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5話 地竜

 


 巨岩竜と悪魔を退治した俺達は、街道に戻りしばらく進んでいると石壁の小さな掘っ立て小屋が見えた。


「今日はもう日が暮れる、彼処で休まないか?」

「外よりは良さそう」

「中を見てくる」

 …

「なんもないぞ」

「ほんとだ。暗くなる前に夕飯の準備するね」

「なら俺は寝床作ってるよ」

「ねぇ」

「ん?」

「なんでここ魔物に食べられてないの?」

「あー確かに。それは不思議だよな」

「もしかしてあれのお陰?」


 アイは天井の上に描かれていた薄れた小さな魔法陣を指差した。


「なるほど、あれのお蔭か。じゃあ街の至るところにもあれと同じものがあるのかもな」


 確かにあの魔法陣が魔物避けならこの小屋がこんな所にあってもゴーレムに食われていないのに説明がつく。


 翌朝、日が沈む前には着くはずの街を目指して街道を歩き進めた。

 二時間くらいが経ったとき、視界の隅に影が映りこんできた。


「あれ何に見える?」

「リザード?にしてはデカイ気がする」

「なんか食ってるよな」

「ワイルドホーンだと思う」

「如何せんなんでこっち向いて食ってんだよ」

「あんな大きな獲物捕まえてるんだからウチらに興味なんてないでしょ」

「ならいいけど。あんま見るなよ」


 岩の影でホーンタイプの魔獣を食い漁ってるソレを横目に見ながら進んで行くが、此方に気付いたのかソレは這いつくばるように俺達に向かってきた。

 影から出て太陽に晒されたことによりその正体がハッキリと分かった。


「地竜か!」

「ウッソ!?山脈にしか居ないんじゃないの?」

「だと思っていたが…だがデカイだけのリザードだ。向かってくるというならやるしかあるまい」


 勢いを落とさず俺達に向かってくる地竜と戦闘態勢に入った。

  地竜はそのままの速度で飛び掛かってきたがアイの水魔法により後方へと飛ばした。

 隙を与えず喚び出した拵えを腹に突き刺し、もう片手にも長剣を出して突こうかと腕を前に延ばしかけた瞬間、地竜の尻尾が襲い掛かる。

 だが同時に背後からアイが風魔法を撃ってくれたお陰で尻尾が千切れ事なきを得た。


「ナイスだアイ!」


 そう言いながら片方の長剣も突き刺す。


「ゴォォォォ!」


 地竜は叫びながら無理な姿勢から噛み付こうとしてきたが俺はそのまま腹を引き裂いた。


「ガァァァァァァ」


 今だやる気になっている、さすが竜種だけあってタフだ。

 だが他の竜種に比べると鱗は硬くはないし魔法もブレスも使ってこない。注意すべきは尻尾と牙のみ。

 地竜は上体を起こし大口を開け、また噛み付こうとしてくる。その攻撃を避けると同時に大きく開け放った口を切り裂く。


「ガァァッ!」と悲鳴を上げた地竜は力付き、その場に倒れこむ。


「勝った!」

「やったね!」

「下級と言えど竜種。侮れんな」

「私が居なかったら弾き飛ばされてたもんね」

「尻尾のことか?気付いて対応しようとしてたからな」

「ほんとかなぁ?」

「さすがにそんくらいは出来る」

「そーいうことにしといてあげましょう」

「…そうしてくれ」


 女は強いな。


 日が傾いた頃ようやく街が見えてきた。


「やっと見えてきたね」

「ああ。ここの街道は本当疲れた」

「だよねぇ、早く落ち着いて横になりたい」

「だがその前にギルドに「その前に宿屋でしょ!」

「だけど確認しなければならないことが」

「今日も明日も変わらないから!」

「はい」


 夜を迎える前に街へ入ることが出来て安堵する俺達はすかさず宿屋を探す。

 本音を言えば俺も早く横になりたいし何より風呂に入りたいのだけど、なんか負けたような気がする。

 心地よいベッドで寝た翌日は目覚めが良いものだ。

 朝食を済ました後俺達はギルドへ向かう。

 扉や窓は木製だが壁は石のブロック、家そのものが四角い。この地方は元々雨が少なく木々が殆ど生えていない。

 街全体が灰色と言ったところだ。

 そんなことを考えているとギルドに着いた。


「どぉ?なんかある?」


 依頼の掲示板を見ながらアイが呟く。


「討伐依頼が少ないな。それにどれもその辺にいる魔物だ」


 どうやらこの地域はあまり魔物に苦しめられていないように見える。


「じゃあこのギガロックドラゴンだけ?」

「そうだな、依頼書とこの欠片(巨岩竜の鱗)を持ってって受付しといてくれ」

「りょーかい。サキは?」

「あっちで周辺情報を得てくる」


 他の冒険者から話を聞き周辺の情報を集めることにした。

 話込んでる間に受付を済ませ、銭の入った小袋を持ってアイが帰ってきた。


「ねぇ、ギルマスが話したいんだって」

「いいよ面倒くさい」

「もうあそこにいるよ」

 …

「お呼びでしょうか?」

「貴方がサキさんですね!はじめまして、ギルドマスターのヨハンと申します。早速ですが討伐したのは巨岩竜と聞いております。詳しい話をお聞きしたいのですが」

「はい、確かに巨岩竜でした。あれは上級悪魔と契約していた召喚獣ですね」

「なんと!!?話には聞いていましたがこの地域でもそのようなことが起きていたなんて…」

「巨岩竜を倒すのにいっぱいいっぱいで悪魔には逃げられてしまいまして」

「いえいえ、十分ですよ!」

「そー言って頂けると嬉しいですね、この辺の情報を聞きたいのですが魔物や竜に関することなら何でも構いません」

「ここより西に行くと荒野の先に森が見えてきます。その森の中に光りが見えた、また巨大な魔物を見たなどその森の話はよく聞きますね。そこを調査して頂けると助かるのですが」

「その森はどのくらいかかります?」

「そうですね、1日半あれば着くかと」

「なら今からでも行ってみます。先ほどの冒険者達も森に行くと言っていましたし」

「ですが街道を反れるので道中危険ですよ」

「承知の上なので大丈夫です」

「そうですか、なら調査の方宜しくお願いします」


 俺達はギルドを後にし、必要な物を買い揃え森へと出発した。

 巨大な影に怪しい光り…怪しすぎる。どう考えても召喚魔法陣の光りだろう。


「気を引き閉めて行かないとな」

「いつもゆるゆるだもんね」

「…」





  [地竜]

 アースドラゴン。

 山脈で多く見かける茶色の鱗を持つ下級種の1体で姿形は四足歩行のリザードタイプに似ているが大きさが比にならない。

 好戦的な性格であるが、魔法もブレスも使えない。

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