1話 召喚士
この世界には魔物が蔓延る。
それを使役するのが悪魔達。
そして悪魔と敵対する人類。
神の使いとされるドラゴン。
神の使いとされるが大半のドラゴンが人間の敵となっている。秩序を保つ為人間を殺して廻っていると伝承がある。とは言え他の種族よりその数は圧倒的に少ない。
上級の悪魔ともなればドラゴンを使い魔とすることがあるが、協力関係とも言えるかもしれない。もっとも下級種は知性が低く魔物と大差がない。
人間は敵対となる者達に抵抗するためにギルドを立ち上げ討伐依頼や回収依頼をギルド所属の冒険者に仕事を任せている。
まぁ、人間同士や亜人とも争っているのだが。
今も人間同士による戦争が行われている中、戦場の上を飛行する1体の翠色の竜がいた。
『愚かな』
そう念話を送ると何十もの人間が飛んでいるドラゴンを見上げた。
『貴様ら蛮族は地を制したと思っておるみたいだが滑稽過ぎるわ!!』
急降下しつつ、口から炎を地上に向けて放った。
墨と化した人間とそれを見て唖然としてる人間。次の瞬間死ぬことも分かっていない 実に愉快ではないかと咆哮を上げる翠色の竜だが、前方の空から輝く竜が自身に向かってくるのが目に入った。
『アノ者は我らを裏切ったと聞いたな』
と呟いた。
~数日前~
「ねぇ、サキって今年いくつだっけ?」
「それさぁ何度目だよ!いいか?お前もすぐ30になるんだからな!」
そう、俺は今年で三十路だ…そしてそれをバカにするのが馴染みのアイ・ミズサキ 確か25になる。
子供時代、街は何かに襲われ滅びた。
その生き残りが俺とアイを含めた六人のみだった。四人は今何をしてるか分からんがアイだけは冒険者となって力を付けたいと思っていた俺に着いてきてくれた。
「まだ折り返し地点にも来てませんけどね」
「うぜぇ」
やはり女に口で勝てるわけないな。結構バカにされるが彼女はライオットシールドタイプの大型の盾と片手剣という聖騎士スタイルで戦うかなりの腕の持ち主だ。そしてその護りには黒竜を所有していることにより人間には貫くことは出来ないだろう。
「後どのくらい?」
「そうだなぁ、この先に林道があるからそこまで行けば明日の夕方には着くはず」
「じゃあジル呼んで飛んでかない?」
「俺が怒られるから嫌だ」
「ケチ、それでも召喚士なの?」
召喚士、それは召喚獣や魔物と契約を交わして使役する者を差し、召喚士に限った話ではないが旅をしている者の大半が、報酬や地位を求めてギルドへ所属している。
一口に召喚士と言っても、召喚獣を使役する剣士を聖魔剣士と呼んだり、魔術士も召喚獣と契約していれば聖魔導士やクレリックと呼ばれたりする。
俺の戦闘スタイルは召喚武器と召喚獣と呼ばれる召喚契約をした者達を喚ぶ召喚士…だが基本剣だから聖魔剣士と呼ばれる。
所有しているのは魔力を打ち出すことも出来るハンドガンPG9を常備、剣は必要に応じて召喚するのがスタイルとなっている。
「お前だって…ん?なぁ、何か聞こえなかった?」
男と女の叫びらしき声が聞こえた。
「多分二人、襲われてるのかも」
俺達は声の聞こえたほうに走り出した。
俺達は走り丘の天辺へ。その先に3匹のリザードタイプの魔物に襲われていた商人の馬車を見つけた。
護衛役であろう鎧を着た男がリザードタイプと戦って馬車の中に女が一人。
俺は武器召喚を行い、拵えと呼ばれる片刃の剣を出した。
アイの方を見ると、頷きアイテムボックスからシールドと片手剣を出し握りしめた。
「加戦する」
と男に叫び拵えを男の横のリザードに投げ、次の武器召喚を行う。
男は此方を横目で見てすぐに目前の敵に意識を向けたが別方向からのリザードタイプに引き裂かれ 目前のリザードから噛みつかれた。
もう1本の剣を噛みついたリザードタイプに投げ、さらにもう1本出す。
此方の死角に居たリザードタイプは男が
倒れたことにより姿がハッキリと見え、走り寄っていったアイが斬り伏せた。
「大丈夫でしたか?」
とアイが女に話しかけた。男はすでに死んでいた。
「はい、有難うございました」
俺も女に近付き。
「お嬢さんは商人?」
「はい、アルギアからミルトに商品を卸しています。危ない所を助けて頂き、本当に有難うございました」
どうやら俺達と同じ街を目指しているようだった。
「護衛一人じゃいざというとき対応出来かねないぞ」
「いえ、その、私、あまり稼ぎが良くなくて…ソロの人しか雇えないのです」
「あー、でも命があって良かった。一人でも救えたんだから上々か。俺達もミルトに向かうんだが良ければ一緒に行くかい?報酬は夕飯を所望したいんだがどうかな?」
「あ、有難うございます!それでお願いします!!」
「契約成立だな」
「なに女の人だからって甘くしてんのさ」
そりゃあ女性には優しくっていうのが男だろ。口にはしないが。
ふと横のリザードタイプを見る。
サンドリザードか。全長は1,8メーターくらいで砂色の鱗、雑食で凶暴、群れで動く蜥蜴の魔物。
「これ食えるかな」
「なにバカなこと言ってんの!私は嫌だからね」
「冗談だ、蜥蜴は唐揚げにでもせんと食えないからな イテッ!」
アイに物理的な足蹴にされたので諦めて進むことにした。