この聖女(男)武闘派につき
「あの・・・僕・・元の世界に帰れるんですか?」
「えーと・・・それは・・・」
え、呼べるけど帰りは無理系の奴?
「できますけど・・・」
・・・できんのかい!
「あの・・・助けては貰えないでしょうか?」
「今ちょうど学校のイベントで注目されてる中で喚ばれたので向こう大騒ぎになっていると思うんですけど・・・」
「それは大丈夫です。帰還する時は元の時間に戻れますから」
それはどういう理論だ!?
「まあ、戻れるなら話だけなら聞きますけど世界を救うってなんですか?」
「この世界は今闇に閉ざされ・・・キャッ!」
説明を始めたマリアーヌさんの言葉を遮るようにガラスの割れる音が響く。
「ちっ!間に合わなかったか・・・」
黒い狼?いや下半身は人ぽい気がするからワーウルフ?
「な、なんで魔族が・・・!?」
周りの兵たちが僕たちの前に飛び出し剣を構える。
「くくくっ!お前達のやろうとしてる事なんてお見通しってことよ!」
「お逃げ下さい姫様!!聖女様を連れて早く!」
「ほう!そいつが聖女か!」
兵士の頭を飛び越え僕の目の前に着地する。
「な!?」
「つまりコイツを殺っちまえば魔王様は安泰という事か・・・」
「ま、や、止めてーー!!」
マリアーヌの悲鳴が木霊する。
「死ね!」
鋭い爪が僕に迫る。
「ふ、聖女と言ってもこんなものか・・・ん?何だと?」
貫いた腕を引き抜こうと腕に力を入れるがびくともし無い。
「・・・んーこれは僕を殺す気だったのかな?」
よく見ると爪は体に当っていない。脇に挟まれているだけだった。
「ば、馬鹿な!?確かに心臓を狙ったはず!」
「この程度のスピードで?」
ゴキッ!と骨が砕ける音がする。
「ギャー!!」
黒いワーウルフ?は折れた右腕を庇いながら後退する。
「僕ね・・・小さい頃から女の子扱いされるのにウンザリしててね・・・」
距離を詰めながら拳を固める。
「武術なら一通り免許皆伝までいったんだよ」
「コイツ!やば・・」
ワーウルフ?は逃げようとするがもう遅かった。
「だけど見た目全然筋肉つかないし!」
一気に距離を詰められ拳が炸裂する。
「こんだけ男アピールしてんのに何で男にモテんだよ!!」
フラついた所に追撃が刺さる。
「アイツら男の癖に可愛い便箋つけ嫌がって!」
「グハッ!」
「少し期待しちゃったじゃ無いか!」
「ゲフッ!そ、それ俺関係無・・・」
拳に光が集まっていく・・・
「うるせー!!」
光り輝く一撃によりワーウルフは消え去った。
「ふぅ、あースッキリした」
その笑顔は輝いていたこの状況を知らない人なら惚れてしまいそうになる位に。
ただしこの現場に居合わせた人達の心は一つ
『あ、この人怒らしたらヤバイ人だ』
だった。