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12話 邪竜神

 


  「俺達の手に負えるのかよ」

「なに弱気になってるのよヒールラント」


 エルフの二人が呟く。


「全くだ。やらなきゃやられる」

「サキの言うとおりね。ハイレーン、ヒールラント、人の底力見せましょう」

「そうだな。すまなかった!やってやる」


 俺達はそれぞれ武器を構えると、白竜が俺達に念話を送ってくる。


『サキ、貴方は悪魔を。私達で邪竜神を倒します』

『俺が?勝てる保証はないぞ』

『そうよ。一人でなんて!なら私も行く』

『アイ、サキなら大丈夫です。彼の力なら』

『銀の主を信じて』

『マスターは自分の力を、私達の力を信じて』


 腹をくくるしかないか、もとより悪魔殲滅の為に冒険をしているのだ。一体の悪魔に怯えてどうする。


「よし!行くぞ!」

「おおっ!」「「りょーかい!」」


 白竜は己の眷属である幻影竜を喚びだし、六体の竜と三人に白虎といるが数ではどうにもならないような力を邪竜神から感じる。

 だが俺は仲間を信じて自分のやるべきことをやるために悪魔に目を向ける。


 戦いが始まり白竜と幻影竜が前へ出る。邪竜神の目前で高度を上げると、それに釣られるように邪竜神が空へと飛び上がる。

 悪魔から引き剥がすことが目的だったのだろう。


「黒行こう」

『ええ』


 ジルコートとノワルヴァーデはその後を追い、邪竜神が羽ばたかせた翼により衝撃波が街を襲う。

 それに対し白竜がアイに念話と共に魔力を授け、それに答えたアイは前面へ出て盾を構え防御魔法を唱えると、その衝撃波がアイの前で拡散する。


「白竜ってスゴい…」


 改めて白竜の力を実感し、そのまま前へ出たアイは防御に専念してエルフ二人は邪竜神へと魔法を放ち続ける。

 魔力が切れると吸収剤を飲み、魔法を射つ。それに続くように白虎も雷魔法を放っている。

 一番の俊敏力を誇るジルコートは4枚の翼を駆使し一撃離脱の戦法で確実にダメージを与え、攻撃が当たりそうになっていた幻影竜を助けたりしていたのだが、一撃離脱と簡単そうだが三つ首それぞれが魔法やブレスを放ち、一つの頭が白竜相当(幻影竜に至っては2倍程)あり避けるのも紙一重となっている。

 ノワルヴァーデの方は幻影竜達と頭部のみを狙っており、蛇神竜同様攻撃が効き辛い為一点集中で攻撃を加えていた。

 頭部はどんな生き物でも弱点であるが、四竜の集中砲火でも効果は見込めていない。

 一方で彼方側の攻撃が直撃したのなら白竜の光りの壁など殆ど意味をなさないだろう。此方の攻撃はダメージが1桁、向こうの攻撃を1発でも喰らえば即死級と、力の差に絶望すら覚えそうになるが、皆良く堪えてくれている。

 白竜は正面で力の限り火力をぶつけると効いてはいるのかどうか、白竜の攻撃に身を退け反るがただそれだけである。一瞬隙が出来るだけで再び攻撃を開始してくる。避けようともしない。


 どちらの魔力、体力が先に底をつくかこのまま消耗戦が続く中、 雷竜、雲竜は白竜の念話を受け姿を消した『時を待て』と。

 その間にも六体の竜が邪竜神の猛攻を必死に流し、僅かでもダメージを蓄積させている。


『見ちゃおれんぞ。コクウンの』『耐えるんじゃイカヅチの』

『そうであるが、このままではじりひんじゃ。コクウンの』『イカヅチの。儂等には儂等の役割がある』

『…そうじゃの、『全ては世界の為に』』


 ジルコートは翼や背中に魔法をぶつけており、それを厄介そうに邪竜神が尾で払おうとするがその速度に追い付けない。

 ノワルヴァーデ、幻影竜達は頭の一つを延々と狙い続けているものの、時たま怯むくらいであるが着実にダメージは入っている。

 その証拠に頭の鱗が剥がれ、青い血が流れ始めていた。


『白の眷属、もう少し頑張って』

『黒竜よ、我等の魔力は残り少ない。いざと言うときは頼むぞ』


 もう時間がない。幻影竜達の魔力は底を尽き始めている。ノワルヴァーデも蛇神竜との連戦で魔力が心許なくなってきていた。

 だが、勝機がある以上諦めるわけにはいかない。


 地上にはその戦いの余波が降り注ぎ、すでにジルコートの防壁が破れ建物がいくつも破壊され、吹き飛ばされ、燃えているものさえあった。

 住民は先の蛇神竜との戦いの時、後方へ逃げ出していた。

 その余波から仲間だけでもと、守り続けるアイだが、黒竜の加護が付与された盾も白竜から貰った魔力も限界に近い。


  「アイ、もう少しだけもたせて!」

「そろそろヤバいけど…ね!行くの?」

「ええ!ヒールラント、ミィ。やるよ!」

「おうよ!」「ニャアッ! 」


『ノワ!そっちへ行くよ!』


 アイはノワルヴァーデに念話を送った。

 ハイレーンにヒールラントと白虎がピタリとくっつくと、「アゲート!」二人と一匹は攻撃を受けていた邪竜神の頭に転移し、二人はありったけの魔力を自分達の短剣に注ぎ傷ついた皮膚へと突き刺した。

 白虎を残し、再び転移する。すかさず白虎はその2本の剣目掛け最高出力の雷魔法を落とす。


「ガァァァァァァッ!!!」


 叫びを上げる一つの頭。

 白虎はそこから飛びジルコートが受け止め、ノワルヴァーデ、幻影竜達と白竜が残り二つの頭を文字通り押さえる。


『雷、雲』

『待っておったぞ!』『行くぞイカヅチの』

『来たれ。コクウンの』


 雷竜が姿を現し、その周りを雲竜が雲となり纏わり付く。

 雷竜からは髭が無くなり逆鱗が生え、身体は細くなってゆき、稲妻と雲が身体を覆う。


『飛ばされるでないぞ。コクウンの』『掴まっておるわい。イカヅチの』

『『神速!!』』


 光りの線が一瞬にして邪竜神の心部から背中を貫いた。

 光速、光りの速さで逆鱗による突撃を喰らわせたのだ。

 本当なら三つ首全てを無力化してから繰り出したかったが予想を超えた力を有していた為、今実行するしかなかったが勝利は目前と思われた時だった。



『離れて!』


 ノワルヴァーデが叫んだ。

 白竜が押さえつけていた口が振りほどかれて開かれてしまい、放たれたブレスが白竜に直撃して焼かれ落ちていく。

 その攻撃を最後に邪竜神が黒く輝きだし粒子となって消えていった。







  マルクトの9支柱の一人、ネツァク。

 勝利に貪欲で、確実に勝てる戦しかしない。

 今は力が足りない。

 一人、一匹と確実に取り込む。

 その日が来るまで。

 なぜケテル様はワタクシをこんな所へ堕としたのだろうと思う。

 ダアトがそそのかしたに違いない。

 今は耐えるしかない。

 マルクトが心配です。

 今は耐えるしかない。

 ケテル様は何をしていらっしゃるのか。

 今は耐えるしかない。

 暇すぎてくるくると頭の中が回っている。

 考えることをやめられない。

 そうでもしないと勝利の美酒に渇いたこの身体が言うことを聞かなくなりそうなのです。


 この辺りは食べ尽くした。

 可愛いペットも連れて行くことが許された(多分)。

 慈悲深きケテル様に万歳。

 アナタ様に勝利を捧げます。

 ならそろそろ本当の勝利をこの手に。

 肉体はあげましょう。

 魂はワタクシが。

 ワタクシの可愛いペット達よ。

 行きましょう。


 …犬?鼻が利くのですね。

 人間も…エルフでしたか。

 少し遊んであげましょう。

 勝利を味わう前の前菜といった所でしょう。


 足しにもならなかったですね。

 上で騒ぐのが聞こえてきます。

 そろそろ。

 行きましょう。

 さぁ顕現しなさい!アンピプテラよ!ワタクシに勝利を!!



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