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怪しいイケメン

「おいおい、何の騒ぎだこりゃ」


 入り口から男の声。

 見れば三人の冒険者。

 二人の仲間を後ろに従えるように入ってきたのはイケメンの男。


「あー……、新人(ルーキー)イジメ……ってわけでもないのか」

「なんだお前は?」


 ゴリラは気色ばんで体を動かしかけたが、仲間の男がその腕を押さえた。


「あいつ、今日この町にやってきたAランクの野郎ですぜ」

「なっ――」


 驚愕の表情を浮かべるゴリラ。

 驚いたのは俺も同じだった。

 しかしそれはAランクの男を見てではなく、その後ろ。


 男に付き従っている二人のほうだった。

 片方は大きな盾を背負ったヒゲ面の男。

 そしてもう片方の女。

 そいつとは昨日会ったばかりだった。


「……あら、サーティ君」


「ん、なんだ? 知り合いか?」


 男はライザを振り向くが、当の本人は口の端を釣り上げて笑うだけ。

 ライザの顔は昨日見た時より元気が無いように見えた。

 よく見ればわずかに寝癖が残っている。


 ああ、もしかして寝起きなのか。

 おそらくライザは俺のように、町に入ってから今まで寝ていたのだろう。


「ったく、お前の趣味にはあきれるよ」


 男はライザに皮肉げな笑みを向けて、それから俺のところまで来て言った。


「見たところこいつらに絡まれて返り討ちにした……ってことでいいのかな?」


「まあ、そんなところです」


「こういうバカはよくいるんだ。実力もないのに、自分より弱そうな相手を見つけるとイチャモンを付けて襲いかかる。災難だったね」


 イケメンは爽やかに笑う。


「俺はナックル。Aランクパーティー『ナックルズ』のリーダーだ。ちょうど荷物運びを一人探していてね。もしよかったらウチに来ないか?」


 は?

 いきなり何を言ってるんだこの男は。

 Aランクの冒険者なら相当な腕だということは俺にだって分かる。


 それが明らかに新人(ルーキー)の俺を仲間に入れようとは。

 そういえば昨日ライザも同じようなことを言っていたな。

 このパーティーはそれほど荷物運びに困っているのだろうか?


「いえ、いいです」


 いきなりAランクパーティーにくっついていく気はない。

 受付嬢やゴリラの反応から、自分がそこそこ戦えるだろうというのはなんとなく感じてはいるが、最初は相応の努力をしてランクを上げていきたい。


 誰かのおこぼれにあずかって楽をしたって面白くなさそうだ。


「そうか。ま、気が変わったらいつでも言ってくれ。君のような、いい目をした新人は歓迎する。彼女もきっとそう思っているよ」


「いや、俺は別にライザさんとは何もないですよ?」


 ナックルは一瞬ぽかんとした顔をした。

 それからバツの悪そうな苦笑い。


「おや、そうだったのか。こいつのことだから俺はまたてっきり……。いや、まあとにかく、仲間に入りたいならいつでも言ってくれ。歓迎するよ。それじゃあ」


 そう言ってナックルたちはフロアの奥のほうへ去っていった。

 俺がパーティーの誘いを断ったのはもう一つの理由がある。

 今のナックルとかいう男だ。


 イケメンだが若干うさんくさい感じがするんだよな。

 考え過ぎだろうか?

 ルックスへのひがみではないと思いたい。


 もう周囲は喧騒を取り戻していた。

 何事もなかったかのように談笑する冒険者たち。


 この程度の騒ぎは日常茶飯事だとでもいうかのよう。

 そういえば最初から一連の騒ぎに興味を示さず、冷めた態度の冒険者たちも多かった。


 彼らはきっとゴリラよりも格上の冒険者たちだろう。

 ゴリラと仲間たちももう消えていた。逃げ足の速いことだ。

 俺は受付に戻って冒険者登録を済ませてカードを受け取った。


 その冒険者カードがあれば世界中の冒険者ギルドで通用するらしい。

 古代技術が使われているとかで、偽造もできないという話だった。

 登録が済んだら次はいよいよクエスト。

 そう思っていた俺に受付嬢が言った。


「サーティ・フォルガン様はギルドダンジョンについてご存じでしょうか?」


「ギルドダンジョン?」


 おお、ダンジョン。

 心躍る単語だ。


「ええ。アルシャン冒険者ギルド、つまりこの建物ですね。なんとここは広大な地下ダンジョンの上に建てられているのですよ」


 胸を張る受付嬢は誇らしげだ。


「ダンジョンから産出される魔法品(マジックアイテム)は莫大な富をもたらします。その富を求めて冒険者たちが集い、魔法品の売買を目当てとした商人たちも集まります。もちろん当ギルドもそんな恩恵の一部にあずかっているわけで、ご覧のようにこの建物は他の町に比べて若干豪華な造りになっているわけですね」


 他の町の冒険者ギルドを知っているわけでは当然ないが、おそらく若干どころではないはずだ。

 受付嬢はふふんと鼻息が聞こえそうなほど得意気に話す。

 よほどこの場所を誇りに思っているのだろう。


「魔法品だけでなく、指定の魔物を狩っていただいて冒険者ランクを上げることも可能です」


「ありがとうございます。行ってみます」


「ご武運をお祈りしています」


 俺の冒険者生活が始まった。

ここまで読んでいただいた皆様に、心よりの感謝を!

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