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3話 岩竜

 


 ミルトの街を後にして、次に向かったのはアーレンと言う荒野に囲まれた街だった。

 戦火の中にあるドルンには行く気になれず、山の反対に位置する方角をただひたすら歩いていた。


「この荒野って魔物が多いな」

「ほんと!街道歩いてるだけなのになんでこんなに!っいるのよ」


 ゼリータイプの魔物と戦いながら愚痴を洩らすアイ。


「しかも剣が効きづらいのばかりだな」

「このゼリーよりさっきのアーマーザウルスのほうがまだマシ!」


 街を出て二日、これで6回目となる魔物の襲撃。

 リザードタイプのアーマーザウルス、ロックハザードと呼ばれるのゴーレムタイプ、雷属性を纏ったゼリータイプのエレクゼリーと斬撃が通し難い連中ばかりで嫌になる。


「この辺は冒険者も嫌うと聞いた。魔物が多いのは狩られていないと言うことだろうが」

「こんな所に街造るなんて」

「昔はこんなんじゃなかったんだろ」

「そぉだろうけどさぁ、獣タイプ見ないじゃん。何食べてんのって感じ」

「もしかしたらこのゼリーかもよ」

「私は食べないからね!」


 っとようやく片付いた。アイは比較的多種な魔法が使えるが、このようなメンバーがいないパーティだと辛いだろう。

 街道を進んで行くと一つの看板が目に入り、確認すると岩竜討伐願いとのことだった。

 東に位置する岩山に棲み着いてるが為、そこに居た魔物達が住処を奪われて下りてきたことにより被害が増えているとのことだった。


「岩竜かぁ、行ってみるか?」

「聞かなくても決まってるでしょ」

「しかし岩竜と言えども他の魔物と共存できるだろうに」

「そーなの?」

「え?」

「へ?」

「…竜とて自然の一つだ。暴れたとしても他を追いやるようなことはしないだろう。余程の大食らいか岩山が小さいかだな」

「でも岩山ってあれでしょ?結構デカそうだけど」

「だよなぁ、取り合えず行ってみるか」


 疑問に思いつつも俺達は岩山を目指すことにした。

  岩山を目指してる間も結構な数の魔物と遭遇し、登っている最中も目前に動く山があった。

 逆光で細目で見てもシルエットしか分からないが岩竜ではない人型でしかもデカい、昨日のロックハザードと比べて二回り以上の4メーターはくだらないだろう。


「目についてる?」

「ああ、多分ロックマザーだ」

「ハザードが居たからもしかしてと思ったけどね」

「あれを放置してはハザードが殖える。倒せるなら倒したい」

「あの硬さ嫌になるのよね」

「俺も思うがロック系のゴーレムは大人しくない。討伐対象と認定されている」

「あいつらってモルタルの味を覚えたら街を食い漁るんでしょ?」

「ああ、配合しないと出来ないからな。ほら行くぞ」


 俺達を視界に入れたロックマザーは滑るように斜面を走ってくる。太陽を正面にしない角度、真横へ走り初撃をかわす。

 その一撃は山を揺らし地面に窪みを作った。


「アイ!水魔法で牽制を頼む!」

「りょーかい!打つよ!ウォーターランス!」


 水の槍がロックマザーを直撃するがよろける位でダメージはそうでもない感じがする。それでも一番有効な水系魔法で攻撃するのが善良と言える。

 俺はバスターソードを喚びだして斬りかかるが、やはりその硬さに弾かれる。それでも次の攻撃が来るまで斬り続けるとロックマザーの目が光った。


「土魔法が来る!アイ!」

「りょーかい!」


 アイが前に出て防御魔法[フルカバー]を掛けると同時に地面から複数の針が襲いかかる。


「これほどの力とはっ」

「でもこれで終わりじゃない?もう魔法は打てないはずよ」

「魔法はな。助かったぞ」


 魔力の少ないゴーレムは一度の魔法で魔力を空にするのが殆どで、もう行使出来ないと踏んだ俺達は、再びアイが一歩下がった瞬間に俺はロックマザーを斬る。ダメージは少ないが着実に与えられる。

 何度か腕を降り下ろされたり薙ぎ払われたりしたが直撃は回避し、此方の攻撃のみを当てる。


「その遅さが命取りだ!」


 ロックマザーの腕を踏み台にして、その巨像の上から渾身の一撃を降り下ろしと、その頭は砕けて後方へと倒れていった。

 こういう相手にはちょこちょこダメージを溜めて行けばいいだけだが、非常に疲れるし腕が痛い、ダメージはないがスタミナが消費されるから一介の冒険者は相手にしたがらないので数が殖える。これがゴーレムタイプが嫌われる理由である。


「お疲れ」

「サキもね。ほんと疲れる!」

「この後に岩竜が待ってると考えると苦だな」

「ほんと。ここ広そうだし日も暮れてきたから一晩休もうよ」

「そうしようか。ゴーレムの上にテント広げるのもいいな」

「嫌!あそこの平んとこに行こ!」

「冗談通じないな」

「疲れてんだから冗談言ってないで早く野営の準備しなさいよ」

「ハイハイ」


 今日はここまでにすることにした。ロックマザーも岩竜を表体が岩で被われている為、連戦など出来る状態ではない。

 寝ている間に岩竜が近付いてきても足音で分かるだろうし、流石にもうロックマザークラスの魔物は岩竜しかいないと信じたい。


  早朝、俺達は岩竜が居ると思われる頂上を見渡してした。

 そこで見つけたのが岩山の上に開いた横穴だ、近くまで歩いて行くと入り口の所に魔法陣が描かれていた。

 その横穴も光が奥まで届いており深さもない。


「魔法陣?でかくない?」

「だな」

「ロックドラゴンいないし魔法陣はあるしでなんなの此所?」

「分からない。ロックマザーを発見したヤツが岩竜と思ったのか」

「ドラゴンは人型になれるの多いもんね」

「だが、この魔法陣…召喚魔法陣に似てるな。転移なら人が立てるだけの大きさでいいだろうし」

「確かに…」


 何故ここに魔法陣があるか理解出来ないが、取り合えず横穴を覗いて帰ろうと思って横穴に足を入れた時、前方から赤と黒が入り雑じった光が俺達の目を眩ませた。


「うっ」

「なに!?サキ大丈夫!?」

「ああ、それより」


 と言いながら後ろを振り向いた。


「魔法陣が」


 魔法陣が光り、中から巨大な岩が現れ俺を弾き飛ばした。


「アガッ!」

「サキ!!」


 飛ばされた俺を見てアイは即座に身を引き俺の元へ駆け寄ってきた。

 その魔法陣から現れたのは岩竜なんて優しいもんじゃない。更に巨大な岩竜の姿だった。


「ギガロックドラゴン」


 岩竜なんて子供に見えるほどの大きさの巨岩竜だった。


「あんなん俺達だけでどーにかなる竜じゃねーぞ」

「ここは一旦退きましょ!」


 だが巨岩竜は此方をすでに敵認定してるらしく、魔法を撃とうとしている。


「チッ!あの一撃だけでも防ぐぞ!そして逃げる!」

「りょーかい!」


 俺とアイは盾を構えた。が、その魔法はメテオ…空から降り注ぐ無数の石礫、俺ではガード仕切れず盾が弾かれ仕方なしに剣を利用し避けはじめた。

 その動作に夢中になっており巨岩竜の腕が振りかざされるのが見えていなかった。


「サキ!!腕がっ!」


 そしてもろに直撃し後方へと弾かれた。


 あぁ…死んだな

 …

 …

 …

 …

 此所は?俺は死んだのか?


 辺り一面黒く染まっていた。


 そうか…目を閉じているだけか


 それに気付くとうっすらと片目を開け、周りを確認した。


 見覚えのある景色だ。これは確か、、、お?


 その目には3人の人間と奥にいる巨大な何かが映った。


 まさか!?あぁ、走馬灯ってやつか


 そこにはまだ冒険者に成り立ての俺とアイ、そして師匠が居た。夢現の中、若い俺が叫ぶのが聞こえた。



「師匠!無理です!!逃げましょう」

「そうですよ!勝てるはずありません!」

「此所で止めなければ更に被害が拡大する。私がコイツの足を止めてる間お前達は逃げろ!」

「師匠を置いてくなんて出来ません!」

「我が儘弟子が!最後くらい私の言うことを聞きなさい!」

「嫌です!なら俺も戦います!」

「師匠一人残したくないです」

「お前達にはほんと困らされたよ」


 クスっと笑う師匠は馬型の召喚獣[メルカバー]を降臨させると、ソイツは嫌がる俺とアイを口で放り投げ無理矢理背中に乗せ「いきなさい」の一言。

 そして「師匠!!」と叫ぶ俺達を乗せて走り出したメルカバーは疾走した。


 ふとビジョンが移り変わった。


 平原に立つメルカバーが姿を消し、立っていた場所には1本の剣が落ちている。


「これは師匠の」


 若き俺はそう呟いた。


「必ず敵を撃ちます。俺から大事な者を2度も奪ったアイツらを許すことなど出来ない!!」


 そう啖呵を切ってその剣を握りしめた。

 …

 …

 …

 そうだ、俺はまだ死ねない。故郷を奪い、師匠を殺したアイツらを皆殺しにするまで終われない!!

 辺りが光りに包まれ眩しさのあまり目を閉じると、誰かが俺の名前を呼んでるのが聞こえてきた。






  [ロックマザー]

 岩のゴーレムタイプ。

 人型であるが、小柄なロックハザードや人間と比べると巨人の如し存在。

 マザーと呼ばれる所以はロックハザードを自らが生み出しているとされるが、ロックハザードが進化した姿というのが一番しっくりくる。


  [巨岩竜]

 中級竜、またギガロックドラゴンと呼ばれる。

 ロックドラゴンよりも2倍ほど大きく全長は6メーター、魔力も有している。魔法よりその巨体と硬さを生かした肉弾戦を得意とする。

 中級種とされるが、その防御力は上級ドラゴンをも凌ぐほど頑丈でそれ故の打撃も強力である。

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