44話 とある委員長の驚愕
講師の控え室がざわついている。
騒いでいるのは一部の講師と自治委員だけだが。
原因は本日新しくこの学園に来た新入生の試験についてか。
「今回は私がいかせてもらうよ」
「わかりました、ではわたしとナチュサが案内役という事で」
「自治委員長と副委員長が直々にご案内か」
「ヤヌシュ先生がやり過ぎないようにですよ。テストということも忘れて、本気で潰しにいくんですから」
「ある程度の武力はこの学園では必要だろ? そのための洗礼ってやつだよ」
はあ、この野蛮な風習はなくならないのだろうか?
たとえあの機能のおかげで、怪我をしようが死にかけようがもとに戻るとはいえ、あまり気分がよいものではない。
「最初にきっちりどちらが上か認識させるのも大事なのさ」
ナチュサも賛成か。
自治委員や講師がこの様では、全員が同じ立場という理念も形無しだな。
「やり過ぎるようなら介入しますので」
「わかったよ、とりあえずはよろしくな自治委員長」
はあ、たぶんわかっていないだろうな。
他の連中も無駄にやる気になっているし。
「委員長、これが新入生の書類です」
「ありがとう」
なるべく穏便にすんでほしいものだがな。
門番に案内されて、新入生達が入ってきた。
「ようこそ学園都市デルバレバへ」
女性五人に男性三人。
男性三人か。
これはヤヌシュ先生以外にも、出ばって来るやつが多そうだ。
「どうぞ私達の後ろについてきてください」
「よろしくお願いします」
ナチュサがわたし達のさらに先を先導する。
潜んでいる自治委員に合図でも送っているのだろう。
そこまでして力を誇示してどうしたいのだろうな。
そういえば書類に目を通せていなかったな。
8人全員が女神様の祝福を受けているのか?
「皆様、女神様の祝福を受けておられるのですか?」
「それは三人だけですね。私達はカシュタンテ女王の紹介です」
カシュタンテ女王!?
「そちらに紹介状を提出したはずですが」
まずい。
入学の書類は?
確かにカシュタンテ女王の印が入った封筒がある。
「まだ中身を確認されていなかったようですね」
「申し訳ない、立て込んでいて」
「私達は気にしませんので、どうぞ中身をご確認下さい」
「重ね重ね申し訳ない」
急いで中身を!
まずい、まずい、まずい。
女王の紹介だということも、一領主だということもまずいが、最後の一文が本当にまずい。
『デルバレバの責任者に警告する。そやつらに手を出すなよ、出すのであればデルバレバがなくなることを覚悟しろ』
彼女の強さを求める姿勢は本物だ。
その姿勢は彼女を、狂戦士とまで言わしめるほど。
その彼女が、文書にしたためてまで警告してくるとは。
「新入生、よく来た。私の名はヤヌシュ。この学園で講師をやっているものだ」
ヤヌシュ先生!
最悪のタイミングだ。
「あんたらには試験を受けてもらう!」
ナチュサ。
それに自治委員も。
まずい、何とか止めなければ。
「ヤヌシュ先生、ナチュサ、みんなも待つんだ」
「フィールド展開」
遅かった。
「この訓練用フィ、べ」
ヤヌシュ先生?
いつの間に地面?
「な、いきなり攻撃するなんて、ぶ」
フィールドを突き破った!?
訓練用フィールドを突き破るなんて、あり得ない。
「き、貴様、ば」
自治委員が一人一瞬で叩き伏せられた。
次は一度に三人!?
最後に残された一人は?
武器を捨てて逃走か。
勝てない相手からは逃げる。
相手と状況によっては間違ってはないが、今この瞬間は最高の愚策だ。
脳天に踵をもらって、地面に……。
信じられない。
彼女たちは性格や行動に難ありとはいえ、デルバレバではトップクラスの戦力。
それをこの一瞬で殲滅させるとは。
しかも男性が。
こんなに強い男性がこの世にいるとは……。
「んで、これはどういうことなんだ。案内人さん」




