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初めて会う冒険者

 巨大な門は閉ざされているようだ。

 当然だ。夜に魔物が活発化するこの世界では、夜間に町の門を開けることはないのだろう。


 門の周りにはいくつかのテントが立っていて、何人かの人影もある。

 どうやら俺のように夜間に町に到着したが、中に入れない連中がいるようだ。

 テントの前で見張りをしていた一人が俺に気付いて声をかけてきた。


「お、子供か。珍しいな。外で遊んでて中に入りそびれたのかい?」


 男は結構厚着で、服も外套も使い込まれている。

 たぶん旅人だろう。


「いえ、エヌ村から歩いてきました」


「そりゃ本当かい? 一人で? 信じられないな」


「信じてくれなくてもいいですよ」


 男は肩をすくめた。


「ま、運が良かったんだろう。なに、ここまでたどり着けたのならもう安心だ。歩き続けたなら疲れただろう? その辺に座って休んでな。魔物が出てもここにいる誰かがなんとかする」


 言われるまでもなくそのつもりだ。

 中に入れないのなら待つしかない。

 門の近くまで歩く俺に、近づいてくる女性がいた。


「ハァイ。こんばんは坊や。休むならお姉さんのテントに入れてあげよっか?」


 露出の多いレザーの服を着た二十歳くらいの女性だ。

 目つきも悪く、スラム街が似合いそうなギラついた雰囲気だ。


 これ見よがしに腰に下げたナイフは、リンゴの皮をむくには大きすぎる。

 女盗賊かな、と思った。


「いえ、結構です。それにあなたも一人旅ってわけじゃないんでしょう?」


 村にいた間はキアラという巨乳美女のぎゅっぎゅ攻撃に耐えて過ごしたんだ。男を勘違いさせかねないような誘いにもすぐにNOと言える。

 女は少し驚いたような顔をしてから笑顔を作った。


「あら、クールなのね。もちろん一人じゃないわ。パーティメンバーもいっしょよ」


「パーティーメンバー、ということは……」


「つまり冒険者ってわけ。私はライザ。あなたは?」


「サーティです」


「かわいいお名前ね。ふふっ、名前だけじゃなくてぇ、お顔のほうも好みかも」


 そんなことを言いながら俺のあごに手をかけてくる。

 なんだこのぐいぐい来る女は。

 当然、誘惑されることはない。


 こんな(すさ)んだ雰囲気を持つ女は俺の好みのタイプではないからだ。

 俺は話題を変えることにした。

 さりげなくライザの手を払いのけながら門を振り仰ぐ。


「この文字、村で見ました。結界を発生させるものですよね」


 閉められた門には大きく二つの文字が刻まれていた。

 村で目にしたものだ。


「そうよ。まあ気休めみたいなものね」


「気休め?」


「だってそうでしょ。この結界がすべての魔物を退けられるのなら、私たちのために門を開けてくれてもいいわけじゃない。せっかく長旅をしてたどり着いたってのに、外で待ちぼうけなんて最悪よね」


「そうですね」


 結界が万能ならエヌ村のジャンは死ななかった。


「ねえサーティ君。お姉さんともっとお話するなら、向こうに行かない?」


 壁沿いの暗がりのほうを示すライザ。


「なぜです?」


 ライザは俺の耳元に口を近づけて言った。


「ここは明るすぎるわ」


「あまりからかうのはやめてくれませんか?」


 ライザは冷や水を浴びせられたような顔をして肩をすくめた。


「はいはい。ところで坊やこそなんで一人でこんなところにいるのかしら。パパやママはいっしょじゃないの?」


 そこまで小さくは見えないはずだが。

 女としてのプライドを傷つけてしまったのかもしれない。

 誘惑してみたはいいが冷たくあしらわれたので、まだ性にすら興味のない子供だと決めつけることにしたのか。


「俺が来るところ、見ていませんでしたか? 一人で来たんですよ。冒険者になりに来たんです」


 ライザは目を丸くした。


「あなたが冒険者ねえ……。ふうん、じゃあそういうことならお仲間さんね。もしどこのパーティーにも入れてもらえなかったら拾ってあげてもいいわよ。荷物運びでよかったら、だけど」


「遠慮しておきます」


 冒険者になってすらいない俺をパーティーに入れる。

 これはライザ一流の誘い文句なのだろうが、俺としては断りたいところだ。


 きちんと冒険者としてランクを上げ、荷物運びなどとは言わせないようにしたい。

 俺は会話を切り上げて背を向けた。ライザもそれ以上言葉をかけてくることはなかった。

 日が昇るまで待機し、門が開くと同時に俺は町に入った。

ここまで読んでいただいた皆様に、心よりの感謝を!

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