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46話 紋章

 


  「その状態で銀竜を喚んだか。長くは持たないだろうに」


 ジルコートを送り出した俺に兄貴が話しかけてきた。


「舐めるなよ。お前を倒すまで俺は根性を見せるさ」

「なら今度こそ終わりにしてやろう」


 青竜が兄貴へ飛び掛かろうというその瞬間、魔法陣から現れた者によって、空へと押し返された。


「黄昏竜までもか…」

「あれが最後だと思いたいね」

「ああ。ジルは…あれと互角か」

「サキさん大丈夫なの?」

「中々にしんどいが。アイツに出来て俺に出来ないはずはない」


 黄昏竜と呼ばれる竜は青竜の倍の体格だが押されたのは初めだけで、今はその巨体を止め、二竜は手を絡ませ力比べをしているかのように感じさせる。

 しばし拮抗していたが青竜が押し始めると、黄昏竜はブレスを放って全身へと浴びせられるも、掴んでいた手を離して反撃のブレスを胴体へ撃つと、その勢いに飲まれた黄昏竜を後方へと遠ざけた。青竜は急激に距離を詰め、そのまま顔面へと突進を繰り出すと、よろけた黄昏竜に先程放ったブレスよりも大きなブレスを食らわせる。


『やりおるの、小さき同族よ』

『貴様がデカいだけであろう』


 顔が焼けただれていても気にする様子はない黄昏竜は腕を振り下ろすも避けられ、背後に回った青竜は背中へと爪を突き立て、そのまま上へと引き裂いた。

 1度背後を取られた黄昏竜に攻撃の手段はなく、青竜に成すがままにされてとうとう翼を折られ、飛ぶことが困難となった。


『大人しくしていろ』


 落ちて行く黄昏竜を他所に青竜はアーシェの兄へ向かっていく。


「黄昏竜でもダメだったか」

『もう逃げられんぞ!』


 その爪撃は兄貴を捉えたように見えたが、空へと転移して新たに召喚獣を喚びその背に股がる。


「俺を追い詰めるとはな!蒼天竜は返そう。その代わり…」


 蒼天竜の腕に浮かんだ紋章が消え、契約が破棄されたことを証明させる。

 しかし青竜はやったと思われた黄昏竜に捕まり、兄貴を乗せた者が近寄ってくる。


「この竜のこと知ってるだろ?さぁお前は俺の物だ」


「あのドラゴンは!ルナ、ブルードラゴンを守って」


 ルナは青竜へ魔法防御を掛けようとするも、その力を行使できず、青竜も動くことが出来なくなっている。

 遂にはその竜を媒体に無理矢理召喚獣契約が行われてしまった。


『おのれ…』


 腕に紋章が刻まれると青竜は粒子と化し消えて行く。


「あの竜はなんなんだ!?」

「プレッジドラゴンよ、あれで無理矢理契約させられているんだわ」

「なんてことを!酷すぎるよ」


「遂に青竜を手に入れた。15年位掛かったな。お前達も備えておいたほうがいいぞ」

「待て!ジル、頼む!」「ダメ!」

「アーシェ、どうした?」

「近付いたらダメなの」

「いい判断だ。また相手してやるよ」


「兄さん…」


 アーシェの兄貴は黄昏竜を解除し、小柄な竜と共に飛び去った。


  「マスター。この子どうするの?」


 ジルコートが話しかけてきた。

 この子とは蒼天竜の事であり、契約破棄した為に自由となったのだ。人型の二人共、顔面は痣だらけで苦笑てしまう。


「蒼天竜、君はどうしたいんだ?」

「私は青を追いたい。青がそうしてくれたように、今度は私の番」

「それなら、私と契約しない?私も兄を追ってるの。途中寄り道はあるけどね」

「貴女なら良いわ。一人ではどうすることも出来ないもの」

「良かったわ。ルナはいい?」


 アーシェに問いかけられてルナは頷く。


「なら決まりね。宜しくね、えーと」

「ニエーバ」

「ニエーバ、良い名前だわ」


 真名を聞くと胸元に契約の紋章が浮かび上がり、消えると契約が完了した。


「アーシェのは胸元なんだ。サキは右手の甲だよね」

「そうだな」


 契約主により、紋章が刻まれる場所はまちまちで、アイの場合は左太股に浮かび上がる。


「聞きたいんだけど、兄さんは遺跡で何かと契約したのかしら?」

「いいえ、入れなかった」

「それは何故?」

「魔物が巣くっていたわ。あの人、あーいう所に適した者と契約していないみたい」

「そうだったのね」

「だが、召喚獣もあれだけとは限らない」

「ニエーバは知ってる?」

「後は…」


 ニエーバの知る限りだけでもアーシェの兄貴はかなりの数を有していた事に俺達は驚いた。


「そんなに…」

「ドラゴンマスターにでもなるつもりか」

「兄は20年も前から集めていたわ」

「来るべき日とか行ってたよね?なんのことなの?」

「それは私にも解らない」

「アーシェは知ってる?」

「ごめんなさい。私も聞かされてないわ」

「そのことは後にして、一先ず帰ろうぜ。ジルさんや、もう限界だ」

「フフッ。マスター、お疲れ様」

「ジルもありがとな」

「蒼、良かったね」

「銀、ありがとう」


 ジルコートとニエーバ、ルナを解除して、街に戻る為に馬を探すのだが。


「いないんだけど」

「俺、もう歩けない」

「サキさん年ね」

「サキはおじさんだもん」

「お前らなぁ」


 どうやら馬は先の戦闘で何処かに逃げてしまったようだ。その代わりに魔物や魔獣の姿もない。


「仕方ない。少し休んで考えよう。」

「そうね」

「二人共お疲れ様」

「アイさんもでしょ」

「私は召喚してないし、役に立ってないよ」

「そんなことないわ。アイさんは私達を守ってくれていたもの。」

「そうだぞ。アイは聖騎士なんだからな。アイが居なかったら俺達は消し炭になってたよ」

「そうかなぁ」

「そうだ。ほら、飯にするぞ」




「なぁ、俺は遺跡に行ってみたいんだがどうかな?」

「良いんじゃない?行こうよ」

「魔物が巣くってるって言ってたわよ」

「冒険者なら入りたくなるんだよなぁ」

「そうそう。アーシェのお兄さん入ってないしね、何かあるかも」

「アーシェはどうする?」

「私、遺跡って怖いのよ…昔そんな場所で悪魔と過ごしてたから…」

「そうか」

「私は兄さんの言ってた来るべき日について調べるわ。ここで一旦お別れね」

「そうだね。ならさ次の合流地決めない?」

「良いわね」


 地図を取り出して、この国の中心に位置する街で合流することとなった。


「アーシェ、無理するなよ」

「ええ、サキさん、アイさん、ありがとう」

「またその街でね。気を付けてね」


 アーシェは取り合えず街に戻って馬のことを伝えてくれるそうだ。

 俺達は休息を取り、遺跡へと向かった。


 アーシェと別れた俺とアイは山の麓にある遺跡を目指したものの、山は近くに見えているのに歩きだと1日以上かかってしまう。馬がないのでしょうがないと諦め、トボトボと歩いていた。


「あの遺跡に機械兵がいたらさ、私が契約しようかな」

「いいんじゃないか?俺はその方が助かるな」

「お宝だったら山分けね」

「そうだな。何も無しは勘弁願いたいが」


 次の日の夕方、俺達は遺跡の入口に辿り着いた。麓にぽっかりと空いた洞窟の奥にその扉はあった。

 金属で出来た扉は錆びてはいるが壊れてる箇所は見受けられず、引いてみると簡単に開いた。


「開いたぞ」

「うん。うわぁ、明るい」


 扉を開けるとそこには空間が広がっており、天井は狭いが何処までも奥行きがある。更にその天井には灯りが灯っていた。


「アーシェのお兄さんが灯したのかな?」

「どうだろう。もしかしたらここの設備が生きてるのかもな」

「魔物がいるって言ってたわりにはなんも居なくない?」

「だな。油断は出来ないが」


 中に入った俺達は取り合えず端まで行こうということで歩き出した。

 すると、前の方に円柱の筒がポツンと置いてあり近付いてみる。


「何これ?」

「さぁ。中に入れるぞ」

「え、怖くない?」


 その筒は人が何人か入れる程の大きさで、中には1、2、3の数字と△、▽のスイッチが付いている。


「これ動きそうだぞ」

「押してみる?」

「じゃあアイも中に入ってこい」

「う、うん」


 俺は1のスイッチを押したが何も起こらない。続いて2、3と押しても何もなかった。


「壊れてるの?」

「でもスイッチは光ってるぞ」

「これは?」


 と、アイが△のスイッチを押すと扉が閉まり、動き始めた。


「う、動いた!」

「アイ、やるな」

「感心してる場合じゃないでしょ!何処行くのこれ?」

「上がってる感じだな」


 その機械が止まり、扉が開いた先にはライフルを持った機械人形が四機待ち構えていた。


「魔物じゃないじゃん!あの機械武装してるよ」

「これ、出たら撃たれるんじゃね?」

「転移して抜けちゃおうよ」

「いや、魔法が使えない。アイも感じるだろ?」

「あ、確かに。だからあの人も諦めたのね」

「撃って来るとは限らん。アイは中に居てくれ」

「待って!せめて盾持ってってよ」

「なら喚び出すからそれはアイが持ってな」


 俺は片手剣と盾を出し、扉の外へ1歩踏み出した。


  「登録コードをお願いします」


 並んだ機械人形一機が前に出てきてそう話しかけてきた。


「登録コード?」

「登録コードとは貴方様の所有する6桁の番号のことです。登録コードをお願いします」


 俺はアイの方を振り向くと、首を横に振っていた。


「忘れたのだがどうすればいい?」

「個人情報を照合致します。こちらに顔を向けて下さい。」


 別の機械人形が前に出て顔を向けろと言ってソイツを顔部分を見つめると。


「スキャン開始します。… … …該当なし。」

「申し訳ありませんがお引き取り願います。」

「中に入りたいんだが」

「申し訳ありませんがお引き取り願います。」


 アイを見ると、今度は頷いた。


「断る」


 と、前に出た二機の首を横から薙ぎ払って切り落とすと、後ろの二機がライフルを構えた。


「警告。侵入者有り。侵入者有り。セキュリティギアをオートで機動」


 構えた瞬間、一機の頭部に片手剣を投げ、突き刺さると発砲しながら後ろへ倒れていく。

 もう一機の機械人形が放つ弾を盾で防ぎながら接近して盾を押し付け、もう1本の片手剣で頭部を貫いき全機沈黙させた。


「ここの警護兵ってところか」

「貴重な機械人形を壊しちゃって」

「しょうがないだろ。ん?前から何かくるぞ」


 前方からキュルキュルと音を立て機械兵が近付いてきた。その前には機械人形が二機走っている。

 俺は剣と盾をしまって銃を取り出すと、実弾であるAP弾を装填して二機の機械人形へと放ち、その二機の頭部を貫き動きを止めると、後ろの履帯の付いた機械兵に轢かれてバラバラにされてしまった。


 即座に排莢してリロードし、機械兵の頭部に射つが2発とも弾かれてしまう。


「やべぇ、アイツ硬い!」

「サキ危ない!」


 リロードしようとアイテムボックスに目をやっていると、ヤツの両肩に付いた砲身が俺を捉えて撃ってきた。

 それを防ごうとアイが前に出て、砲弾 を防いでくれた。


「大丈夫か!?」

「なんとか。加護と盾の魔石のお陰でね」

「アイツを止める」


 頭部が効かないのなら今度は履帯へ向けて2発放つと、履帯が外れてその場に取り残され、転輪だけになるとそこを軸に回転して前へと進めなくなっている。

 その間にソイツに近付き、走行を止めた機械兵も砲身を此方に向けたその時、砲身の内部へと射ち込み、もう片側にはアイが飛んで砲身に盾を押し付けた。

 そして弾が撃ち出されると内部から爆発が起こり、両肩から広がって前面部は砕け、機能を停止した。


「アイ!」


 飛ばされたアイに駆け寄った。


「イテテッ。大丈夫、お尻打っただけ」

「良かった。あ」

「なに?」

「真ん中の石割れてる」

「ほんとだ。後で換えないと」

「換えるまで盾に魔力込められないな」

「そうだね。まぁ機械人形だけなら加護もあるし十分だけどね」


 魔法が使えないのが辛い所に盾の魔石も割れてしまい、守りが薄くなってしまった。

 今後あのような機械兵が出てきたら厳しい状況になりかねない。


「もう無茶は出来ないな」

「サキ任せになっちゃうけど、ごめん」

「後ろは守ってくれよ」

「そこは任されましょう」


 アイの手を取り起き上がらせて俺達はこの階を探索し始める。






  [黄昏竜]

 トワイライトドラゴン。

 上級種。西竜の中でも大型で12メーターの巨体を持ち、赤と黒の鱗で覆われている。



[誓約竜]

 プレッジドラゴン。

 特殊な能力を持つ上級種。白い鱗の西竜で3メーターと小型。


 

  [機械人形]

 ギアドールと呼ばれる大昔に造られた人型の機械。

 遺跡のあちこちで見かけるが殆どが壊れて動かない。極稀に動き回っているのを見ることが出来る。



  [CT-61 セキュリティギア]

 全長3メーター、全高1,8メーター

 武装:肩部72㎜施条砲×2、7,6㎜対人機銃×4


 大昔に造られたCQB型車輌。正面中央に頭部が有り、両脇に上がった肩部が特徴。主砲に施条砲2門が装備されている。

 型式のCTは履帯の意味。

 これの建物外仕様は大型で主砲も105㎜となり、リアクティブアーマーが標準装備になっている。

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