81話 神代竜の悲劇
娘にも困ったものだ。
自分より強い男でないとつがいにならんとは何事か。
一度用意した男共は全員叩きのめされたし、一体誰に似たのやら。
「あなた? なにか言いましたか?」
「な、なんでもないぞ。うん、なんでもない」
なんで私が神代竜なのだ。
絶対に妻の方がふさわしいだろ。
「なにか?」
「なんでもないです」
ほら、おかしいだろ。
竜族のトップが彼女のたった一言で背中に汗びっしょりだ。
どう考えても彼女の方が強いだろう。
「なあ、神代竜を名乗るつもりはないか?」
「何を言っているんですか。あなたこそ竜族の頂点に立ち、すべてをまとめる竜族の長ですよ」
「そ、そうか?」
「そうですよ、それに純粋な力だけが全てではないでしょう?」
それは君が戦闘特化すぎるということかな?
確かに問題解決が、脅す殴る凍らせる。
力で解決ばかりだものな。
「あなた?」
「なんでもない、なんでもないよ」
「先ほどから何を考えているのですか?」
不味い、なにか、なにかないか。
そうだ!
「えっと、ほら、あれだよ。クリスのことだよ」
「つがいの相手のこと?」
よし、上手くいった!
「そうそう、あの娘の出した条件のことを考えていてね」
「確かに。クリスより強い竜と言われてもねぇ」
「力のあるめぼしい奴等は、全て返り討ちにしてしまったしな」
「そうねぇ。ちょっとやり過ぎたせいで、誰も近づかなくなってしいましたしねぇ」
腕がとれたり、羽がとれたり、足が違う方向に向くのはちょっとではないと思うが。
「まあ、つがいなんてのはクリスには早いってことだな」
そうだ、そもそも私は反対だったんだ。
「あなた、いい加減に娘離れしてください」
「いいんだよ、まだまだ可愛い私のクリスで」
まだ300歳くらいだろ?
まだまだはやいんだよ。
「はぁ」
「それよりも、クリスの住み家はそろそろか?」
「そのようですが……あら、あそこにいるのはクリスでは?」
「本当だ。しかし何故、人化している?」
「さあ? 本人に聞いてみては?」
それもそうだな。
『おーい、クリスー』
「あら? お父様?」
我が娘は人化していても美しいな。
横の女は何者だ?
『クリス、横にいる女性は?』
「彼女はセフィル・グラセルフ。共に妻として旦那さまを支える友人です」
な、今クリスから聞きなれない言葉が……
『おい、今の聞いたか?』
『ええ、クリスにもやっとお友達ができたのね』
ああ、そういえば君も友人少なかったね。
『ってそこではなく、いま妻と言ったぞ!』
『そうですね。あの娘もやっとつがいの相手を見つけたようですね』
なにを言っているんだ。
クリスにつがいなんてまだ早い。
しかも共に妻ってことは、クリス以外にも妻がいるということではないか!
『みとめん』
『あなた?』
『クリス、お前は騙されているんだ!』
「お父様?」
『その女たらしはどこにいる!? 消し炭にしてくれる!』
「いくらお父様でも旦那さまを侮辱するなら、許しません!」
ちょっ、本気で撃ってきた。
当たったらどうするんだ。
「さすがにこの姿では無理ですか、ならば」
娘が竜に戻って向かってきただと?
ちょ、娘よその火球はまずい。
ええい、仕方がない。
撃ち落とす!
『さすがお父様、ですが』
危な!
娘よ、いつの間にそんなに強くなったんだ?
だがしかし負けるわけには。
何とかして娘の目を覚まさねば。
『あなた落ち着いて下さい』
妻よ、そんなところにいると危ないぞ。
ああああああ。
ちょ、直撃。
『クリスさん、この母にこれだけのことができるようになるとは。成長しましたね』
寒い寒い寒い。
『ですが少々やり過ぎたようですね』
不味い。
あの目は不味い。
『お母様?』
『クリス、逃げるんだ!』
ぎゃあああああああ。
氷塊が無差別にいいいいい。
『く、いくらお母様でも負けるわけには!』
だあああああああ。
今度は炎弾がああああああ。
『二人ともやめてくれえ!』
あれ、娘が人化した。
な、抱きついただと。
お前か、お前が私の大切な娘をたぶらかしたのか。
『娘はわたさん!』
「うるせー」
あれ?
妻が一撃で落とされた。
おご!?
なんという、い、ち、撃……




