初戦闘&レベルアップ
しばらく歩いたところで、モンスターに襲われた。
見た目はウサギ。
だが目つきがやたらと鋭くて体がデカかった。
豚くらいの大きさだ。
そして好戦的。
いきなり飛びかかってきた。
ズドンッ!
腹にキツイ一撃をもらってしまう。
体がふわりと浮く感覚。後方に吹っ飛ばされた俺は地面に尻もちをついてしまう。
視界が一瞬赤く染まった気がした。
「いててて……あれ?」
痛いと言ったのは先入観からで、実際にはそんなことはなかった。
痛みはたしかにあるのだが、せいぜいデコピン一発程度だ。ほとんど痛みなしと言っていいだろう。
体が浮くほど吹っ飛ばされてデコピン程度。これはゲームだから痛みはほとんど感じないようになっているということか。
なら完全に痛み無しでいいだろとも思ったが、そこはリアリティを出すための演出なのかもしれない。
立ち上がったところでもう一撃。
ドガッ!
今度は避けようとしたところを、足を掬われた。再び転ばされる。
また視界が赤くなる。これがダメージエフェクトなのだろう。
モンスターの動きは速い。
跳んだと思った瞬間にはもう衝撃が来る。
とはいえすぐにわかった。
このモンスターはたいしたことはない。
このゲームにおけるスライム的存在なのだろう。
攻撃は体当たり。衝撃はあるしぶつかられた感触はあるが、痛みはほとんどない。自分がどのくらいダメージを食らっているか分からなかった。
とにかく反撃するべきだ。
跳んでからでは間に合わない。
予備動作を見るんだ。
体当たりを仕掛けてくる瞬間、体が少し震える。溜めだ。
モンスターの体が震えた。
今だ。
一撃目は腹。二撃目は足。
次はどっちだ?
いや、相手の動きを見切る必要はない。
攻撃を受け止めて、止まったところを倒すんだ。
ドゴッ!
腹に衝撃。
視界が赤く染まるが無視して巨大ウサギの体にナイフを突き立てる。
「グイギィッ!」
命中。
ナイフが肉をえぐるリアルな手ごたえ。
ウサギ型モンスターは耳障りな鳴き声を発して動かなくなった。
倒した!
えっと経験値とかお金とか、そういうのは手に入るのか?
ドロップアイテムとか……。
俺の足元には巨大ウサギの死体だけ。
ゲームならシステムメッセージがあってもいいはずだが、どうやらそういうのはないらしい。
ならステータスで確認だ。
……ステータスはどうやって確認するんだろう。
ん?
俺がステータスを意識したことで、視界の隅に文字が浮かんで見える。
薄青色。
右上のほうだ。
小さくシステムとある。
そこに意識を集中。
システムメニューが開く。
『ログアウト』
『アイテム』
『ステータス』
『スキル』
なるほど。
体の感覚がゲームに移行して、現実世界で握っていたはずのコントローラーもどこかへ行ってしまったからな。
どうやってメニューを操作するのかと思ってたけど、こうやるのか。
とりあえずステータスに意識を集中。
薄青い発光文字が目の前の空間に浮かぶ。
職業 なし
レベル2
HP 25/50
MP 10/10
状態 正常
攻撃力 4
防御力 5
筋力 2
体力 4
敏捷 3
魔力 1
火属性耐性0
風属性耐性0
土属性耐性0
水属性耐性0
聖属性耐性0
闇属性耐性0
毒属性耐性0
無属性耐性0
睡眠耐性0
精神耐性0
暗闇耐性0
麻痺耐性0
毒耐性0
呪い耐性0
おそらく今の戦闘でレベルが上がったのだろう。
レベル2がスタートだとしたら半端だからな。
ステータスはオール一桁。
まあ最初はこんなものだろう。
割り振るべきステータスポイントのようなものはない。
ステータスはレベルによって自動で上昇するパターンか。
耐性系はずらりと0が並んでいるが、この辺はどうやって上げるのだろうか?
装備か何かで上げるのかもしれない。
スキルポイント1
攻撃
なし
防御
なし
魔術
なし
その他
言語
ラスタール言語
言語スキルを最初から一つ習得していたらしい。
ラスタール言語とあるけど、この辺りの国の名前だろうか?
ということはもし遠くへ冒険に行くことになれば、その都度新しい言語スキルを習得しなければいけないことになる。
言葉が分からなければNPCから情報を入手することもできない。その点では必須なスキルだが、おそらくスキルポイントは有限だ。慎重に使う必要がありそうだ。
そしてスキルは攻撃系や防御系、魔術系と別れているらしい。
今はなにも持っていないが、転職すれば覚えられるようになるのだろうか?
転職はどうやってやるのだろう。
うーん、情報が欲しいな。
一度ログアウトして検索してみるか。
いや、もうちょっとゲームを進めたい。
せっかくこんないい雰囲気の超絶クオリティゲームなんだ。もうちょっとだけ楽しみたい。
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村だ!
あれからさらに歩き続けて、日が暮れ始めた頃。
木の柵で囲われた家々が現れた。
運よくモンスターとは遭遇していない。
いや、運悪くか?
正直さっき出会ったウサギのモンスターなら倒すことが可能だ。
初期地点で出会った獣人男の情報では夜になると凶暴なモンスターが出るらしい。
なら昼の内に弱いモンスターを倒して経験値を稼いでおきたかった。
俺は走り出そうとしたが、ぬかるみに足が取られたかのように転んだ。
どうしたんだ?
もう一度走ろうとするが靴に鉛を仕込まれているみたいに足が重い。
ステータスを確認する。
職業 なし
レベル2
HP 25/50
MP 10/10
状態 疲労
疲労。
体感ではまったく分からなかったが、どうやらこの体は疲労しているらしい。
疲労を感じていないのに疲労とは奇妙な感覚だが、ゲームなのだからそういうものだと思うしかない。
疲労状態だと走ることができないらしい。
もう2時間以上も歩きっぱなしだったからな。疲労状態になるのもうなずける。
正直序盤に2時間も歩かせるゲームなんて普通ならクソゲーと笑ってすぐやめるところ。
しかしこのゲームは不思議とそういう気になれなかった。
リアルすぎる。
本当にファンタジー世界に来ているような気分になっていた。
せめて村だけは見てやるという気持ちになっていたのだ。
スキルを開いてみると、防御系統スキルに【スタミナ基礎】とあった。
しかし貴重なスキルポイント。村は目の前なので取得は保留だ。
俺は日没と同時に村に入った。
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