84話 ダラガナンの予感
「昨日は凄い一日だったな」
たしかに昨日はとんでもない一日だったな。
まさかこの目で神代竜、神竜妃、狂竜を見ることができるとは。
しかもこちらの被害が一切無くだ。
「そうだなノーナ」
さらにその上のにまで会えたしな。
まさかあそこまで強いとは。
神代竜、神竜妃を一撃など、あり得ないだろ。
「まるで夢を見ているようだったな、ダラガナン」
その後のぐたぐだは、俺にとっては悪夢だったがな。
娘に叱られて反省する神代竜と神竜妃。
女性陣に拐われて結局帰ってこなかったヒダリ殿。
絶対的強者達の見たくない現実を見せられたよ。
「あの移動式天幕は素晴らしいぞ」
そして、それまでの状況を一切無視して、ヒダリ殿の馬車に夢中だった我が国の女王。
「あの馬車がそんなに面白かったのか?」
「ダラガナン、あれの凄さがわからないのか?」
「たしかに飛竜を一撃で撃退したのは凄かったな」
あの火力は凄まじいな。
あんなもので武装した馬車に囲まれたら、この大防壁なんぞあっという間に落とされちまう。
「何をいっているんだ?」
「は?」
「凄いのは火力ではない! あれは移動式天幕なんだぞ」
それがどうしたというのだ?
「あの大きさに天幕としての能力がありながら、飛竜を撃ち抜く兵器を隠し持っているんだぞ」
「それがどうしたというのだ?」
「天幕として中に多くの人間を入れているとしたら、あの兵器はどこに隠してあった? もしくはあの兵器を車体に隠し持っているとしたら、どこに多くの人が乗っている?」
たしかに、あの大きさでは不可能だな。
どういうことだ?
「あの移動式天幕には、私達の知らない技術か魔方が使われているんだよ」
「俺たちの知らない技術や魔方なんぞ、山ほどあるだろうが」
「違うよダラガナン。知らないのは私達だけじゃない、多分この世界のほとんどの人達が知らないんだよ」
どういうことだ?
「いいか。容量の決まった大きさの箱に、その容量を遥かに越える容量を収納させる魔方なんてものは無いんだよ」
「だが、ごく稀にそういった魔方具があると聞くぞ」
「そうだ、魔窟やら魔塔から袋や箱が発見されることがあるよ」
「ではその類いのものではないのか?」
「違う、ヒダリ殿はあれを『チキュウの乗り物を元に作った』と言ったんだよ」
どういうことだ?
「ヒダリ殿達はこの世界の誰もが知らない、技術か魔方を駆使してあの移動式天幕を作ったんだ。どうだ、とんでもないんだろ?」
あれだけの強さだけでなく未知の魔法か技術も持ってるってことか。
たしかに本当にとんでもないな。
「ノーナいやノーナ女王、これからどうするつもりだ?」
「そうだな、とにかく敵対だけは避ける。あの戦力に勝てる見込みは無いからな」
そうだな。
敵対は避けたいな。
あんなやつらと戦闘なんぞ、勝負にもならん。
「ただ、今のところ野心というほどのものも感じない。取り込むことは難しいかもしれんが、適度に仲良くやるくらいはできそうだ」
取り込むなんてのは絶対に無理だ。
連中が軽く暴れるだけで国が崩壊しちまう。
「幸いといっていいかわからんが、昨日の竜騒ぎの件もあるしな」
「そうだな。昨日は私もあの後は話ができなかったが、今日ならば話もできるだろう」
「わかった、交渉の方はお前に任せるよ女王」
「国の未来が関わってくるかもしれんからな、死ぬ気でいくさ」
そうだな。
ヒダリ殿とのつきあい方次第で、この国の未来が大きく変わるかもしれんな。
うまくいけば、この国も面白いことになりそうな気はするがな。




