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2話 緑竜

 


「見えてきました」

「やっと着いたぁ」


 林を抜けた先、魔物避けの壁が周りを取り囲んでいる街[ミルト]。


 入門所でギルドカードを提示してようやく街中に入る。


「そう言えば国境で戦争をしてると聞いたのでお二人とも気をつけて下さい。私が気をつけてなんて言うのも変ですが」

「そんなことないよ、ありがとー」

「此方こそ、本当に有難うございました。では旅のご無事を祈っています。」


 俺達は商人と別れギルドを目指した。

 この街に来た理由は前の街のギルドからこの街のギルドへ行ってほしいとのことだった。


「この街ってほんと穏やかだよね」

「そうだな それ故に高ランクの冒険者がいないんだろ」

「でもドラゴンを見たって言うならもっと慌ただしく…こう何て言うか」

「まぁ皆が見てる訳じゃないしギルド上層部しか話が回ってないのかもな」

「緊急って訳じゃないもんね。っと着いたよ」


 ギルドの外観はこの穏やかな街に相応しい建物であまり大きくもない。中に入っても予想通りで平穏な空気が流れていた。

 受付でギルドカードを提示しながら。


  「ナラルディのギルドからここを訪ねてくれと言われたんですが」

「サキさんとアイさんですね、少々お待ちください」


「ねぇ、私オマケみたいな感じだったよね?」

「いやいや気のせいだろ。俺達パーティなんだから」

「でもランク違うよ」

「俺にはランクなんてどーでもいい。大切なのは自分の考え方のほうだ」

「でも私は気になる!」

「っても俺だって2年前にSに昇進したんだぞ?それを考えるとアイも後2年ってとこじゃん?」

「んー冒険歴は同じなのになぁ」

「15年近くだもんなー 歳取ったわけだよ」


 などと話していると。


「お待たせしました、ギルドマスターのマーノと言います」

「サキと言います。此方は相方のアイ」

「宜しくお願いします」

「宜しくお願いします。ではそちらの机にどうぞ」


 椅子に座り、本題の「竜の姿を目撃した」って話の内容を語り始めた。


  翠の鱗を持った竜は見たことありますか?」

「いや、緑竜は今だないですね。もしや今回はソイツが?」

「はい、不確定情報ですが。」

「それはいつ何処でなんです?」

「5日前、冒険者パーティがヴァラノーム山を越えてるとき頭上を飛んでいたと聞きました。その方向はドルンでしょう」

「今ドルンの国境線は戦争の真っ只中と聞きましたが」

「ええ、山の此方側はこんなにも穏やかだというのに、ドルンは隣国と接してますから仕方ないと言えば仕方ないですが。そんな危険な所へ向かわせるのは大変忍びないですが、引き受けて貰ってはくれませんか?」

「構いませんよ。冒険者に国境は関係ありませんからね」

「おお!有難うございます!報酬は確認でも討伐でも上乗せさせて頂きます。討伐不要と判断された場合、こちらからも調査部隊を送りたいのですが、如何せん戦場付近となるとどうしても」

「それでしたらギルド所有のチェドックと共に向かいましょう」


 因みにチェドックとは監視や偵察、調査と隠密能力に長ける両手の平に乗るくらい小さい犬の事。

 この子を連れて行けば“今後”が楽になるので申し出てるとすぐに了承を貰えた。


「依頼執行日は翌朝、ドルン街へ出発します」

「はい、何とぞ宜しくお願いします。」


 ギルドから預かったチェドックの[シンベエ]

 と宿に向かい一晩過ごした。



  『大いなる翼が奏でし二重奏と伴に、降臨せよ銀竜 ジルコート!』


 翌朝、俺達は目的地へ行くため街の外へ行き召喚口上を述べる。

 空に魔法陣が描かれ、4枚の翼を拡げた銀色に輝くジルコートが降り立った。



「ジル久しぶり、元気してた?」

「えぇ アイも元気そうね」

「私はまだ若いからね」

「私だって竜種の中じゃ若いわ」

「いやー私が比べてるのはジルの契約者とだよ」

「おい!俺関係ないだろ!ってかジルに山越えと一戦を頼みたい。詳細は移動中に話す」

「竜ね…良いわよ行きましょ」

「ジルの背中って心地いいんだよ。シンベエもきっと気に入るよ!」

「クゥン」


 シンベエはアイになついてるようで何よりだが俺の所にも来てほしい。


 俺達を乗せたジルコートは山を越えた先に目についたのが炎の柱である。国境が燃え広がっており、地上付近には大きな何かが居る。


「あれがグリーンドラゴン?」

「そうだろうな。聞いた話の通り東方龍型だ」


 アイと話しているとジルが。


「東方龍は比較的大人しいとされていると聞いたけど、あれでは完全に…」

「あぁ、火柱の下は消し墨だろうな。この時点で討伐対象だ!」

「私とシンベエは燃えた所で降ろして!」

「俺もそこで降りる。あそこまで頼んだ」


 緑竜が此方を見ているが動こうとしない。そのうち緑竜の目と鼻の先まで来て、俺達は地上に降りた。


『何故誇り高き竜が人間に仕えている!!』

「誰でも言い訳じゃないわ」

『それでも人間には変わりあるまい!』

「貴方こそどうして人間を敵対視してるの?」

『我は彼の者の言葉を聞いた。だが我なりに思うとこがあったので少し時間を費やしていた。だがどうだ!!上を飛んでいる我には気付かず人間共は同じ種族同士争っているではないか!!我は何日もこの地を飛び回っていたというのに!!我も愛想が尽きたわ!!』

「人間というのはそーいうもんだ」

『人間である貴様が何を抜かすか!』

「人間であるから人間の脅威となるお前を退治しなければならない」

『ハッ!片腹痛いわ。ならば我を止めてみせるといい!行くぞ!!』


 緑竜は牙も剥き出しにして攻撃姿勢に移る。


「来るぞジル!頼んだ!アイ!守りは任せたぞ!」


  銀竜と緑竜の戦いが始まった。

 空を駆ける2竜に飛べない俺達は基本見ているだけ。

 ハンドガンで牽制しているがあくまで牽制である。俺の魔力程度じゃダメージなんて一桁…ダメージと言えない量かも知れない。

 時折、緑竜のブレスが地上を襲うが、此方を狙っての攻撃ではないのでアイと黒竜の加護によりシールドで充分防げる。


『我の邪魔をすると言うことは彼の者の邪魔をするというと同義!』

「彼の者って?」

『悪魔種だ。人間の味方をする貴様にも脅威となろう!』

「悪魔と手を組んだの?それこそ竜種の恥さらしじゃない」

『ほざけ!どの道貴様はいや貴様等は我の糧となる』


 ジルコートの動きが不安定になってきた。隙を見てのブレス攻撃で確実にダメージを与えていたが、その隙を付くことも出来なくなってきている。動揺している。

 その時ジルから念話が送られてきた。


『緑竜は悪魔と組んでる。上級種と組めるなんてその悪魔も』

『そうか、わかった。だが今は倒すことに専念してくれ』


 と警戒を促したが緑竜の牙がジルコートの首元に食らいついた。だがその牙は鱗を貫通することが出来なかったらしく逆に腕で叩き落とされた。


「マスター!」


「りょーかいだ『悠久の時告げる光に誘われ 顕現せよ!シュヴェーラ!』


 口上を唱えた俺の背後に大小様々な8本の剣が並び前方には盾が構えた。

 落ちてくる緑竜に8本の剣を解き放って突き刺すが、まだ戦意が消えていない。


『人間が、我を斬れるとおも』


 一番大きなバスターソードを呼び戻し、俺は緑竜の額目掛けて降り下ろした。


「ガアァァァァァッ!!」

「終わりなんだよ、これで!」


 全ての剣を空に舞わせ緑竜の肉体を斬り裂いていった。


「ジル!」

「グォォォッ!」


 ジルコートの咆哮の後、一直線のブレスが放たれ緑竜を貫く。


『…我は…我』


 力尽きた緑竜の長い胴体は地面に音を立て横たり、二度と起き上がることはなかった。


「悪いが人類の為だ」


 討伐完了の証拠として頭部を切り落としアイテムボックスへと入れ、ジルコートとアイに礼を言い街へ戻る準備を始めると。


「銀翼だ」「銀翼の覇軍」「間違いない!」


 焼け残ったと言っては失礼だが、被害を受けなかった両国の兵士達が各々と呟いているが、緑竜には人類どうのと語ったけど本音を言うと、戦争なんかしている連中などどうでも良かった。


「さぁジル、疲れてるとこ悪いが送って行けるだけの力はあるか?」

「もちろん」


 俺達は再びジルコートの背中に乗りミルトのギルドへ目指す。ドルンにもギルドはあるが依頼を受けてた訳ではないし、ミルトに伝えればこの街にも伝わるだろう。


「シンベエ、しっかり見てたか?」

「ワン!」

「この子私の側から片時も離れないで良い子にしてたよ」

「偉いじゃないか 」


 シンベエを撫でつつ思った。欲しい!と。


「お疲れ様、また宜しくな」

「ジルありがとー!またね」

「ええ、それでは」


 街に着いた俺達は、ジルコートの召喚解除を行いギルドマスターに討伐の報告と報酬を受け取りにギルドへ行くことにした。


「サキさん!随分お早いお帰りで」

「討伐対象と断定したので退治を実行しました。こちらが討伐対象の緑竜です」

「おお!そうでしたか。ご苦労様でした。さすがは銀翼と名高い剣士ですな」

「一人の力で倒せる相手じゃなかったですよ」

「それでもその人数で倒せる力がある。だからこそ我々も頼ってしまうのです。この度は誠に有難うございました。」

「それでこの首の買い取りもお願いしたいのですが」

「ええ!報酬と共に精算いたします。少々お待ちを」


 そう言ってギルドマスターは緑竜の首を持って奥に消えて袋をもって戻ってきた。


「こちらが討伐依頼と買い取りの料金になります」

「結構ありますね」

「相手がドラゴンですからね。かと言って他のギルドに比べて見ての通りこじんまりとしたギルドでして、資産があまりないゆえどうしても他所より金額が出せないのです。これでいっぱいいっぱいになってしまいますが宜しいでしょうか」

「構いませんよ。その代わり今日の宿の手配をしてもらいたいのですが」

「もちろん手配させて頂きます。宿代もギルドが持ちますのでごゆっくりしていってください」

「有難うございます。ではこれで」

「また宜しくお願いします」

「シンベエまたね」

「元気でな」

「クゥン」



 ギルドマスターとシンベエに見送られ手配してもらった宿に向かう…前に旅の食料を買い足しに市場をブラつくことにした。






  [緑竜]

 またはグリーンドラゴン。

 全長7メーター程の長い胴体にそれに比べると貧弱そうな手足、その形状は東方龍と呼ばれている。

 知性は高いとされていて攻撃手段も魔法やブレスを得意と言われているが、人前に姿を晒すこと自体珍しいので詳細は不明。

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