24話 砂漠迷宮1
翌朝、俺達は震えながらテントの外に出た。
「朝日が暖かい…気がする」
「寒くて中々寝付けなかったよ」
「え?スゲー爆睡してただろ」
「…早く片付けて行こうよ」
今日は一年ぶりのダンジョンダンジョンへ入る。
やはり冒険者なら入るしかないだろう、中のお宝が俺達を待っているしどんな魔物がいるのかも気になる。
準備を終えた俺達はいざ中へ、入ってみるとそこは岩肌に囲まれた通路だ。
この通路に出てきた魔物は、石の悪魔像であるガーゴイル。
銅像が建ち並んでいると思ったら全てがガーゴイル、この魔物は脆く崩れやすいので盾を叩きつけると粉々になって、動かなくなる。
その石屑の中には、稀にドロップ品と言われる宝石が含まれている。
「ウハウハじゃないか」
「ルビーやエメラルドは結構良いお金になるもんね」
通路の最奥に広々とした空間、所謂ボス部屋があった。
その中を覗くときらびやかに輝くゴーレムが歩き回っている。
「アイ、任せた」
「しょーがないなぁ」
アイアンゴーレムは全身が鉄で出来ている為、剣が通らないし打撃も効かない、ヤツを倒すなら炎魔法が一番有効となる。
アイは炎魔法[フレイザー]を唱え、アイアンゴーレム目掛けて高温の炎が飛んでいく。
脚を集中的に狙われ、立っている事が困難となったのか膝から崩れ落ち、次にアイが放った炎の連弾[バレット]により体中穴だらけとなったゴーレムは煙をあげて消え始めた。
そこに残ったのは、ゴーレムの眼を生成していたダイヤの塊。
「さすがアイだな!あっという間だったじゃないか」
「でしょ!次は働いてもらうからね」
「あんなんじゃなければね」
空間の先には下へと続く階段があるり、それを降りると先ほどと同じような通路に出たのだが、出てくる魔物は違っていた。
「やはりいたか、ボーンサージェント」
「ちらほらジェネラルもいるよ」
ボーンサージェント、ボーンジェネラルは骸骨の魔物で古びた武器を持ち、ジェネラルに至っては鎧も付けてるが大差ない。
そしてコイツ等にはドロップ品がない。 数だけは多いので進むのに苦労するうえ、何も落とさないので何処のダンジョンでも嫌われている。
骨の群れを八つ当たり気味に倒し回って着いた先は、広々空間。そこに居たのも骨だった。
しかし雰囲気が違い、一体は偉そうに椅子に座り、その両脇に二体の骨が立っている。
「ロードとスパルトイだ」
「やっぱりねぇ、アイツ等の後ってこの組み合わせだね」
「ああ、たまには変化球がほしいな」
その部屋の入口をまたぐと、 スパルロードが腕を上げてスパルトイ二体に合図を出した。
一体は片手剣2本の二刀流 、もう一体はクレイモアを抜き、此方に向かってくる。
この剣は3本とも見事な装飾が施されており、性能はさておき飾るには申し分ないデザインをしている。
「アイは左を、俺は二刀流をやる」
「はいよー」
「10秒な」
「余裕!」
二刀流なら俺も2本の拵えを出し、踏み込んで横から振るってきたスパルトイの剣を裏刃で受け止め、もう片方で頭を落とした。
数歩退いたが、それでもヤツはまだ動きを止めず、両手を振り下ろしてきたのを2本で受け流し、交差するように振り上げてスパルトイを2分割してトドメを刺す。
アイは大剣を振るわれる前に、盾で弾き飛ばし、怯んでる所を風魔法[エアスラッシャー]で切り裂いていた。
「私のほうが早かったね」
「ぐっ…」
残すはロード、ロードは青い水晶玉が付いた金のロッドを持っていてこれも売れば結構な金になる。
「倒したほうがあの杖を貰えるってことにしようよ」
「よし、乗った!」
ロードは炎魔法を放ってきたがそれを盾で防ぎきり、攻撃が終わった瞬間、アイは魔法を射とうとしていたがそれより早くロードの前に転移し、ヤツの座っていた椅子と共に盾で叩きつけた。
「サキ退いて!」
後方から飛んできた雷の矢を辛うじて避けた俺は心臓バクバクしながら文句を言う。
「あっぶねーな!」
「急に前に出るから止まらなかったのよ!」
その矢は、ロードに直撃して煙となって姿を消していく。
杖はアイの物、他のドロップ品の片手剣2本もアイでクレイモアは俺の物となった。
再び階段を下り次の階層へ進むと、びちゃびちゃであちらこちらに水溜まりが出来ている通路だった。
そこにはタートルタイプのグラウンドシールドがいた。その甲羅は岩より硬く、アイアンゴーレムみたいに溶かすことも出来ない。
「アイツ等かぁ」
「ロックゴーレム並みに嫌よね」
「蒸し亀にしちゃえよ」
「炎効かないよ。それなら雷魔法ね」
野生のグラウンドシールドは温厚で水辺付近をのしのし歩き回っているだけだが、ダンジョンでは襲いかかってくる。
手前に居たヤツにアイが雷魔法をぶつけるとひっくり返り、そこへバスターソードを振りかざすと腹は比較的柔らかいようで斬ることが出来た。
消えたグラウンドシールドの所には甲羅が落ちていた。そう、ドロップ品である。
「…いる?」
「いらない!ってかなんで甲羅落とすなのよ!あんなんボックスに入れたらパンパンになっちゃうじゃん!」
倒し方が解ったのにドロップ品が甲羅じゃ、上の階と大差ない…俺達の進んだ後には甲羅だけが落ちていた。
そして階層主だ。嫌な予感しかしないが、部屋を覗くと予感に反して当たりの魔物が居た。
「当たりじゃん!」
「アイツのドロップ品は皆欲しがるからな」
この階の主はケルピー、馬に似た魔物でドロップ品である蒼きたてがみは魔導具やローブを造るのに重宝される。
「よし、ケルピーは俺が仕留める。アイはヴォジャイーノをよろしく」
「やだやだやだ!アイツ等気持ち悪すぎ!私がケルピーの相手する!」
「じゃあジャンケンだ!せーの!」
負けた。
ヴォジャイーノは蛙人間で、見た目が物凄く気持ち悪く生理的に受け付けない顔面をしている。
アイは真ん中に居たケルピーに雷魔法を浴びせ、俺は横に並んでいる二体のヴォジャイーノそれぞれに2本づつ剣を投げつけた。
「ふん。近付くまでもない」
「まだ生きてるよ」
ほんとだ。頭部と腹部に刺さった方は消えていったが、肩と腹部に刺さった方は俺に向かって走ってくる…非常に気持ち悪い面をしながらだ。
慌てて二連砲銃を腰から引き抜いて魔力弾を射ち放つと、その顔面に二つの穴が空き、消え始めるより先に転けて足元まで滑ってきた。
「完全なホラーだな」
ドロップ品は鉱石だったが、鉄鉱であるためハズレだ。
アイの方では、雷をくらったケルピーは怯み、その隙に蛙人間の間を走り抜けたアイが斬りかかろうとした。
しかし、ケルピーと目があった途端に水魔法の水圧を浴びせられ、押し返される。
アイにダメージは無いが距離が開いてしまい、ケルピーはもう一度水魔法を射ってきた。
それを見切ってすり抜けて走り際に剣先を脇腹に入れ、とどめの雷魔法を浴びせて消失させるとドロップ品だけが残った。
「見てこのたてがみ、凄い綺麗!」
「ケルピー特有の色だな。それでマントでも作ってもらえば?」
「そーしようかな」
アイばかり特している気がするが、気を取り直してこの階層を後に降っていく。
次の階は砂漠と同じように一面が砂で覆われ魔物の姿がないが、恐らく砂の中に潜っているのだろう。
警戒しながら1歩ずつ前へ進むと、砂の中から大口を開けたサンドラーバが飛び出してきた。
この魔物はサンドワームの幼体で、人間よりデカいものの、警戒するのは鋭い牙が並んだ口と不意討ちによる攻撃だけだ。
アイに砂を巻き上げて貰おうと風魔法を撃つように頼んだ。
出るわ出るわ芋虫だらけ。
コイツ等は刺しただけでは致命傷にならない為、頭部と胴体を切り離すのがてっとり早い。
俺は長剣で、アイは風の刃で頭部を斬り落としていった。
「何匹やった?」
「数えてない!数が多すぎて魔力持たない」
「なら下がってこれ飲んどけ」
「吸収剤?それならあるからいいよ」
それから程なくしてようやく片付いた。
途中、足に噛みつかれたが回復魔法で治せる程度で済んだ。
ドロップ品は小さな牙、これは回復薬に使われるので小遣い稼ぎにはなる。
「さぁ今回は何が出るか」
「サンドラーバだったから、ワームじゃない?」
そして広々空間のボス部屋を覗いた。




