ギルドランク歴代最速昇格記録更新
ダンジョンの入り口はフロアの奥から行けるとなりの部屋だった。
城の衛兵かと思うほど屈強な体格をしたギルド職員が入り口を守っていた。
俺は冒険者ランクの昇格条件について尋ねてみた。
「ああ、新人の方ですか。この階段を下ればすぐにダンジョンの地下1階です。地下2階まではボールラビットが出現します。その死体を持ってきていただければこの証明札と交換します。証明札20枚でFランクへの昇格条件を満たしますよ」
つまり最初はGランクからというわけか。
最初はボールラビットを地道に狩れということか。
地下一階は現実世界で言えば学校の体育館程度のただっ広い大部屋で、ボールラビットが大量に湧いた。
適当に狩りまくって死体をアイテム化して持ち帰る。
アイテム欄から死体を取り出して目の前に積み上げた俺に、ギルド職員は目を見開いて驚いていた。
一匹が豚ほどもある巨大ウサギの山は天井に届きそうなほどだった。
「一度に20体も持ってきたのはあなたが初めてです。しかもこんな短時間に……」
いやまあこの程度ならエヌ村でも狩ったことはあるのだが。
「この死体はどうするんです?」
「当ギルドが引き取った後、然るべきルートで市場に流通させることになっています。ボールラビットの肉は美味で需要も高いですからね。もちろんその証明札を受付に持って行けば、ちゃんと報酬が支払われますよ」
渡されたのは本のしおり程度の紙片だ。魔物の名前が書かれている。
その辺もきちんとシステムができてるんだな。
説明しながら職員は別の職員に声をかけて、死体の山を手際よく荷車に乗せていった。
俺は受け取った証明札をさっきの受付嬢に渡して、Fランクへと昇格した。
受付嬢はめちゃくちゃに驚いていた。
「はわあああああああああっ!? す、凄いです! これは新人の歴代最速昇格記録ですよ!」
その大声に周囲の冒険者たちも当然振り向く。
「えっ、あのガキはさっきの……もう昇格なのか?」
「ウソだろ!? ありえねえ! トイレに行ってきただけじゃねえのか!?」
「用を足すより早く昇格……こりゃギルド史に名を残すぜ」
「さっきはAランクのパーティーに誘われてたな。つまりそれだけの実力があるってわけか!」
いやいやいや。
俺は納得がいかない。
受付嬢に確認する。
「待ってください。たとえば、腕は立つのに冒険者にならずにいた人がいたりしますよね。そういう人が冒険者になって狩り始めたら、このくらいは簡単なのでは?」
「ボールラビットは大きいですからね。どんな達人の方でも証明札との交換と、狩りとの往復で普通は時間がかかってしまうものなのです」
ああ、アイテム化のメリットが大きかったわけか。
「最速記録更新の追加報酬とかあるんですか?」
「申し訳ありませんが……」
「ですよね」
もちろん冗談だ。苦笑いする受付嬢に軽く手を上げてダンジョンへと戻る。
ダンジョン入り口の職員に再び聞く。
「Eランクへの昇格条件はどうなっているんですか?」
「ケイブスパイダー5体ですね。こちらは地下5階から地下9階に渡って広く分布しています。ですが出現絶対数が少なく、毒も持っていて手強い魔物ですよ。地下5階以降は地下4階までとは比べ物にならない強さの魔物も出現しますからね。新人の方でしたらパーティーを組んで挑むことをおすすめしますが」
「まあちょっと様子見してきます」
俺は適当に言って地下に潜ることにした。
地下2階は地下1階と同じような大部屋が一つだけ。
階段降りてすぐにギルド職員の詰め所があった。
現実世界の交番を思い出す。
地下3階地下4階も出現するモンスターこそ違うが似たような感じだった。
しかし地下5階に降りると部屋の様子は一変。
現実世界基準で表現するなら、今度は学校の教室程度の広さの部屋だ。
それがいくつも繋がっている造りになっている。
ようするに複数の部屋で構成されているのだ。
今まで大部屋が一つだけだったことを考えると、部屋数が増えれば増えただけダンジョンの複雑さは倍々に跳ね上がる。
ようやくダンジョンっぽくなってきた。
まあやはり階段降りてすぐの場所にはギルド職員の詰め所があったのだが。
ここからケイブスパイダーが出るという話だが。
しばらく歩き回ったが、出てきたのは人間大の大きさのキノコのような魔物、歩く木の魔物、手のひらサイズの妖精のような可愛い魔物、コウモリのような魔物、スライムの魔物とかばかりだった。
ケイブスパイダーはレアモンスターなのだろう。
一応死体は回収して地上の職員に渡すと、ボールラビットの時と同じような、報酬と交換できる証明札を渡された。
「昇格に関係のない魔物の死体は、わざわざ持ち帰る冒険者も少ないので助かります。一応これらも利用価値のある素材ですので。ですが実はボールラビットのほうが報酬金額は高いのです」
などと言われた。
報酬が少ないから、かさばる魔物の死体をわざわざ運びながら戦う冒険者はいないということだろう。
俺は死体をアイテム化できるから大した手間ではないのだが。
「そういえばダンジョン内に詰め所があって、職員の方が常駐しているようでしたが」
「ギルドダンジョンは10階層までは整備されているんですよ。新人の方がいきなり命を落とすようなことが無いよう注意を払っているのです。冒険者の方々は冒険者ギルドにとって生命線ですからね。できれば深層に潜れるくらいに育ってほしいものなのです」
ということは10階層より下からが本当の冒険になるということか。
今日はひとまずこの辺で探索を切り上げて宿に戻ることにした。
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