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84話 源陽竜

 


  『銀、白が主についた…』

「なんとなくだけど分かっていたわ。まさかアイと契約するなんてね」

『白、寂しがってた』

「ちゃんと黒がケアしてあげないとね」

『うるさいぞお主等、集中せんか!』

「フフフッ。いいじゃない」

『蒼まで…たく。相手は源陽ぞ』

「「『分かってる』わ」」

『子羊も分かっておるな?』

『はい』

「相変わらず無口ね」


 ジルコートとノワルヴァーデ、幻影ブランで右舷から、アルバス、ニエーバ、カルテス、三体の帝で左舷へ回りルシフェルに対して一斉攻撃を仕掛けた。

 あらゆる魔法がルシフェルを襲うも、張られた防御魔法で全てを防ぎきり、ブレスを射とうとしたアルバスにブレスで応戦する。

 一瞬にしてかき消されたアルバスのブレス、そのままルシフェルのブレスが襲いくるも、カルテスと遠巻きで見ていた光の帝の防壁で守られて事なきを得た。


『助かったぞ。あれほどとは思わなんだな』

『私達の魔法も届かない』

『これからぞ、蒼よ。子羊は防御に回れ』

『はい』


『銀』

「分かってるわ」


 ルシフェルがアルバスの方を向いた隙に、ジルコート達は各々が得意とする魔法を再び放つと、ルシフェルはブレスを射ちつつ防御魔法を側面に展開させそれを防いでいた。

 器用なことをするもんだと関心せざるおえないが、攻撃が通らなければ奴を倒す事が出来ない。

 なんとか隙を見つけてダメージを与えたい所である。

 すると、土の帝がルシフェルの真下から土のスキルで成形した幾本の槍を生やして突き付ける。鱗に阻まれて多少の傷を受けた程度だったがそれでもダメージを与えたことには変わりない。


『よくやったぞ!帝よ』

『黒、銀!続いて!』


 帝の攻撃で怯んだルシフェルに、多方向からブレスの一斉射が放たれて防壁を張ろうとするルシフェルは、タイミングの早かったノワルヴァーデと幻影ブランの直撃を受けると、叫びをあげて防壁が砕かれて全ブレスを浴び、それに続いて帝達も攻撃に加わり、この機を逃すまいと全員が渾身の一撃を与えていく。


「やったのか!?」

「わからない…どうセシル?」

「なんとも言えません」


 爆煙と土煙が混じる中、気配は感じるようだがルシフェルの安否が不明であった 。

 アルバスが近付こうとした瞬間、白と黒の光りが辺り一面を覆うと。


『ラスターカタストロフィ』


 ルシフェルは最大級の光魔法を射ち、周囲に打ち上げられた無数の光の球体が竜達に襲いかかり、防ごうとするジルコートやカルテスの防壁は突き破られ、俺達を守ろうとした光の帝を合わせた四体の帝は力尽き、幻影ブランも消滅して五竜は致命傷を追って落下する。


『頑張ったな。後は任せろ』

「マ、マスター」


 俺は竜達に念話を送ると、アイもアーシェも召喚解除を行って皆を退避させた。

 クラルハイトの方は決着がついたようだ。俺も早々にケリをつけたいと召喚向上を唱えようとする。


『させない!』

『某の相手は拙者達だ』


 帝達が倒された事により、ノーム、フェンリル、ウィスプ、ステアロウの上位精霊が召喚されてルシフェルを取り囲み、押さえつけてる間に向上を唱えた。


  『 悠久の時告げる光と闇を交わりて顕現せよ。世界を破滅に導く為に!現れろ、ラグナロク・アポカリプス! 』


『邪魔を!クッ!』

「もう終しまい、ね?」

『神殺しまでも邪魔するとは!!』

「…半身にお還り」

「ガァァァァーッ!!」


 幾千もの剣が突き刺さり、最後に手にした剣で額を貫くと、ルシフェルは立ったまま息途絶えた。


 二竜の屍は消えることなくその場に立たずみ、異様な空気を放っていたが、もう二度と動くことはなかった。

 二竜が倒されたことで姿を消していた悪魔が現れ、屍を見つめて怒りと悲しみが混じったような表情を浮かべ。


『こんなにも役に立たないなんて、がっかりだよ』

「後はお前だけだぞ」

『そうかな?僕にはまだ召喚獣はいるんだよ』

「やらすかよ!アゲート!」


 召喚しようとしていた悪魔に転移魔法で急接近して長剣を振るって捉えたと思ったが、影を切ったように手応えがなく、どうやらスキルで残像を残して後方に逃げたようだ。


『君じゃ僕を捕らえられないよ。行きな、フレースヴェルグ』


 そう喚び出したのは以前にも戦ったデカブツの召喚獣。ソイツは師匠の仇でもある。


「あれはフレースヴェルグですね…厄介な相手を喚んだものです」

「うん。私達の師匠をやったのもアイツ」

「そんな事があったの」

「性懲りもなくまた現れたな、デカブツ!」

「グォォォッ!!」

『この前は君達にやられたみたいだけどね。今回はそんな力が残ってるかな?』


 煽るように尋ねてくる悪魔に、アイとアーシェが1歩前に出て手を取り合い反論するかのように言い放った。


「残念ながら余裕だわ」

「また送ってあげる。二度と現れないように」


『 天駆ける星の導きに全てを捧げます。地を這う者に神の鉄槌を!轟かせ、召喚獣、サテライトシャルウル 』


 アイの力を借りてアーシェは衛星兵器シャルウルを喚び、天から一撃の光りをフレースヴェルグ目掛けて降り注ぐと、地中を貫き跡形もなく消し去って見せる。


『前回といい、どんだけ使えないだ!もう怒ったよ。僕を怒らせたこと、後悔させてあげる』


 再び悪魔は姿を消して、代わりに3つの魔法陣が空に浮かんだ。

 2つの魔法陣からは 翡翠竜(ネフリティスドラゴン)邪竜神(アジ・ダハーカ) が召喚され、中央に広がった特大の魔法陣からは、古より生きる太古の竜、[エンシェントドラゴン]が喚び出された。


「ジェイダ…」

『サキ…アイ…』

「今助けるからな、待っててくれ」

『助ける?世迷い言を。小僧、儂が見えぬのか?』

「古竜よ、お前の相手は俺じゃない。アイ!アーシェ!竜の珠を!」

「ええ!」「りょーかい!」


 二人はアイテムボックスに手を突っ込んで、ピラミッドで手に入れた竜の珠を放り投げる。

 輝く珠から現れたのは空を覆い尽くす程の巨躯と、俺達が焦げそうな熱量をもつ[太陽竜]、淡い珠からは太陽竜程ではないにしろ、巨大で月光の輝きを放つ[夜月竜]が姿を現した。

 やはり太陽竜だったか、どちらも神話にしか登場しない伝説の竜、それが今俺達の前にいる。


『ほう、古竜に邪竜とは面白い相手だ』

『油断しないでね』

『当たり前だ、月よ。些か退屈していた所だ。全力でやらせてもらう』

『それもダメ。地上に悪影響』

『ぐっ…なら半分だ』

『それならいいわ』

『人間よ。後は任すがよい』

「頼んだぞ。翡翠竜だけは俺達がやる」


 太陽竜は古竜に、夜月竜は邪竜神へそれぞれ向かっていく。

 俺はジャンヌを喚び、アイもやってきて俺達はジェイダに剣先を向けた。


「さぁ、ジェイダ!俺達が相手だ」

『…』

「私も参加させて貰います。行きなさい精霊達」

「アーシェは休んでてくれ」

「ごめんなさい」


 上位精霊とジャンヌの相手をしているジェイダを見ながらどうやったら悪魔との契約を切ることが出来るのか考えていると。


「サキさん。あのネフリティスも奪われた竜なんですよね?」

「ん?ああ。元は師匠の竜だったが」

「それなら私の魔法で解除出来ると思いますよ」

「本当か!?」

「それならセシル、お願い!」

「はい、ただ弱らせなければ効き目がありません」

「それなら任せてくれ、アイ、行くぞ」

「うん!」


 俺達もジェイダの元へ駆け寄り、己が得物を振るう。






[古竜]

 太古の昔から存在するエンシェントドラゴンと呼ばれる古の竜。

 全長は50メーターを超え、豊富な魔力と力で破壊の限りを尽くしていたが、歳をとって疲労が増してきたのか近年では大人しくなっていた。

 しかし、悪魔との契約によって若き日のように活力が漲っている。



[太陽竜]

 またはソレイユドラゴンと呼ばれた神話でしか見ない伝説の竜。

 古竜の倍はあろう巨躯(本来は更にデカい)に、全身が橙色に燃え盛って近くにいるだけでも焼けそうなほど熱い。

 神話では、邪悪な神と死闘を繰り広げて大地を焼き、邪神を倒すと復活せぬように星の中に亡骸を閉じ込め、永遠に燃える炎でその星を覆ったとされる。これが太陽竜の成した功績と太陽が誕生した物語として受け継がれている。



[夜月竜]

 セレーネドラゴン。

 太陽竜程ではないが、同じように巨大で月のように淡く輝く身体をしている。

 夜月竜も神話でのみ語り継がれ、太陽竜と邪神が戦った星から生命を他の星に逃がしたとされる。

 その際、太陽を見守るようにと伝え去っていき、太陽を見守るその星を見守る星、今の月を作り出したと物語は語っている。

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