃないですか?」
露天商は歯を見せて笑った。
「だからお買い得なんだよ。数回は使えるし、それでお値段5000マニーだ」
消耗品だから安いということだろう。
俺は気になったことを聞いてみる。
「魔法品を扱う店は多いんですか?」
「おうとも。この町にゃ有名なギルドダンジョンがある。名うての冒険者たちが日夜攻略に挑んで、たくさんの魔法品を持ち帰ってくるのさ」
「取りつくしたらなくなるんじゃないですか?」
「ダンジョンの魔法品は一定時間ごとに新しい物が出現する仕組みだ。もちろんどこにどんな品が現れるかは分からないがね。運よく強力な品物が見つかればそれだけで一財産だよ」
「面白いですね。どういう仕組みで湧いてくるんですか?」
「それが分かったら苦労しないよ。大昔から偉大な学者や錬金術師が謎を解明しようとしてはいるみたいだが、手がかりすら掴めていないのが現状さ」
ダンジョンにはアイテムが湧く。
それだけ覚えておけばいいか。
俺はまだダンジョン内で見つけたことはないが、きっともっと深く潜らないといけないのだろう。
「階層が深くなれば深くなるほど魔法品の効果も強力になる。ギルドダンジョンは地下100階まであって、最初に踏破した冒険者が見つけたのはどんな相手でも確実に死に至らしめる魔剣だった。彼はその魔剣のおかげで、死神の二つ名で恐れられたそうだ」
「え? もう踏破されているんですか?」
「200年以上昔にね。それ以降踏破者は出ていない。次に踏破する冒険者が手に入れるのはどんな魔法品なんだろうね。同じ物は手に入らないだろうが」
店主は少しの間夢見るように虚空に視線を向けていたが、俺に焦点を戻すとこう言った。
「で、どうだい? 何か買っていくかい?」
「そっちの、ガラクタっぽいのは何ですか?」
陳列されている商品とは別に、木箱に雑に放り込まれているゴミだかなんだか分からないような品々があった。
「なんの効果があるのか分からない物だね。もちろんちゃんと鑑定はしたんだが、それでも分からない魔法品ってのは一定数出るんだ。どうだい? もしかしたら凄い効果の魔法品が紛れているかもしれないよ。どれでも一つ2000マニーだ。買っていくかい?」
「じゃあ一つ」
くすんだ緑色の石がはめ込まれた指輪を手に取った。
なんとなくおもちゃの指輪、という見た目だ。
「毎度あり!」
買ったばかりの指輪をアイテム化して気付いた。
アイテム欄上の表示だ。
『抗魔の指輪――火属性耐性5、聖属性耐性5、土属性耐性-5、MP回復力-1』と書いてあった。
「あの、この指輪、属性耐性があるみたいですよ」
店主は座っていたイスから飛び上がった。
「本当かい!?」
「火属性耐性、それに聖属性耐性が付いてます。効果は大したことないみたいですが。ああそれと土属性には逆に弱くなるみたいですね」
「ふうむ。耐性系の効果は調べるのが難しくてね。装着者に強力な魔術を放ってみるわけにもいかないだろう? だから鑑定で分かるのは属性の半分以上をカットできるような超高級品がほとんどなんだ」
「鑑定魔術みたいなのはないんですか?」
「ないよ。鑑定は基本的に実際に奴隷に魔法品を使わせてみて、どんな効果が出るのかを試すんだ。中にはマイナスの効果が付いていたりして、命を落とすこともある。だから奴隷が必要なんだ」
人体実験みたいだな。
「なあ君、他の魔法品の効果も分かるのかい?」
身を乗り出す店主。
どうしようか。
正直に答えてもいいが、鑑定方法が本当に今店主が言ったようなものだとしたら、正確な効果が分かるというだけでこの世界では貴重な能力ということになる。
次から次に鑑定を求められても困るし、タダ働きならもってのほかだ。
俺は鑑定士になりたいのではなく、冒険者になりにこの町に来たのだ。
「すみません、適当に言ってみただけです」
「なんだ……からかわないでくれよ」
店主はつまらなさそうにため息を吐いた。
俺は他の露店で、同じようにガラクタ扱いされている魔法品を買った。
持ち運びしやすい指輪などの小物を中心に4つほど。
効果の確認は帰ってからのお楽しみにすることにして、俺は宿へと急いだ。
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