25話 砂漠迷宮2
刺々しい身体に大顎、そしてあの巨体。
「モロクキングリザードだったな」
「東の砂漠で見たよね」
「懐かしいな。あの時は苦戦したな」
「そーだね。あの時のリベンジ戦ね」
部屋に入るとモロクキングが咆哮と共に砂嵐を起こし、これにより視界を妨げられて突進の一撃を受けることになった。
そのまま横に居たアイは口を開き炎のブレスを撃ち込まれたが、盾を構えていたアイはそれを防ぐことに成功し、剣での反撃を与える。
片眼を潰したが即座に攻撃に移され、尾で叩かれてしまった。
だが、俺に背を向けたことによって、刺の隙間に剣を突き立てることに成功する。
砂嵐の勢いが弱まってきたのでハッキリと姿を捉えられるうちに、舞わせていた剣を投げつけダメージを与え、弱った所にアイも接近戦を仕掛けた。
そろそろかと思っていたが、モロクキングは背中を丸めてそのまま突っ込んでくる。アイは盾を構えたが抑えきれず飛ばされてしまい、俺へと方向転換して勢いを増して転がってくる。
バスターソードを両手で握り、転がってくるモロクキングに向けて振るい被った。
「クッ!こなくそー!!」
胴体が2つに裂かれ、動きを止めた。
「アイ大丈夫か?」
「なんとかね」
「倒したぞ」
「打ち返してたの見てたよ」
「どーだ。凄いだろ」
「こんくらいはやってもらわないとね」
「…」
切なくなったのでモロクキングリザードの方を見ると、クリスタルの結晶が落ちていた。あのトゲはクリスタルで出来てんのかと思ったが、そんなことはないだろうと、深く考えずに回収することにして次へ進もう。
進んだ先も同じように砂の通路が続いているのだが、ボス部屋と同じくらいこの通路は圧倒的に広がっている。
その理由がすぐに判明する。飛竜だ、それが三体飛んでいる。
「あそこ飛んでるのワイバーンでしょ?」
「腕がないからそうだろうな」
「どうやるの?」
「叩き落とすから仕留めてくれ」
俺達は走って飛竜の元まで向かったのだが、突如サンドラーバが這い出てきた。
それを薙ぎ払っているうちに、飛竜が急降下で俺に向かってくる。
それをしゃがんで避けると、後ろにいたラーバの頭がもげていた。
飛竜は一撃離脱が得意としているのには訳があり、ブレスも吐けない、魔法も使えないのだからそのような狩りの方法を取っているのだ。
サンドラーバを突破して一体の飛竜の元へ転移魔法でその頭上に行くと、力の限り振りかざす。
これで致命傷は与えたがまだ息があるので、アイがとどめを刺す。
そのまま二体目に転移して叩き落として駆け寄ってきたアイによって振るわれた剣で首を跳ねる。
残り一体だが俺は魔力切れで転移出来ず落下する。
「いってぇ。砂だからイケるだろ思ったんだが、意外と痛いな」
「バカだねぇ」
「アイツは任したぞ」
「りょーかい」
残す一体が降下してきた所を敢えて正面から迎え撃ち、盾を構えたアイに突っ込んでくる飛竜だが、貫くことも押すことも出来ずに弾かれた飛竜にすかさず雷魔法をぶつけて風魔法でとどめをさした。
「俺達の勝利だな」
「当たり前じゃない」
「ドロップ品はなんだった?」
「ラーバの牙と金色の卵」
「金の卵とは豪華だな!食べれるのか?」
「ギルドについたら聞いてみよ」
飛竜は金の卵を落とした。これは食べ物なのか観賞用なのかは不明。
この一帯の魔物は倒したがまだ奥へと続き、更に先へ進むとポツンと置かれた宝箱を発見した。
中には不思議な魔力を感じる片手剣が入っていた。
俺達がその剣を手にすると宝箱周辺が下へ飲み込まれていく。
抗うことも出来ずに砂の中へ…と思ったが、どうやら下の階に落ちたようだ。
「いってぇ。また落ちたよ」
「お尻打った…ここなに?」
「下の階層じゃないか?」
そこは石壁に囲まれた四角いだだっ広い部屋、辺りを見渡していると、中央から煙が上がった。
どんどん上がってくる煙がやがて3つの物体を生成する。
「ダンジョンといえば」
「アイツよね」
二体のミノタウロスと2本の斧を持った一際デカいミノケロス、その三体は斧を構えて突進してくる。
俺は中央のミノケロスに突っ込み、二体は俺を無視してアイへと向かった。
左右に持たれた斧による連撃は速くて重く、この重さを受け止めることが出来ないので避けるしかない。
避けてはクレイモアで斬りつけの繰り返しだが、ヤツの肉は硬くて刃が通り辛い。
それでも尚、繰り返し斬り付けていく。
二体のミノタウロスに挟まれたアイだが、その斧を盾で流して先程新たに手に入れた片手剣で腕を跳ねる、凄まじい切れ味を有した剣だった。
斧を握ったまま跳ねられた腕は石床に突き刺さる。
武器はないものの、身体能力が人と桁違いなので油断はならないがアイの方が一枚上手であり、武器を失ったミノタウロスに狙いを定め身軽な動きで左右から斬り付けていく。
やがてもう一体が斧を振りかざすと、アイは一体の背後へ回って斧は片腕の一体の胴体を真っ二つにする。
いつの間にか残る一体の背後に回り込んだアイは片手剣を心臓部目掛けて突き立てもがくミノタウロスに炎魔法の追い討ちをかけて絶命させた。
一方で、まさか落ちるとは思ってもみなかったので薬なんて飲んでおらず、魔力は殆ど空のまま、しかしこの少ない魔力で使える魔法が一つだけある。
ミノケロスの身体には無数の斬り傷が付いているものの、骨まで届いているのはなく、このままではらちが明かない、やるか。
と決め込み、その瞬間を待った。
2本の斧が頭上から迫った時。
「ここだ!カウンター発動!」
俺はカウンター魔法を発動させ、クレイモアでその斧を弾くと、そのままヤツの胴体に刃を入れた。
しかし、剣は途中で止まってしまう。
「もう一発喰らっとけ!」
クレイモアから手を離しバスターソードを構えクレイモア目掛けて振うと、胴体を裂いたクレイモアは遠くに弾かれていき、俺の目前には2つになったミノケロスが横たわる。
「お疲れ」
「お疲れさん。二体相手に旨く立ち回ったな」
「誰かさんみたいにギリギリの戦いしてないもんね」
「お前なぁ、アイツの相手してみろよー」
「いや、やっぱあれはサキが相手しないとね」
ミノケロス達が煙になって消えていくと、角に付いていた白金のリングと金のリングが転がっていた。
中央には地上に戻るための転移魔法陣が発動していた為、それを使って地上へと戻る。
ダンジョンとは、遥か昔に陸の監視者ベヒモス、空の監視者ジズ、海の監視者レヴィアタンによって創られた地下牢である。
地下深くに、かつて地上で暴れていた魔物が封じられ、途中には封印を解く輩の侵入を防ぐ為、魔物が配置されている。
ダンジョンは異質であり、地上と違って倒された魔物は時間が経つと復活し、ドロップ品と言うお宝を落とすのも特長である。
現在はその性質から、冒険者の腕試しの場として活躍している。
宝箱が発見される時があるが、何故かは解っていない。
寒冷砂漠のダンジョンに出現する魔物達
[ガーゴイル]
石像の悪魔。
石で出来た身体を有するが、脆く崩れやすい。背中には翼があり、飛び回れる。
ドロップ品は胎内の宝石。
[アイアンゴーレム]
身体は鉄で出来ている為、高火力の炎に弱いが、それを除けばロックマザー以上の防御力を誇る。
ドロップ品はアイアンゴーレムの眼であるダイヤモンド。
[ボーンサージェント・ボーンジェネラル]
骸骨の戦士とその上位種。
一匹一匹弱いが、数が多く舐めて掛かると取り囲まれる。粗末な武器を装備しており、ジェネラルに至っては鎧を着ている。
ドロップ品は骨。コレクター向けだ。
[スパルロード・スパルトイ]
ボーンタイプ最上位種とその守護者。
魔法を得意とし接近戦が不得意なロードを、スパルトイが白兵戦でカバーする。
コンビネーションが発揮されれば中々の強敵だが、ロードにその気はないようだ。
ドロップ品はその装備。装飾が施されている為、売ると結構な金になる。
[グラウンドシールド]
人間を乗せられる程のリクガメ。
背中の甲羅は強固だが、腹部は比較的柔らかい。
ドロップ品は甲羅。邪魔にしかならない。
[ヴォジャイーノ]
蛙人間。生理的に受け付けられない見た目をしている。因みに、髭を生やしている。
ケルピーの盾役。
ドロップ品は鉱石。当たりは金鉱や魔鉱。
[ケルピー]
美しいたてがみを持つ青い馬。
水中でも水面でも走ることが出来る。
人なつっこいと思って、背中に乗ると水中まで走り出される。
ドロップ品はたてがみ。美しく、需要価値が高い。
[サンドラーバ]
サンドワームの幼体。幼体でありながら人間よりデカい。
砂に潜って、獲物を待ち構える。
ドロップ品は小さな牙。薬に使えるので価値はそこそこある。
[モロクキングリザード]
刺々の背中の四足歩行のトカゲ。
砂を操り、火を吹き、トゲを利用して転がるを得意とする。
ドロップ品はクリスタルの結晶。
[ワイバーン]
俗に飛竜と呼ばれる。だが、竜種ではない。
脚はあるが腕はない。翼=腕となっている。攻撃手段は脚で捕まえるか体当たりのみ。たまに噛みつかれる。
ドロップ品は金の卵。ワイバーンは金の卵など産まないので詳細は不明。
[ミノケロス・ミノタウロス]
ミノタウロスとは牛の魔物。ミノケロスはそれの一回り大きな上位種。
かつてはダンジョンの守護者だったが、見境なく暴れた為に封印されることとなった。
ダンジョンのボスなので守護者という点では違いない。
二体共、力に秀でていて、速さも申し分ない。
ドロップ品は角にはめられたリング。人間では腕輪に出来る。




