表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/111

48話 機械竜・風神竜

 


  「どうするの?今から行ってみる?」

「んー。気になると言えば気になるが、胡散臭すぎないか?」

「そりゃーねぇ」

「危険かもしれんが行くか?」

「サキが行くなら付いてくよ」

「そうか、なら行こうか」


 見えていてもこの距離を歩くとなると夜中になってしまう為、ジルコートを喚んで乗せていって貰うことにした。


「と言う訳なんだ。頼めるか?」

「良いわよ。でもあそこから何か感じるって事もないわ」

「どっちにしろ寄るんだから行こう」

「ジル宜しくね」

「ええ。じゃあ掴まっててね」


 ジルコートの背に乗り、あっという間に街へ着いたのだが、日が落ちてきたというのに灯りが一切無く、それどころか人の気配すらない。もちろん外に居る者も見かけない。

 飯屋に入ってみると、テーブルには食べかけの皿、コップが置いてあって悪臭を放っていた。


「なんで誰もいないの?」

「居たのは確かだが。ジル、何か解るか?」


 人化して後を付いてきたジルコートは神妙な面持ちで口を開いた。


「昔、グラシャ=ラボラスと呼ばれる悪魔が住民のみを消し去った話を聞いたことがあるわ。天使によって殺されたとも」

「もしかするとソイツが引き起こしたかも知れないのか」

「昔の悪魔ってどっちのこと?」

「翼無き者って聞いたことあるかしら?」

「いや、聞いたことないな」

「私も」

「戦争で勝利した悪魔が天界に行った時、魔界に取り残された者も居るの。その者達をそう呼ぶのよ」

「グラシャなんとかもその一体だと?」

「魔界の王も数名は残されたと聞いたわ。バエルと呼ばれる王も残されてその配下であるアスタロトが居てもおかしくないの」

「ん?」

「えーと…アスタロトの配下にはネビロス、その下にグラシャ=ラボラスが居るのよ。もし、今回の事がグラシャ=ラボラスによるモノだったらアスタロトかバエルが絡んでいる事になるわ」

「生粋の悪魔って奴か」


 今までも悪魔とは違う悪魔とやり合ったことは何度もあった。魔物でも悪魔でもない者、それが大昔の悪魔だったのだろう。

 サンダルフォンと呼ばれた悪魔が喚び出した者もそれに当てはまるだろう。

 ジルコートは話を続け、多分の話だが、天界の者に復讐を遂げようと現悪魔と手を組んでる可能性があると。


「少し違うな」

「誰だ!?」


 声のした方に灯りを照らすと、物陰から先程の男が現れた。


「ケテルとは別の勢力と考えてほしい」

「ケテル?」

「魔界の王よ」

「そちらのドラゴンさんは物知りだね」

「その王とは別で動いている連中がいると言うのか?」

「そうだね。ケテルは口減らしを行ってるようだし」

「口減らしだって!?」

「さぁ?悪魔がそう言ってたんだ。それと、ここには何もいないよ。退治したからね」

「退治した?」

「昔の同族を手に掛けるのは忍びなかったが」

「マスター!あれは人じゃない!」


 ジルコートが俺達の前に出て拳を握る。


  「気付くのが遅いよ」

「あれは人の気配だったはず」

「騙されないように鍛えないと、この先主人を守ることも出来ないよ」

「…貴方は何者なの?」

「俺はエーイリー。元悪魔だ」


 ジルコートとエーイリーと名乗る者の会話に驚いている俺とアイ。


「天使なの?」

「今はね」

「ならアドラメレクを知っているか?」


 天使と言うことなので、以前出会った天使の名を言ってみる。


「新星組だね、知ってるよ。もしかして、ザフキエルを捕らえるのに協力してくれた人?」

「協力と言うより共闘だな」

「なんだなんだ、君達のお陰で情報を得ることが出来て助かったよ。有難う」

「礼など。それで、天使がここの悪魔を倒してくれたのか?」

「そうだよ。目に余るモノだったからね」

「それこそ感謝する」

「天使の務めだよ。君達はこれからも悪魔退治するの?」

「そのつもりだが、一つ聞いていいか?」

「どうぞ」

「来るべく日ってなんのことだ?」

「それはまだ答えられない。いずれ自ずと知ることになる。その代わりと言ってはなんだけど、これを贈ろう。」


 空に特大の魔法陣が浮かび上がり、贈り物とやらが現れようとしていた。


「倒せたらだけどね。それじゃあ、俺は帰って寝るから。おやすみぃ」

「おい、待て!」

「サキ!あれ…」

「マスター、あれは私達だけじゃ無理よ」


 そこから現れたのは巨大な翼竜、その者はバハムート、ニーズヘッグに並び、空の監視者ジズの使いとされている翼竜[ケツァルコアトル]と呼ばれ、世界樹の番人としても聞いたことがある。


「あの巨竜を倒せと言うのか!?」

「風神なんて此岸でも居ないと勝てそうにないわよ」

「風神?ケツァルコアトルのことを風神と言うの?」

「ええ。風神竜は大海嘯竜、此岸竜と並ぶ強大な力を持ってるわ」

「やるしかないか」

「アイ、黒はもうイケるわよ」

「ほんと!?よし」


 アイはノワルヴァーデを喚び出し、ジルコートは竜の姿へと戻っていく。


『主。お久しぶり』

「ノワ!大丈夫だった!?」

『ええ。でも喚び出し早々にアレは…』

「黒、頑張ろう」

『銀、やるだけ』


 二竜は飛び立ち、巨竜へと向かっていく。

 二竜は上空の風神竜目掛けてブレスを放った。闇を纏った炎と球体状のブレスは風神竜に触れることなく打ち消される事となるが。続く闇魔法と光魔法も届くことはなかった。

 恐らくは防御魔法を張っているのだろう。この魔法を破らなければ攻撃を通すことが出来ないが、魔法のみならず打撃にも対応しているようで、接近戦を行おうと近付いた二竜は弾き飛ばされてしまった。

 攻めいる二竜に風神竜は動きを見せず、防御魔法を張っただけでその場で停止飛行をしている。


『人間よ。銀竜と黒竜の二体だけか?1度で終わってしまうぞ』


 すると風神竜からの念話が届いた。


「舐められたものね」

『銀、一斉に』


 ジルコート達にも届いたらしく、二竜は再び立ち向かっていく。

 ジルコートは右舷から防御魔法を張って突撃し、ノワルヴァーデは左舷からブレスを放って連繋攻撃を取っていく。

 しかしブレスは弾かれ、防御魔法同士の干渉でジルコートの魔法が破られてしまった。


『その程度とは。そろそろ行くぞ』


 風神竜が動き出し、頭を天へ向け咆哮をあげると、ヤツを中心に周囲を巻き込む風を起こした。多分手加減しているのであろうか、地上は被害が少ない。

 二竜は周囲を回転しながらどんどん吸い寄せられて行き、ヤツに触れる瞬間、今度は逆風を起こされて吹き飛ばされ、その衝撃波は2階建ての家々を崩してしまった。


『手を抜いたのだが、まぁ人間は居らぬから良いか』


「あのドラゴン、強すぎるよ」

「ジルとノワだけじゃ無理だな」

「かといって私達が加わった所であの防壁魔法を抜けると思えないし」

「竜の珠、使うか」

「それしかないよね」


 ジルコートとノワルヴァーデは体勢を立て直したようだが、また同じことの繰り返しになってしまう。

 俺達は竜の珠を使おうと思ったが、問題は何を使うかだ。雷竜、雲竜の時は一度きりだったので、持っているヤツもそうだろう。そしてなにより、里霧竜以外何が出てくるか分からないのだ。

 意を決して選んだのが鉄色の珠、それぞれ1個を手にして空へと投げると、2つの珠から光りが放たれた。

 その光りはあっという間に竜の姿へと変えた。


「機械?」

「人工的に造り出した竜と言うところか」


 その竜は金属の身体と翼を持つ西竜型。二体は多少の違いがあるが、殆ど同じ姿をしている。

 明るい所で見れば細部の違いが解るだろうが。


「私を喚んだのは貴方か?」


 そのうちの一体が話しかけてきた。


「そうだ。あのデカイ竜を倒して欲しい」

「了解した。ターゲット確認、排除する。行くぞ03」

「ゴォォォォォォッ!」


 もう一体は咆哮を上げ、二体は風神竜へと飛び立った。


「ジル!ノワ!二体の機械竜を差し向けたぞ!」

「『了解』」


 4対1の空中戦が始まろうとしている。


  『ほう、カラクリとは珍しい』


 四竜は2組になって風神竜を取り囲んで攻撃を行った。

 機械竜の二体は口からブレスのようなモノを吐き、ジルコートとノワルヴァーデは接近戦を仕掛けた。

 魔法攻撃を弾いていた結界が機械竜の攻撃により破られ、接近していった二竜の爪が通るかと思われたが、物理防御も張っていたようでその攻撃は通らず、反撃にと風神竜が風を纏い解き放つと、暴風が四竜を襲うも、機械竜の二体は微動だにしなかった。


『コヤツ等、何故効かぬのだ?』

「それは答えられない」

『喋れるとはな』

「貴方のデータはプログラムにあった。風神竜またはケツァルコアトル。私と03、二機の勝率57%、銀竜、黒竜を含めた四機での勝率は100%。敗北はない」

『ホッホッ!やってみるがよい』


 次に機械竜の二体は接近戦へと移行した。ナイフのような爪が伸びて斬りかかる。

 そこへジルコートとノワルヴァーデも合流し、四竜で攻めていると遂に物理防御の壁も破り、それぞれの爪が鱗を切り裂いた。


「本体はさほど防御力が高くないと見えるな」

「勝てるかな?」

「勝って欲しいが」


 すると、風神竜はその大きな腕を振るって四竜を遠ざけると、ブレスを放ち各竜に浴びせた。


『黒!私の後ろに!』


 ジルコートが念話で伝えると、自信に防御魔法を張ってノワルヴァーデを守り、機械竜の二体は魔法のみならずブレスすらも弾いていた。


「荷電粒子ビーム砲スタンバイ。03、同時攻撃」


 二体の口から砲身が伸びて光りを溜め始めると、砲身から高エネルギー砲を同時に放った。

 先程のブレスと異なり、威力は格段に高く、エネルギー砲の攻撃を受けた風神竜は暴煙に包まれ、地上へと落下してくる。

 更に一体の機械竜からはミサイル弾が撃ち出され、その弾は落下する風神竜を追いかけて直撃すると爆発を引き起こし追撃を行った。

 もう一体はその場で停止しており動けない様子だ。


「排熱処理が間に合わない。改良出来れば良いのだが、自己修正機能は正常か?」

「ゴォォッ」

「ならば良しとしよう」


 燃えながら落ちてきた風神竜は地面に叩きつけられる瞬間、体勢を戻して着地し、俺とアイの方を見る。


『最後の余興だ』


 そう言うと、俺達に向かってブレスを撃ってきた。

 俺はアイを掴んで転移しようとすると、俺達の前にジルコートとノワルヴァーデが舞い降りて防壁を張ってそのブレスを防いでくれた。


『ホッホッホッ!良かろう。その覚悟気に入った!』

「なんの話?」

『風神、試してたの?』

『ワシの力を渡そう。時が来たとき使うが良い』


 ジルコート達が不思議そうにしていると、風神竜から俺へと珠が飛ばされてきた。風を閉じ込めたような薄い緑色の珠を俺達に渡すと、先の言葉だけを言い残し風神竜は夜空へ消えていった。


「マスター。戦闘終了で良いのか?」

「ああ、助かったよ。ってかマスターじゃないだろ」

「これからも共に行く。私達の珠を解いた者がマスターだ。契約ではないがな」

「そうなんだ。ならこれからも宜しくな」

「あっちの子は動かないけど大丈夫なの?」

「宜しく。03は残り17でリブートする。」

「大丈夫ってことね」

「お前達はなんて呼んだらいい?」

「私はクロックドラゴンマークⅡもしくは06と呼ばれていた。03はクロックドラゴン」

「マークⅡか良いな。俺はサキ、こっちがアイ、銀竜がジルコートで黒竜がノワルヴァーデだ」

「了解した。名称の入力を完了した。ではマスター、私達はこれで」

「ありがとな」


 降りてきた03と共に珠へと戻った機械竜達。どうやらこの二体は珠から解き放っても消えることはなく、スタミナも消費しないで喚び出せるとはかなり有り難い物らしい。


「マスター、良いの持ってるね」

『機械竜。強かった』

「これからアイツ等も宜しくな」

「ノワの弟だよ」

『あの機械、念話出来ないし喋れない』

「あ、ああーそうなんだ…でも言葉は通じるよ」

「そうね、もう一体は喋れるから黒の意見は代理してもらおう」

『ん、そうする』

「よし、何処か借りて休もうぜ。ジル、ノワ、ありがとな」

「そうしよう、ありがとね」

「『うん』」


 多分既に日は回っていると思うが、朝まで寝るために部屋を借りることにした。






  [風神竜]

 ケツァルコアトル。

 空の監視者の使い。ジズの子供とされている文献もあるが、真実には至っていない。

 全長は20メーター程の巨大さを誇る。

 


  [機械竜・機械新竜]

 クロックドラゴンとクロックドラゴンマークⅡ。

 4メーターの西竜型で全身が金属で出来ている。動力は不明。

 喋れる方はマークⅡだけだが、機械竜の方も言葉は通じる。


 装甲には魔法反射のコーティングがされており、装甲自体も極厚。

 口部からは最大出力で荷電粒子ビーム砲を放てるが機能停止に陥ってしまう。それを克服させたのがマークⅡである。

 武装は、腕部ヒートクロー、翼部ホーミング式マイクロミサイル、口部ファング&重装砲等がある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ