靴と本
紙をめくる音。地面を蹴る音。そんな些細な音が輝いて聞こえるような朝。それは僕の人生の何万時間の中の二十四時間であり僕が高校へ通うであろう何百日の中の一日。そんな時間が僕にはかけがえのない日だった。僕の歩くペースに合わせて目の前の空気が白く染まり自分の指が他人の物のような感じになると学校に着く。音の大きさが変わり人の声や動作が直接僕の頭の中に無造作に入ってくる。意味もなく発するその音は僕は苦手という他無い。僕は教室に着きいつものように上着を椅子にかけいつものように鞄を床に置く。その時朝履いた靴が変わっていることに気づく。ここは別の世界なのだと。耳に音のする栓をする。その世界から距離を取るために。
僕の手には紙がある。ただの紙じゃなく文字が書いてある。端から読んでいくとこことは違う世界が見える。飛ぶ椅子 消えるドア 羽の生えた馬 どれも僕の目には写らないものだけどそれは今見てる景色よりも鮮明に、澄んで明るいものだった。




