65話 可愛い理論
「ランガー、レーブはどうしてるんだ?」
「鍛冶ですな」
まあ、予想通りだな。
「ポタ族のために農具や武具なんかを作っていますよ」
レーブはわりとまともだな。
そういやランガーも別に変なことはしてないんだよな。
ただポタ族の一部が、口調がおかしくなっただけで。
「何人か弟子もできたようで、楽しそうにやっています」
弟子ねぇ。
あのおっさん、ツンデレ喋りたがりだからな。
弟子とか嬉々として鍛えてそうだわ。
「師匠」
「師匠」
「おう、どうじゃ。できたか?」
くそ、さっきからファンシー生物とおっさんが、ワンセットで出てくるのはなんとかならねーのかよ。
「おおおお、ここにもいたあうううううぁ」
うるせーよ。
おっさん追加とかマジで要らねぇ。
とりあえずちゃんとした言葉で話せよ。
「お、大将。戻ったようじゃな」
「大将」
「大将」
「村長、ここは楽園だな」
うるさいよ。
「む? 新たな客人か?」
「ああ、この人は俺と同じ地球出身の厳丈さん。他にも3人増えてる」
「そうか、ワシの方も弟子が二人」
みたいだな。
「戻ったということはなにか決めたのか?」
「とりあえず村でも作ってみようと思ってな」
「ほう、面白そうじゃ」
「師匠我らもついていきます(ぴゅいぴゅい)」
「ああ、その事についてポタ族にも相談があったんだが、誰に相談すればいいか教えてくれないか?」
「ならば族長かと(ぴゅいぴゅい)」
「多分中央の天幕にいるかと(ぴゅいぴゅい)」
「わかった、行ってみる」
中央の天幕となるとあれか?
「うーむ、かあいかったなぁあ」
なんでついてきてんだよ。
てかちゃんと話せよ。
「巴のように抱きついたりはしないのか?」
「わははは、この外見だからな。こんなゴツイ男にいきなり抱きつかれたら彼らだって困るだろ?」
その辺の制御はできるのかよ。
「なので今は見つめるだけだ」
ああ、そうですか。
なんかそれなりのこだわりがあるのね。
「いいか、村長」
よくねえよ。
「どんなに可愛いくても、向こうから近づいてくるまでは、絶対に不用意に近づいては駄目だ」
いや、ちょっと。
聞いてないよ、俺。
聞いてない。
「いいから聞くんだ」
なに?
心の声がきこえるの?
その猫耳のせい?
「この耳の可愛さがわかる村長だから話すんだ」
え?
一ミリも可愛いと思ってないよ。
なにこの勘違い。
そういう勘違い系とかいらないんだけど。
「うんうん、チョコ太さんの可愛い理論は聞く価値ありだよ」
は?
巴、どっからわいてきたんだ?
可愛い理論てなんだよ。
「そうだ。よく聞けよ村長」
だから嫌だよ、聞きたくないよ。
「左の字、ちゃんと聞かなきゃ駄目だよ」
聞かないよ。
これっぽっちも聞きたくないよ。
誰か助けてよ。
「お、御屋形様」
ランガー、いいところに!
「お、先程の」
「おっと、先程は興奮していてきちんと挨拶もせず申し訳ない」
よし、とまった。
ナイスだランガー。
「私はゲンジョウ・イノイ。そちらのヒダリ村長のご厚意で。ご一緒させていただいたいています」
「拙者はランガー・ボルガナフ。どうぞよろしくお願いいたします」
なにこれ。
なんでちゃんと挨拶してんの?
さっきまで可愛い理論とか言ってた人はどこ行ったの?
「それで、なんの話をしおったのですか?」
「ああ、それはね。チョコ太さんじゃなくて、ゲンジョウさんが可愛い理論について左の字に説明してあげようとしてたんだよ」
「ゲンジョウ殿はチョコ太殿と呼ばれているのですか?」
「ああ、ちと恥ずかしいが巴がその名前がいいっていうからな」
「ふむ、チョコ太殿。素晴らしい名前ではないですか」
なに言っちゃってるのランガー。
「ここにも同志が! そうだよね、チョコ太さんていい名前だよね」
「うむ。もし、ゲンジョウ殿が嫌でなければ、拙者もチョコ太殿と呼ばせていただいてもよろしいか?」
いや、ちょっと。
あれ?
「おう、もちろんかまわない」
「おお、では改めてよろしくお願いします、チョコ太殿。拙者のことはランガーとお呼びくだされ」
「わかった。よろしく頼むランガー」
「それで先程の可愛い理論とは?」
あれー?
また、そこにもどりますか?
「よくぞ聞いてくれた!」
マジかよ。
でも俺が聞かなくてよくなったし、一応なんとかなったのか
「なるほど、素晴らしい」
あれ、もう終わったのか?
「御屋形様、チョコ太殿の話はなかなか興味深い。続きを一緒に聞きませぬか?」
嫌だよ。
聞かねーよ。
てかなんでランガーまでそっち側に行っちゃってるんだよ。
「ほら、左の字、こっちこっち」
嫌だって。
なんでむさいおっさんから、可愛いについて熱く語られなきゃならないんだよ。
誰か助けて……
ちなみにポタ族の族長はこれから作る村への移住について、すんなりOKをだしてくれました。




