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消ゴム判子をつくりたかったらしい
ヨークス/20日目
今日はグミ消しの板が欲しいと言うので用意させた。
渡せば「柔らかすぎるんですが」と言われたがそれしかないと答えれば渋々受け取りいつものようにちまちまと何か始めた。
刃物が欲しいとも言われたが警戒は緩めるわけにはいかないという殿下の言葉を跳ね返せるほど偉くはないので渡してはいない。反乱するわけがないのはわかっているためいつの間にか石の刃物を所持しているのは報告する必要はないだろう。
深夜の見回りの際に完成したと見せられたのは雑だが独房の通路のレンガ模様を模しているのがわかる模様盤だった。
自分の血をそれに塗りたくり床に張り付け剥がせば、同じ柄が床に現れた。
まるで印鑑のようだ。
「いやインクが欲しいなら言ってくれよ」
「頼むより早く使えるなと思って」
「すまんが自分の身体を大事にしてくれ」
「気を付けます、次は木材の破片とか切断片がほしいです」
「彫刻でもしようってか?」
「お分かりになりましたか」
「さすがに三週間の付き合いだからな…」